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優秀な人材が魏にいると聞くと・・・
信陵君(しんりょうくん)は、こうして多くの人材を食客として養っておりました。
ある日信陵君の食客が「魏の大梁を守っている門番が恐ろしく優秀な人材だそうです」と
信陵君に知らせてきます。
すると彼は家人に大量の贈り物を買ってこさせて、この門番に送ります。
しかしこの門番は贈り物を一切受け取ることをしませんでした。
贈り物攻撃が効かないと知った信陵君は自ら足を運んで
「どうか。私の食客になってはくれないでしょうか」と恭しく相手を持ち上げて丁寧に述べます。
この門番は老人ですが、シャキっとしており足腰はとても丈夫な雰囲気を醸し出しておりました。
そしてこの老人は信陵君に対して「私は清く生きてきました。
門番の仕事はきつい割に収入は少ないですが、
あなた様からもらった贈り物を受け取ろうとは思わない。」と天下の信陵君の誘いをきっぱりと
断ります。
こう言われてしまっては信陵君もおとなしく引き上げるしかないと考え彼に
「あなた様のお名前を伺ってもいいですか。」と聞きます。
するとポツリと「侯嬴(こうえい)」と答えて仕事へ戻っていきました。
諦めない信陵君
信陵君はどうしても侯嬴を食客にしようと考えて、酒宴を自宅で開くことを思いつきます。
そして食客を集めると共に魏の大臣や将軍を呼び集め、
酒宴の準備を万端整えた後馬車を用意して侯嬴を自ら迎えにいきます。
信陵君を試す
侯嬴は信陵君が自ら迎えに来たので仕方なく馬車に乗ります。
この時彼は信陵君を試すために彼が座るべき場所に座り出方を伺います。
しかし信陵君は気にする風でもなく侯嬴に色々と話しかけます。
侯嬴は「肉屋に私の親友がいるのだが、立ち寄ってもらえないでしょうか」と要請。
信陵君は頷くと肉屋に向かって馬車を走らせます。
そして肉屋に到着すると彼は友人と立ち話を長いことして信陵君の顔色を伺います。
だが信陵君は恐ろしい程平静と変わらない顔つきをしておりました。
こうして長いあいだ立ち話をしてから馬車に乗って宴会場へ到着。
すると信陵君は食客や賓客全てを呼んで「この人が侯嬴先生だ。
みな私の上客だから覚えていてください」と紹介していきます。
酒宴が終わってからの侯嬴の発言に唖然
こうして酒宴が終わると侯嬴は信陵君の元へ行き
「本日はありがとうございました。私もあなた様の為に仕事をしたかいがありましたな」といいます。
この言葉を聞いた食客や大臣、将軍は大いに驚くと共に唖然としてしまいます。
そして一人食客が侯嬴に対して「それはどのような意味なのですか」と訪ねました。
侯嬴の仕事とは
侯嬴は食客の方には向かず信陵君の方を向いてこのように答えます。
彼は「私は門番を守っているただの老人ですが、
今日信陵君様がわざわざ来てくださいましたので、彼に報いようと仕事を行いました。
その仕事は彼の名声を上げることです。
今日馬車で寄り道をする必要はこれっぽちもなかったのですが、
信陵君様の名声を上げるためにわざとよることにしました。
そこで長い時間立ち話をしていたのですが、
信陵君様は平静と同じような表情をしておられました。
私の方が身分が低いにも関わらず、
身分が高いあなた様が平静と同じ表情で私を待っていたことにより、
多くの民衆があなた様を称えることになりましょう。
この事を持って仕事をしたといったのです。
そして今後は信陵君様の食客としてお仕えすることに決めました。
数々のご無礼をお許し下さい」と述べて頭を下げます。
この事を知った信陵君はすぐに侯嬴の元へ駆け寄り、
「私の為にやってくださってこちらの方こそお礼を言わなくてはなりません。
どうか頭を上げてください」と言ってその場にいた人々を驚かせます。
こうして信陵君は侯嬴を手に入れることに成功し、彼を食客として迎え入れることにします。
そして彼が食客に加わったことによって信陵君は大いに歴史に名を刻むことになるのです。
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