【結構苦労が多いんです】三国志時代の転職事情が想像以上に複雑だった

2016年5月20日


 

劉備

 

現代日本において、就職活動や転職活動は、一個人のみならず、

多くの人々の人生を左右する一大イベントです。

社会人として、新卒採用した場合もありますが、特に別の会社に転職する場合は、

今までの会社を抜ける、ということになるため、大きな決断が要ります。

三国志の時代では、主君を変えるという行為は、悪徳とされていました。

このような発想は、中国的な儒教の発想、いわゆる縦社会的な発想で、

目上の人や上司を敬うもの、それを軽んじたり、

裏切ったりすることはしてはならないことと考えられていました。

そのため、当時主君を変えるとは一大決心だったのです。

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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三国志時代にもヘッドハンティングはあった

郭嘉

 

ただ三国志では、主君を変えることに関して良い言葉があります。

「良禽択木(りょうきんたくぼく)」この言葉は、この言葉は、良い禽(きん、鳥のこと)は木を択(えら)んで棲む、

ことを述べており、良い臣下は主君を択んで仕えること意味します。

この言葉のおかげで、裏切っても良い雰囲気になります。

三国志の時代では、戦時下で自ら相手に降る場合もありますが、捕虜となった将を自軍へ勧誘する、

又は配下にしたい敵将とコンタクトをとり勧誘するヘッドハンティングのようなこともしばしば行われておりました。

今回は、この三国志時代の転職事情、特にヘッドハンティングの事例を取り上げます。

 



裏切り名人・呂布(りょふ)と李粛(りしゅく)のケース

呂布 最強 曹操

 

呂布 奉先(りょふ ほうせん)は、三国志演技の世界では最強の武将として知られる一方で、

裏切りの名人(?)としても知られております。

 

呂布 バックブリーカー

 

呂布(りょふ)は、養父の丁原(ていげん)、菫卓(とうたく)劉備(りゅうび)等々あらゆる人を裏切っています。

さて、呂布(りょふ)は、ことごとく裏切るわけですが、一番最初の丁原(ていげん)の裏切りに関しては、

自ら裏切ったというよりかは、菫卓(とうたく)からのヘッドハンティングが引き金となりました。

 

十常侍(じゅうじょうじ)の乱により乱れた都にて、諸国の将が集まる中、帝を廃そうとする菫卓(とうたく)は丁原に反対されました。

怒った菫卓(とうたく)は、丁原(ていげん)を亡き者にしようと目論みますが、無双の豪傑、呂布(りょふ)によって阻まれます。

菫卓(とうたく)は呂布(りょふ)を自身の配下にしようと、李粛(りしゅく)を呂布(りょふ)の説得のために向かわせます。

 

李粛(りしゅく)、呂布(りょふ)のスカウトに向かう

裏切り 呂布

 

丁原(ていげん)の陣にて

李粛(りしゅく)「呂布(りょふ)の知り合いだから早く取り次いでね。」

 

呂布(りょふ)のところへ案内される李粛(りしゅく)。

 

李粛(りしゅく)「今日は良い物を持ってきてあげたよ。赤兎馬という日に千里は走る名馬なんだ。」

呂布(りょふ)「こんなものを貰えるなんて…(感激)。この恩、どうしたら返せるかわからないよ。」

 

呂布(りょふ)はお酒をふるまいしばらく歓談しました。やがて李粛(りしゅく)が動き始めます。

 

李粛(りしゅく)「君ほどの才能があれば、富も名声も得られるだろうに、なぜ小さくなっているのか。」

呂布(りょふ)「良い主君に会えないのです。」

 

一見酒の席でのただの会話ですが、呂布(りょふ)は若干現状に対する不満を漏らします。

その様は、新卒で入った会社で思うように仕事ができなかった新入社員が酒に溺れて不満を垂らしているかの様です。

 

いざヘッドハンティング

袁家ヒストリー02 袁安

 

ここから李粛(りしゅく)のヘッドハンティングタイムが始まります。

 

李粛(りしゅく)「良禽は木を択んで棲み、賢臣は主を択んで事う(つかう)。

良い檎は良い木に、賢い物は善き君主につくんだよ。動くなら早くしないと後悔するぞ。」

 

これによって、李粛(りしゅく)は転職しなければならない雰囲気に持ち込みます。

 

呂布(りょふ)「そうはいっても現代の英雄っていったい誰でしょうか?」

李粛(りしゅく)「菫卓(とうたく)殿だよ。菫卓(とうたく)殿は、賢人を敬うし、賞罰は明らかにする。

公正で人が出来てるから皆ついてくる。いずれ大業を成し遂げるだろうな。」

そう言って、金と珠玉を呂布(りょふ)に与えます。

 

李粛(りしゅく)「菫卓(とうたく)殿が君の才を慕って私に届けるように命じたものだ。

さっきの赤兎馬(せきとば)も菫卓(とうたく)殿から贈り物だ。

君がもしも菫卓(とうたく)殿の下に来たらば、どれほどの待遇になるか想像もつかない。」

李粛(りしゅく)は贈り物をしつつ、「こっちは結構待遇いいよ」とアピールします。

呂布(りょふ)「でも、それなら手柄の1つでも立ててないとな・・・よし、丁原(ていげん)を殺そう!」

かくして、呂布(りょふ)は丁原(ていげん)を殺し李粛(りしゅく)とともに菫卓(とうたく)のもとへ行ったのでした。

 

三国志ライターFMの独り言

FM

 

良禽択木、有名な言葉ですので、現代でも使うことはあるのではないでしょうか。

三国志演義ではしばしば用いられます。用いられる場面はもちろんヘッドハンティングです。

中国は、儒教思想というか、縦社会のようなところがあります。

しかし、実際、一兵卒や雑兵が逃げ出すことは多かったのではないでしょうか。

ただ、上の身分の者が主君を変えるとあっては、「その程度の者」と世間に笑われてしまいます。

そのため、良禽択木という言葉が使われます。

悪く言えば、「裏切り」の正当化です。

良き主に仕えぬことは、天から賜ったその身を捨てるも同然、天に背く行為は儒教ひいては縦社会では悪徳でもあるのです。

みなさんは、くれぐれも就職活動で使うときは気をつけましょう。

「あなたの会社は良い会社です。」と伝えている半面、

「自身を正当化し、何のためらいもなく会社を裏切る人」と思われてしまうかもしれませんので。

 

次回記事:もうやってられない! 三国志の時代ではどのような理由で主を変えてたの?

 

 

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三国志は、大昔の出来事ですが、物語をいろいろな視点や切り口で見ていくと、新しくて面白い発見があるのが好きです。 人物像や対人関係、出来事、時代背景、逸話等々、古い話とはいえ、学ぶべきところはたくさんあります。 埃をかぶせておくにはもったいない、賢人たちの誇りがあります。

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