あの謝安もたじたじ!?謝安の嫁が強すぎる…

2018年10月31日


 

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世説新語

 

ゴシップ集の先駆け的存在である『世説新語(せせつしんご)』で最も多く登場するのは

東晋時代の英雄・謝安(しゃあん)という人物です。

桓温(かんおん)による帝位簒奪計画を阻止したり、淝水の戦いで強敵・前秦(ぜんしん)を下したりと

華々しい経歴を持つ彼ですが、

その妻・劉夫人(りゅうふじん)も負けず劣らず強かった模様…。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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謝安の子育てスタイルにもの申す!

謝安の子育てスタイルにもの申す!

 

『世説新語』徳行篇には謝安と劉夫人のバトルエピソードが描かれています。

我が子が父である謝安に負けないくらい立派な人になるようにと教育にいそしむ劉夫人。

現代でもよく見る教育ママっぽい雰囲気がありますが、勝気な劉夫人は一味違います。

 

ある日、夫である謝安に向かって

あなたはなんで子どもに教育してくれないのです?

と正面切ってもの申したのです。

自分ばかり子の教育をするのは不公平だと思ったのでしょうね。

 

すると謝安は次のように答えたそう。

私は自分の日頃の行いを見せることによって自然と教育を施しているんだよ。

ちょっと口やかましく物を教えたところで

子どもなんて思い通りに育つものではないということを

謝安は言いたかったのでしょうね。

 

その後の劉夫人の反応は描かれていませんが、

とりあえず謝安の言葉に納得したのではないでしょうか。

 

 

 

踊り子を見せてあげてもいいけど…?

踊り子を見せてあげてもいいけど…?

 

続いて賢媛篇(けんえんへん)に見えるエピソードを1つ。

謝安は踊り子が大好きだったのですが、

劉夫人はそんな夫のために侍女たちの舞を見せることにします。

 

これには謝安も大喜び。

劉夫人がいる手前、

間近で彼女たちの姿を見ることはできなかったものの夢中になって見つめる謝安…。

 

しかし突然目の前が真っ暗に。

「はい、終了でーす。」

劉夫人が天井につけてられていたとばりをおろしたのです。

 

「もっと見せてくれ!」

謝安は必死に頼んだのですが、劉夫人は冷たく一言

「別にいいけど、あなたの徳についての評判は傷つくでしょうね。」

こんなことを言われては、謝安も諦めるしかありません。

 

実は『芸文類聚』という書物にも謝安の踊り子好きエピソードがあるようです。

謝安は踊り子を妾にしたいと常日頃考えていたのですが、

妻が妾をとることを絶対に許してくれなかったので

半ば諦めかけていました。

 

しかし、そんな謝安に入れ知恵する人物が。

「『詩経』には嫉妬をしないことが妻の徳だという詩があることを教えてやればいいんだよ。」

さっそくこのことを劉夫人に告げる謝安。

 

話が終わると劉夫人は次のように問いました。

「その『詩経』という書物を編んだのは誰ですか?」

「聖人として名高い周公(しゅうこう)だよ。」

とドヤ顔の謝安。

 

しかし、

「そうですか。もしも周公ではなくその夫人がその書を編んだのであれば

絶対にその詩が選ばれることはなかったでしょうよ。」

とピシャリと答えた劉夫人。

謝安は妾をとることを諦めざるを得なかったのでした

 

時代を超えて愛される中国四大奇書「はじめての西遊記はじめての西遊記

 

あんた兄弟に負けてんじゃん(笑)

曹丕と曹植のイラスト

 

『世説新語』排調篇(はいちょうへん)には謝安がまだ出仕せずに

東山でニートをしていた頃の話が載っています。

謝安の兄弟には早くに仕官してその名を世に轟かせていた者がいたのですが、

これについて劉夫人がニヤニヤと笑いながら謝安にチクリ。

「男ならこのくらいの大人物になってもらわなきゃねぇ」

 

これに対して謝安は自分の鼻をつまみ

「いつかは仕官することになるだろうね。」

とテヘペロ。

 

このエピソードに鑑みるに、2人は軽口をたたき合える関係にある

仲睦まじい夫婦だったのでしょうね。

 

 

あんたの客どうかと思うわ

 

最後に軽詆(けいてい)篇に見える、やっぱり嫁に勝てない謝安のエピソードをご紹介したいと思います。

ある日謝安の家に客が泊まりがけで遊びに来ます。

謝安は客をもてなし、客も楽しそうにガハガハ談笑。

 

しかし、客人の言葉遣いはなれなれしく劉夫人も壁の後ろで思わず

聞き耳を立ててしまうほど。

謝安は次の日客を送り出した後、劉夫人にちょっぴり得意げに

「昨日の客をどう思った?」と尋ねました。

劉夫人も気に入ったに違いないと思ったのでしょうね。

 

ところが、劉夫人は次のようにピシャリと答えます。

「私の死んだ兄の家にはあのような程度の低い客は訪れたことがありません。」

劉夫人の答えに謝安は得意になっていた自分が恥ずかしくなってしまったのでした。

 

実は劉夫人の兄・劉惔(りゅうたん)は後に簡文帝(かんぶんてい)となる司馬昱(しばいく)にも

上賓の礼(じょうひんのれい)を受けたほどの人物。

そんな兄を持つ夫人に対して調子に乗ってしまったのですから

恥ずかしくなって当然ですよね。

   

 

三国志ライターchopsticksの独り言

 

劉夫人の歯に衣着せぬ言動は

世の男性からキツすぎると敬遠されてしまいそうですが、

彼女がそのような勝気な性格だったからこそ

 

英雄である夫・謝安と対等に渡り合えたのかもしれません。

典型的な良妻とは正反対に見える彼女ですが、

謝安にとっては最高のパートナーだったのではないでしょうか。

 

よかミカンのブラック三国志入門


 
 
 

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