NHK大河ドラマの配役に歌舞伎役者が多いのは何故?

2022年12月14日


 

田楽(鎌倉時代)

 

 

2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、北条時政を演じた坂東弥十郎さんや、北条宗時を演じた片岡愛之助さん、梶原景時を演じた中村獅童さんなど歌舞伎を中心に活躍している方々の出演が目立ちました。

 

鎌倉殿13人 北条義時

 

 

鎌倉殿に限らなくても、近年、歌舞伎役者出身タレントの大河出演は多いような気がします。これはどうしてなんでしょうか?

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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時代劇を演じられない役者が増えた

日本戦国時代の鎧(武士・兵士)

 

 

一番の理由は、民放で時代劇が激減し役者が時代劇の所作を知らないという事情があるようです。時代劇は和服をつけてカツラをかぶればいいというものではなく、刀の差し方や歩き方、座り方に至るまで決められた所作があります。

 

 

最上義光 武士

 

 

 

例えば、武士が刀を左腰に差しているのは、右手で刀を抜くからですし、同じ理由から鞘に収めた刀を右手で持ち歩く事は決してありません。この状態で敵に襲われたら刀を抜く事が出来ず即座に斬られてしまうからです。

 

安藤信正(幕末)

 

 

また、日本刀は刃を上向きにして鞘に仕舞われ、同時に湾曲しているので抜く時には鯉口を切ってから鞘を押し下げ傾けないと抜刀しにくい仕組みになっています。もちろん、刀を鞘に収める時も同じです。しかし、これらの時代劇の所作は時代劇の撮影現場で伝承されていくので、時代劇が激減した現在では所作を知らない役者が増えたのは当然でした。

 

画像利用について01 織田信長

 

 

また和服の身に着け方ひとつとっても、和服を着慣れている人とそうでない人では、着こなしがまるで違うものです。これらをギッシリ詰まっている大河の撮影スケジュールの中で一から役者に教えるのは大変な重労働となります。

 

 

歌舞伎で鍛えられた役者の即応性

緞帳の前(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)

 

 

逆に歌舞伎は演目に時代劇が多いので、歌舞伎役者は幼い頃から時代劇に慣れています。撮影スタッフは、時代劇の所作を教えなくて済むので時間の短縮になるのです。また歌舞伎は一面で様式美の世界ですから所作も徹底稽古し舞台に映える美しい動きが出来ます。

 

マラソン日本代表として走る中村勘九郎 いだてん

 

 

そのため、大河ドラマでも重要な役どころの人物には、歌舞伎役者、または狂言師を起用する事でドラマの重厚感をグッと上げようとしているのです。

 

 

往年の時代劇スターの活躍

名古屋城

 

 

民放で時代劇が制作されなくなった結果、それまで民放の時代劇で活躍していた時代劇俳優が、NHK大河ドラマに起用されるケースも増えています。青天を衝けの冒頭シーンの連続登場で話題になった徳川家康を演じる北大路欣也さんや、鎌倉殿の13人で平清盛を演じた松平健さん、どうする家康で登誉天室を演じる里見浩太朗さんなどがいます。

 

 

大河ドラマが時代劇最後の砦に

まだ漢王朝で消耗しているの? お金と札

 

 

民放が時代劇をやらない大きな理由としては衣装や小道具にお金がかかるという点も大きいでしょう。NHK大河ドラマでも1話にかかる制作費は6000万円から1億円前後で、その大半が大道具のようなセットや衣装であるようです。

 

 

 

一方で民放のドラマ制作費は俳優の人気や時間帯、スポンサーなどで変動はありますが、平均一話で2000~3000万円で大河の半分です。これではお金がかかる時代劇はなかなか造れないと言えます。

 

週刊誌を楽しみにするkawauso様

 

 

また制作しないので、時代劇に馴染みがある視聴者が少なくなり需要もなくなるという悪循環があるのかも知れませんし、たまに時代劇をやるとしても昨今の1クール体制では、継続して時代劇を撮影できず、やはり技術の蓄積が起きない点もありそう。そう考えるとNHK大河ドラマは日本の時代劇を守る最後の砦になっているとも言えますね。

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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