NHK大河ドラマどうする家康第10話の「側室どうする?」では、家康が側室として城の下働きをしているお葉を迎えた場面が描かれました。無口で目立たないが真面目に仕事をし、突進する猪もさばけるお葉を瀬名や於大の方は気に入るのですが、お葉は同性愛者で自分の性に人知れず悩んでいたのです。
嫁に出される事を恐れて奉公へ
お葉は家康に本家を滅ぼされた鵜殿氏の支流ですが、男に触れられると吐き気がするとして、異性を受け付けない体質でした。そのため実家から嫁に出される事を恐れ城に奉公すれば嫁にいかなくて済むとして、岡崎城に奉公に入ります。そして目立たないように勤めていましたが、ある日、獲れた猪を刃物で撃ち殺し、豪快にさばいてみせた腕前を於大や瀬名に見込まれて、家康の側室にされてしまうのです。
お互いが相手を恐れていた初夜
お葉は側室になった段階では、自分が同性愛者だとは気づいていませんでした。ただ、男が苦手だという認識があるだけだったのです。そんなお葉が、どうすれば男が悦ぶのか知っているわけはありません。そこで家康の正室である瀬名が家康は耳が性感帯で、その後、お腹を撫でればイチコロだとアドバイスします。
その通りに実行しようとしたお葉ですが、異性に触れられるのが苦手なのでジリジリと家康に詰め寄り、家康を羽交い絞めにして押し倒し、よしよしよしとお腹を撫でるという猛獣を撫でるムツゴロウさんのような行動に出て家康は悲鳴を上げました。それはコメディタッチで、家康が被害者のように見えますが、実はお葉も被害者なのです。異性に対しどう接していいか分からないお葉にとってはそれが精一杯の愛情の示し方でした。
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同じ下働きの美代に惚れて同性愛者だと知る
それでもやがて、家康の子を授かるお葉ですが、同じ下働きの女性、美代を好きになってしまいます。そこでお葉は初めて、自分は同性愛者で男を受け付けない体質なのだと悟ったのです。本当の自分の性に気が付いたお葉は、もう家康の夜伽は出来ないと決意し、家康に好きな相手が出来たと告げて側室を辞退したいと申し出ます。
すっかりお葉が気に入っていた家康は逆上し「相手の男を連れてこい、手打ちにしてやる」と息巻きますが、お葉が美代を連れてくるとあまりの事に絶句してしまい、側室から解放して、元の下働きの下女に戻したのです。
それは史実ではないが…
今回の放送については史実を無視して、LGBTに阿っているという意見もありました。確かに、お葉のモデルは西郡局と称される実在の女性で同性愛者だったという記述はありません。ただ、大河ドラマは、そのままズバリの時代劇を放送するものではありません。多くの場合、時代劇を通して現代の問題に一石を投じようとしている事が多いのです。
たとえば2019年の大河ドラマ「いだてん」は、日本の近代スポーツの誕生とオリンピックを描いていますが、メダル取得への偏重や国家とスポーツの関係、ナショナリズムと五輪精神など、そのまま21世紀にも横たわる問題を描いていました。どうする家康は戦国時代を描いていますが、戦国時代を描きながら、現代の結婚の問題、子育ての問題、女性の権利問題などを問うていくのは、正しく、これまでの大河ドラマの路線に沿った手法ではあるのです。
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