ゴシップ満載!夏目漱石もペンネームを取った世説新語とは?

2018年9月5日


 

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kawausoと曹操

 

後漢末(ごかんまつ)から東晋(とうしん)にかけてあらゆる有名人の噂話が詰まっているゴシップ集『世説新語(せせつしんご)』。実は、この『世説新語』には私たちに馴染み深い故事成語(こじせいご)のもとになったお話がたくさん載っているのです。中にはあの文豪がペンネームに選んだ言葉も…?

 

今回は皆さんに『世説新語』に見える故事成語をいくつかご紹介したいと思います。

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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七歩の才

七歩の才・曹植

 

『世説新語』の文学篇には『三国志』ファンには馴染み深い「七歩の才」のお話が載っています。

 

曹丕(そうひ)曹植(そうしょく)

「俺が七歩歩き終わるうちに詩を詠めなかったら死刑な!」と迫ったアレです。曹植は曹丕が数歩歩くうちに次のような詩を詠みあげたといいます。

 

豆を煮て持って(あつもの)()し、()()して以て汁と為す。(まめがら)は釜の下に在りて燃え、豆は釜の中に在りて泣く。(もと)同じ根より生じたるに相()ることなんぞ太だ急なる

 

曹植は軟弱ではなかった

 

「同じ父母から生まれたのに、何で僕だけ痛めつけるのお兄ちゃん…」

 

後継者争いをしている曹丕と曹植

 

という哀切が(あふ)れる詩です。これを聞いた曹丕は無理難題を弟に強いた自分を反省したのだそう。この話から、詩才にすぐれていることを「七歩の才」と言うようになったのです。

 



断腸の思い

西遊記・孫悟空

 

東晋王朝を乗っ取ろうとして失敗したというちょっぴり不名誉なことで有名な桓温(かんおん)ですが、ある程度の良識は弁えていたようです。そんな彼の『世説新語』黜免篇に見える良識あるエピソードがこちら。あるとき桓温が蜀の地の長江中流あたりにいたとき、部下の一人が猿の子を捕まえます。部下はその子猿が気に入ったのか、舟の上につれていきました。すると岸からギャアギャアと悲しげな鳴き声が。なんと母猿が岸伝いに追いかけてきていたのです。舟が何百キロ進んでも母猿は諦めることなく舟をおいかけ、ついに岸から舟に飛び乗ってきました。

 

ところが、その瞬間に母猿は力尽きて亡くなってしまいます。皆がその母猿の腹を破って見てみると、その腸は見るも無惨にズタズタに千切れていたのでした。このことを聞いた桓温は母猿の無念を思い、子猿を捕まえた部下をクビにします。

 

この話から、辛く苦しい思いをすることを「断腸(だんちょう)の思い」と言うようになったのでした。

 

時代を超えて愛される中国四大奇書「はじめての西遊記はじめての西遊記

 

竹馬の友

 

幼馴染(おさななじみ)の友人のことを「竹馬の友」と言いますよね。この言葉にまつわるエピソードも『世説新語』品藻篇(ひんそうへん)に載っているのですが、ちょっと穏やかではない雰囲気…。再び桓温が登場するのですが、彼はここでライバル・殷浩(いんこう)をケチョンケチョンにけなしているのです。桓温によって羌族・姚襄(ようじょう)に敗れた罪をチクられた殷浩(いんこう)は、庶民の位に落とされてしまいます。そのことを知った桓温、ゲスな笑いを浮かべて次のようにのたまったそうな。

 

「殷浩なんて小さいとき、俺が乗り捨てた竹馬で遊んでたような奴なんだぜ。俺より位が下になるのは当然だ。」

 

このことから「竹馬の友(ちくばのとも)」という言葉が生まれたのですが、この話を知ってしまうと大分闇が深い幼馴染という意味にしか捉えられなくなってしまいますよね…。

 

 

石に漱ぎ流れに枕す

 

最後に、ある文豪のペンネームの由来になった故事成語をご紹介しましょう。そのお話は『世説新語』排調篇(はいちょうへん)に見えます。西晋時代に(そんそ)という人物がいたのですが、彼は隠遁生活をすることを夢見ていました。

 

そんな彼は友人・王済(おうせい)に向かって

「石に(すす)ぎ、流れに枕したい」と語ります。

「ん?」

と一瞬微妙な顔をする王済。

 

しかし王済はすかさず、

「いやいや、流れに枕したり石に(すす)いだりっておかしいだろ!それを言うなら石に枕し流れに漱ぐだろ!」

とツッコミを入れます。

 

これを受けた孫楚はなぜか間違いを認めず、「流れに枕するのは耳の中を洗うためで石に漱ぐのは歯を磨くという意味だからいいの!」と頑張ったのだそうです。

 

このことから負けず嫌いということを「漱石流枕(そうせきちんりゅう)」と言うようになったのだそう。もう誰のペンネームかお分かりですよね?夏目金之助、すなわち夏目漱石(なつめそうせき)です。

 

 

三国志ライターchopsticksの独り言

三国志ライター chopsticks

 

私たちに馴染み深い言葉にまつわる面白エピソードをたくさん載せている『世説新語』。正史には描かれているエピソードもありますが、中には正史では取り上げられないエピソードを読むことができるのでとても興味深い書物です。みなさんもぜひ『世説新語』を手にとってみてはいかがでしょうか?

 

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赤兎馬はカバ

 

 

 

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清朝考証学を勉強中。 銭大昕の史学考証が専門。 片田舎で隠者さながらの晴耕雨読の日々を満喫中。 好きな歴史人物: 諸葛亮、陶淵明、銭大昕 何か一言: 皆さんのお役に立てるような情報を発信できればと思っています。 どうぞよろしくお願いいたします。

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