世界史でも近代に入るとよく出てくる言葉、帝国主義。何となく欧州列強やアジアでは明治日本が富国強兵を達成して他国に領土を求めるみたいな戦国時代の規模が大きいバージョンの気がします。
でも、実際の所、帝国主義って何を意味していて何が原因で起きたのでしょうか?
今回は近代世界史の基本、帝国主義について解説します。
この記事の目次
帝国主義の歴史は1870年から第一次世界大戦まで
帝国主義は英語でインペリアリズムと言い、そのまま帝国主義です。そもそも帝国という言葉は複数のより小さな国や民族などを含めた広大な範囲を統治する国家を指します。狭い意味での帝国主義は、1870年から1890年以降、第一次世界大戦までのおよそ半世紀に起きたアメリカや欧州諸国による世界分割の動きを示しています。
どうして長い世界の歴史で、この半世紀に帝国主義という列強による世界分割が起きたのか?その謎を解くには、帝国主義を準備した産業革命を見ていく必要があります。
第2次産業革命
18世紀中頃、イギリスで第1次産業革命が起こります。簡単に言うと、今まで水力や人力でえっちらおっちら続けていた家内制手工業が蒸気機関の発明により機械に代わり品質がよく価格が安い製品が膨大な量生産できるようになり、イギリスは低価格、高品質な綿織物を世界の市場に売りさばいて飛ぶように売れました。
こうしてイギリスは「世界の工場」と呼ばれるようになり、今までとは比較にならない莫大な富を持つ資本家が生まれたのです。イギリスが産業革命で成功したので、欧州各国もウチも真似して儲けようとイギリスを模倣し蒸気機関がドッカンドッカン売れます。
1856年イギリスのベッセマーがベッセマーの転炉を発明。これにより、それまで1回で30キロしか取れなかった製鉄が1回で25トンも生産できるようになりました。
これにより鉄の価格が大幅に下落し、社会のあらゆる製品に鉄が使われるようになります。
鉄の低価格化により、割高だった鉄道施設費用も下がり、欧州各地に急速に鉄道網が整備され始めました。そして、19世紀の後半にはエネルギー革命が起き、それまでの石炭燃料は電気や石油に変化します。
これにより産業は軽工業から重工業へ産業の中心が変化し、古い軽工業から抜け出せないイギリスに代わり、新興国のアメリカやドイツが急成長を開始します。
発明の連続による近代化の促進
19世紀の後半になると工業製品や知的財産に対する保護が、世界的な規模で図られるようになり、それに、鉄生産量の増大や蒸気機関のような動力の革命がプラスされ、発明が相次いでなされるようになります。
発明者の権利が保護される事で特許は巨大な富を生むビジネスになりました。例えば、ガソリンエンジン、内燃機関、電気、無線、発電機、飛行機、蓄音機、電話というような現代まで繋がる偉大な発明が19世紀末には相次ぐようになります。
これらの発明には、電気や自動車、飛行機のように市民に普及する事により莫大な利益を得られる発明が含まれていましたが、それらを大量に製造し維持するには莫大な資本が必要になり、やがて小さな企業は淘汰されて大企業に吸収されるようになります。
さらに、生き残った大企業は、それ以上の共倒れを防ぐ為に、カルテルやトラストを結び国内市場を独占していきます。財閥の誕生でした。
資本の投下と資源を求めての帝国主義
第2次産業革命を経て、欧米諸国で独占資本主義が進んで少数の巨大資本が誕生すると、国内に競争相手がいなくなり市場開拓も飽和状態になります。こうして、資本が過剰に蓄積すると儲かる為に国外に市場を求めるようになります。
また、新しい産業は、鉄以外にも、石油やゴム、ニッケルや亜鉛のような金属資源を必要としましたが、欧州国内にはそれらの資源が乏しく、それらの多くはアジアや東南アジア、中東、アフリカに存在していました。
そして、それらの資源国には、まだ産業革命が起きていない近代化未満の地域が多かったので、欧州の巨大資本は母国の政治を動かし、軍事力をチラつかせたり、一部行使したりしてそれらの資源国と不平等条約を結び植民地化。資本を投下して市場を開拓すると同時に原材料を獲得するようになります。
例えば、1908年に発見されたイランの油田開発にはイギリスの国策会社であるアングロ=イラニアン石油会社(Aioc)が最初からかかわり、パフレヴィー朝イランの皇帝や貴族を懐柔して、そこから上がる利益を独占して株主に配当する植民地会社でした。
このように、欧州各国に誕生していた巨大資本同士によるアジアや中東、アフリカでの資源獲得と市場獲得競争が激化し、それが、民族問題や宗教問題を巻き込んで複雑化し、第一次世界大戦に突き進んだという説があります。
しかし、最近では資本主義の最終段階としての国外への資本投下と資源獲得では帝国主義の、全ての要因にはなりえないとされる説が有力です。
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