前回のイヌに続き、今回はネコについて紹介したいと思います。
イヌ派ネコ派ともいわれるように、ネコといえばイヌに並ぶ人気のペット。
特に近年の猫ブームにも表れているように、ネコ好きは一大勢力となっています。
それではイヌ同様、ネコもペットとして可愛がる風習は昔からあったのでしょうか。
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「猫」という漢字の意味と由来
そもそも「猫」という漢字は「獣」偏に「苗」と書きますが、この成り立ちには二つの説があります。
一つは「苗」=鳴き声説。始皇帝の秦よりも古い時代の漢字音(上古音)を調べてみると、
「ミァウ」や「ミォウ」等、日本語でもおなじみのネコの鳴き声に似た発音です。
つまり擬声語の当て字ですね。
もう一つは、苗を荒らすネズミを捕食する動物だからというもの。
これは明の時代につくられた漢字字書『正字通』に引用されている北宋時代の学者・陸佃の説です。
ただそうであれば「猫」はむしろネズミを表す漢字になっていそうな気もします。
古代のマナーブック・礼記にも猫について記載がある
さて、毎度お馴染みの『礼記』には猫についての記事もあります。
郊特牲という天子が行う祭祀に関するトピックの中に「迎猫」という儀式があり、
ネコは田のネズミを食べるため、この祭祀を行うのだと言っています。
つまり田んぼを荒らすネズミ駆除係としてネコをお祀りしたのです。
北宋時代に編纂された発音字典『広韻』にもネコとは「鼠を捕る獣」と説明されています。
そういえばイギリスの「首相官邸ネズミ捕獲長(Chief Mouser to the Cabinet Office)」も
有名ですし、日本でも明治時代にペストが流行した時には国をあげて家々にネコを飼わせ、
ペストネズミを駆逐したといいますから、
古来ネコとは常にネズミを狩る動物というイメージだったのですね。
中国最古の漢字字書にも猫について触れている
さらに中国最古の漢字字書『説文解字』によると、ネコはタヌキの仲間と思われていたようです。
「狸猫」という単語があり、本来は野生の猫の意味ですが、現代中国語ではタヌキにも使われます。
某国民的アイドルの青いネコ型ロボットが作中でしばしばタヌキと間違われるのは
中国5千年の歴史的には間違っていないのかもしれません。
そんなネコですが、陝西省泉護村での発掘調査によって、
少なくとも5300年前には中国でイエネコが飼われていたという報告がされました。
ちなみにイエネコといえばエジプトが発祥の地として知られていますが、
エジプトのイエネコの歴史は確実なところで紀元前4千年ごろ、
つまり約6千年前まで遡るとされていますので、砂漠を超えて中国に伝播したとも考えられます。
猫にまつわる中国史の逸話
ところでネコにまつわる中国史の逸話といえば、則天武后のエピソード。
『旧唐書』『新唐書』に載っている話で、
庶民の位に落とされ投獄されたライバル蕭淑妃が
「武后は鼠に生まれ変わり、私は猫となってその喉笛を食いちぎってやる」と呪ったことから、
以後武后はネコを嫌い、宮中で飼うのはタブーになったといいます。
逆に言えば、それまで宮中でネコが飼われていたということですね。
また同書に、隴右節度使の朱泚が、部下の趙貴の家に同じ乳で育った仲の良いネコとネズミがおり、
珍しいので皇帝に献上したというユニークな話も載っています。
水滸伝とも関連性がある
その他ネコをモチーフとした絵などが宋代にいくつか見られますが、
中でも面白いのは『水滸伝』でも有名な北宋代一の芸術皇帝・徽宗の『猫図』です。
実際は直筆でないともいわれていますが、嘘でも自ら描いたと伝わるくらいなので、
皇帝の目の届く範囲にネコが飼われていたのは間違いありません
(この『猫図』は国立国会図書館デジタルコレクションで見る事ができます)。
また『宋史』には民家のネコの話もあるので、
皇帝から庶民まで身分問わずネコを飼っていたことが伺えます。
文献や発掘で見える限り、ネコはイヌに比べると飼育率は低かったようですが、
それでも昔からヒトの身近な動物であったことは変わりありません。
そんなネコが十二支の割り当てから外れた理由を考えてみると興味深いテーマとなりそうです。
参考元:5300年前中國已開始養貓-新華網