あー、一週間のご無沙汰です。
kawauso編集長だよ。
今回は歴史の世界を賑わす陰謀論について考えます。
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最近無遠慮になってきた陰謀論がウザい
陰謀論というのは、
「教科書で言われている歴史的な事実は捏造で本当はこう!」
みたいに断定的に書かれている本
または、特定の集団が全ての事件をコントロールして
歴史を操っているみたいな考え方の事
「アメリカは宇宙人に操られている」という
一目でトンデモと分かるカワイイ本から
「本能寺の変の黒幕は別にいる」とかいう
本当っぽく見せた粉飾本もある。
こういう「真実はこうだ!」という本は昔からあったけど
本の中になーんちゃって風味がちゃんとあった。
でも、最近は陰謀論も無遠慮になってしまってさ
「俺が正しい!日本国民は偽史に騙されている」
と大上段から読者を煽って、さも真実のように
陰謀論を語る本が増えたので編集長も腹が立っている。
どうも、昔のように色物雑誌として陰謀論を売るより
ちゃんとした出版社から学術本の雰囲気を出して
売る方が売り上げがアップするらしい
そういう売らんかなの態度が、編集長ムカつくんだよね。
おいおい、エンタメが学術ぶるなよ恥ずかちい・・
なーんちゃって精神を捨てて
売れりゃいかがわしい説でも本物みたく見せて売り
あろうことか真面目に研究している歴史家の成果を
偽物とバカにするそういう態度が大嫌いだ。
あ、誤解されると困るから補足するけど、
編集長はエンタメ的な歴史の陰謀論は嫌いじゃないよ。
源義経=チンギス・ハーン説なんてロマンがあると思う。
でも、それをさも真実の歴史に見せかけて、
先行研究を偽物と貶すのは、
いくら商売でも品が無さすぎるんじゃねーの
と言いたいだけよ。
陰謀論を一刀両断 陰謀の日本中世史
そんなこんなで世に蔓延り続ける陰謀論に、
歴史学者の見地から反撃を加えたのが、
呉座勇一の「陰謀の日本中世史」だ。
この本は、序文からして納得がいく
簡単に言えば、
陰謀論だと分かってエンタメとして楽しむのは問題ではないけど、
世間には陰謀論を本当だと信じ込んでしまっている人が一定数いる。
歴史に限らず、世の中には陰謀論が溢れているのに、
そんな事で大丈夫なんだろうか?
歴史に限らず社会には陰謀論が溢れているのに、
簡単に騙されてミスリードに乗ってしまうのは危ない事ではないか?
このような陰謀論には特定のパターンがあり、それを暴いていく事で
その本が陰謀論か学術書かの区別の参考にして欲しい
こんな主張なんだけど、編集長はすごく同意する。
歴史の陰謀論に限らず、社会には
真実はこうだという陰謀論が大量に存在している。
歴史の陰謀論にハマる人は、より巧妙な政治的陰謀論には、
それこそ簡単にハマってしまうだろう。
その陰謀論がもし、
特定の民族や団体への偏見を助長するものだったら?
地震や津波のような大災害の時の判断を狂わすものだったら?
医学の正当な治療行為を否定する内容だったら?
陰謀論の情報が大勢の人を殺すかも知れない。
たかが陰謀論だと決して笑っていられない話なんだ。
陰謀論の特徴とは?
では、陰謀の日本中世史に挙げられている
陰謀論の特徴を挙げてみよう。
1単純明快で分かりやすい
2論理を飛躍させる
3結果から原因を逆算する
4誰も知らない真実を強調
陰謀論は大抵、この4つの要素が絡み合って出来ている。
第一の単純明快は、事件の原因を一人に背負わせる事で
本当は複雑な歴史を単純明快にしてしまう手法
例えば、応仁の乱の原因は悪女日野富子が、
我が子を将軍にしようとしたからだというのがそれ、
実際の応仁の乱は管領家の家督争いや、
守護大名と守護代、国人衆の領土争い、
足利義視と足利義政の将軍職を巡る争い
山名氏と細川氏の勢力争いなど複数の要因が絡んでいて
分かりにくいから敬遠される。
それを全て、日野富子が原因とすれば分かりやすいから
歴史に詳しくない人でも飛びつくんだな。
第二の論理の飛躍は、
坂本龍馬はフリーメーソンの手先という陰謀論や
あるいは類似の陰謀論で
明治維新はフリーメーソンが起こしたでお馴染みのヤツ
例えば
坂本龍馬は武器商人グラバーと知人だという
歴史的に証明された事実から
1グラバーはフリーメーソンで武器商人
2坂本龍馬はフリーメーソンのグラバーの代理人
3坂本龍馬がフリーメーソンの指令で
薩長に武器を売り幕府を倒す
4だから坂本龍馬はフリーメーソンの手先
このように論理を飛躍させてしまう手法
もちろん1~4までに史料的な裏付けはゼロで
作家の妄想に過ぎないけどね。
第三は、結果から原因を説明する逆立ちした内容
例えば豊臣秀吉が本能寺の変の黒幕という陰謀論は
1明智光秀が織田信長を討つ
2羽柴秀吉が明智光秀を倒して信長の後継者になる
3秀吉は光秀のお陰で天下人になれた
4だから、本能寺の変は秀吉が光秀を騙して起こさせた
このように、本能寺の変の最大の受益者は
豊臣秀吉なのだから、秀吉が本能寺の変の黒幕だという
とても逆立ちした主張になる。
最大の受益者が事件の犯人というのは、
犯罪捜査でも使われる事ではあるけど、
それを歴史に当てはめるとおかしな結果になる。
だって、秀吉も信長の死により、毛利と明智に
挟み撃ちにされる恐れがあったのだから
決して安全圏で高見の見物をしていたのではない。
そんな一かバチかのリスクを取ってまで、
主君信長を光秀に討たせるメリットがあるのか?
このような動機やデメリットを無視して
結果から事件の黒幕を導き出すのが特徴
第4は誰も知らない真実という煽り文句
人間は「誰もしらないと○○」いう煽り文句にとても弱い
他人が知らない事を知っている優越感で気分がいいし
俺は、歴史を知っていると得意になれる。
はじ三でも、誰も知らない○○とタイトルつけるけど
あれは、そういう人の心理を突いたコピーだ。
実際は知っている人も知らない人もいるから
ま、読んでもらう煽りなんだけど・・
でも、まともな学術書は真実の歴史なんて
キャッチコピーは決してつけないもんだ。
何故か?決定的な証拠がでるまでは、すべては仮説という
学問に対する謙虚な姿勢があるからだ。
新しい事実が出れば、また更新しますが、
今のところは、このような学説が支配的です。
ちゃんとした学術書は、こんな慎重な書き方をするから、
これが○○の真実だ!という煽りをしている
歴史系の本は警戒して読んだ方がいい
それは恐らく、陰謀論の特徴の4つを含んでいると思うよ。
陰謀論とちゃんとした歴史を見分けるのに本書はおススメ
という事で、編集長にとっては、
この陰謀の中世日本史はとても参考になった本です。
今回は中世史だけど、陰謀の幕末史とか陰謀の戦後史とかも
出して欲しいと思います。
エンタメはエンタメ、陰謀論は陰謀論、歴史は歴史で
ちゃんと区別して楽しめる知的な読者が増えて欲しいなぁ
関心がある人はamzonで安売りされているから買ってみて
んじゃ、そういう事でまた来週~
※編集長のぼやき次回の更新は9月5日の予定です
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