日本が敗戦後に急激に復興した理由として、教科書的には「財閥解体」や「農地解放」、「労働組合結成の促進」がよく出てきます。しかし、これらは日本経済を民主化する土台であり、これだけで日本が経済大国にのし上がったわけではありませんでした。
日本に巨額の援助をしたアメリカ
戦後史を語る上で忘れられがちな視点、それはアメリカ合衆国による莫大な資金援助です。アメリカは第二次世界大戦において、本国が戦場とはならず、欧州に物資を売りまくれる勝ち組状況だったので好景気が続き、大戦終結後には世界一の金保有国になっていました。一方、敗戦した日本はライフラインを破壊され、また大陸から引き上げた数百万人の民間人や復員軍人を抱え、深刻な食糧不足と失業率に悩んでいました。
この状態を解消すべく日本政府は経済再建のため石炭や鉄鋼のような基幹産業を巨額の予算をかけて建て直しますが、予算を確保するために紙幣を濫発した事でインフレを招き物価は急上昇。生活に追われた国民は、食糧寄こせ!仕事を寄こせ!の大合唱で連日デモをし、共産主義政党が大躍進し、明日にでも共産革命が起きるのではないかと騒然とした雰囲気になります。
同じ頃、海の向こうでは共産党政権である中華人民共和国が成立、アメリカとソビエトは次第に対立を深めて、東西冷戦が現実味を帯びてきます。そこでアメリカは、ガリオア・エロア資金と呼ばれる救済資金と復興資金を国防予算から捻出して日本に投下。その総額は1946年から1951年までに18億ドルにも上りました。
18億ドルは現在の日本円に直すと2417億円ですが、戦後すぐのドルが強い時代では現在の10倍以上の価値があったと考えられます。もちろん、これらの援助は無償ではなく援助する代わりにアメリカ陣営に入り、再軍備に舵を切って共産圏に対する防波堤になれという命令も含まれていました。
ドイツやイタリアも資金援助したアメリカ
アメリカが援助したのは日本だけではありません。敗戦国となったドイツとイタリアにもマーシャル・プランとして130億ドル(1兆7461億円)の巨額の資金援助をしています。どうしてこの間まで敵だった国に巨額の資金援助をするのか?それは、この2国に西側陣営に入ってもらいソビエトを牽制する役割を期待したからです。
いわくつきではありますが、それでも外貨を獲得できる手段がなかった当時の日本にとって18億ドルの支援は有難いものだった事に違いありません。しかし、日本が経済大国になるには、ガリオア、エロア資金だけではまだ足りませんでした。日本が高度経済成長を実現するにはまだまだ、越えねばならない難題があったのです。中編に続く…
▼こちらもどうぞ!
日本が戦後の焼野原から一気に経済大国にのし上がった隠れた理由は?中編