今週のキングダム582話は休載でした。そこで、はじめての三国志では恒例のキングダム休載スペシャルを行います。今回は休載スぺシャルvol2、現在の秦の最強の敵である趙についてリアルに解説します。
あの李牧がリアルに率いていた兵力の特徴とは一体なんなのでしょうか?
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この記事の目次
キングダム休載スペシャルvol2実は万能ではない騎兵
趙と言えば、中国史上初めて胡服騎射、つまり戦車を用いない騎馬軍団を採用し中華を席巻した事で知られています。他の六国が持たない騎馬隊を正式採用した事により、趙は武霊王さえ長生きしていれば中華を統一しただろうと言われもしましたが、最近の研究では、それは誤りであるようです。
それというのも、武霊王は胡服騎射を専ら北方の匈奴や狄、林胡のような騎馬民族と戦う時に用いそれ以外の中原諸国と戦う時には、やはり、騎馬だけではなく、戦車も歩兵も弩兵も使っているからです。
銀雀山書簡の孫ビン兵法書にも、騎兵は単体ではなく戦車と併せて使用して、長所を活かし短所を補うようにと書かれ胡服騎射が万能ではない事がうかがえます。
キングダム休載スペシャルvol2 矢を放つのが精々だったキングダムの騎兵
実は、当時の騎馬には鐙がないので、体を馬上で安定させるのが難しく股で馬体を締め付けて安定させていました。この状態だと騎馬同士の戦いは無理で、出来るのは弓を放つ位、(だから胡服騎射と言う)矛を片手に敵兵に突撃などは難しかったわけです。
それでも地形が険しければ、小回りが利かない戦車より優位でしたが、平地では戦車に負けていました。騎兵が優秀な突撃力を得るのは鐙が発明され、弓以外の武器も使えるようになった漢の時代に入ってから後の事なのです。
キングダムでは、趙の戦車隊はあまり登場しませんが、現実には騎兵より多かったわけです。趙は、北方の異民族用の軍隊と六国と戦う時に使う軍隊を分けて配備していました。胡服騎射は、趙の領土を北方に拡大するのに役立ったものの、中華の覇権争いには、思った以上の貢献をしなかったようです。
キングダム休載スペシャルvol2 李牧が率いたリアルな軍勢とは
キングダムにおいて王翦と激闘を繰り広げている李牧ですが、彼が実際の歴史で率いていたのはどんな軍勢でしょうか?
史記の八十一巻、廉頗藺相如列伝には、李牧が趙軍の総司令官として登用される前の雁門の守備隊長だった時代の記録で戦車が千三百乗、騎兵1万三千騎、万金の勇士五万人、弓部隊が十万人でいずれも精鋭と書いています。
騎兵が万騎を超えているのは凄いですが、弓兵が十万人と圧倒的である事に驚きます。要するに、李牧の戦争とは襲い掛かってくる騎兵を弓兵で狙撃して撃退していたのでしょう。
低く見られがちな弓ですが、こちらはダメージを受けずに一方的に敵を倒せる兵器として重宝されていたのです。しかし、漫画でも合理的で味方が死ななければ、卑怯な戦い方も厭わない李牧が弓兵を多用していたのは、なんとなく漫画と史実がシンクロしている感じがして面白いですね。
キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言
キングダムと言えば、騎兵の一騎打ちですが、鐙が発達していない当時は、とても重い武器を振り回せず、出来ても矢を放って離脱するヒット&アウェイが精いっぱいでした。
もちろん、漫画でここをリアルにすると、味も素っ気もなくなりますし、キングダムの猛将は鐙なしでも股の締め付けだけで馬を制御できる超人達だから、重い矛でも振り回せると強弁すれば大丈夫と言えば大丈夫です。
参考:柿沼陽平「戦国趙武霊王の諸改革」(『日本秦漢史研究』第13号、2013年3月、58-85頁より60頁を参考).pdf
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