連日、テレビを賑わしているジャニ―喜多川性加害問題、どうしてジャニ―喜多川氏の生前ではなく死後、3年が経過してから問題になるのか?イギリスBBCが問題にするまで、なぜ日本のマスメディアは沈黙を守ったのか?腑に落ちない点は色々ありますが、今回は事件そのものではなく、告発者を攻撃してしまうファン心理を考えてみます。
この記事の目次
性被害を告白するとファンに叩かれる
イギリスBBCが報道する前にも、ほかならぬジャニーズに所属していた元タレントが、ジャニ―喜多川より性被害を受けたと告白する、いわゆる暴露本は存在していました。そのため、ジャニーズファンの間では、性被害について噂として知っている人間もいたようです。
しかし、それは性被害を受けたジャニーズタレントにとってプラスに働く事はありませんでした。2021年に元7 MEN 侍の前田航気がインタビューでジャニ―喜多川のセクハラ行為や性交があった事を語った時、SNSでは「なぜ話すのか?」といった否定的コメントや「グループの名前を汚さないでほしい」と言ったファンの声が見られたそうです。そのため、前田航気はインタビューの告知ツイートを削除、インタビュー記事も当該部分がカットされた事がありました。
性被害は我慢すべきというファンの認識
また、2023年のBBCによるドキュメンタリー番組の内容を紹介した日本語記事に対しても、今さら蒸し返すな、ファンなら大体知っている事、芸能界ってそういうものという、性的虐待問題を認識していながら報道する事に拒否感を持つ否定するコメントが並びました。にわかには信じられない事ですが、性被害は芸能界では特別な事ではなく誰でも受けている通過儀礼と考えているファンも存在したのです。
有害なファンダムが告白者を攻撃する
BBCでのドキュメンタリー放送後も、当初は、性被害を告白した人間に対するジャニーズファンたちのセカンドレイプと否認の書き込みがあちこちで目立ったようです。その内容は、彼らは嘘つきだ。お金が欲しいのだろう!成功しなかった恨みをぶつけている!というものや、私の推しに迷惑をかけるな!またはK-POP勢力のジャニーズ潰しの謀略だというものが見られました。
SNSにおいては、どんな過激な意見にも一定のいいねがつきます。すると、こんな事を考えているのは自分1人なのでは?という怯えが消えて、むき出しの感情を投稿しやすくなり、差別感情が差別感情を呼んで収拾がつかない炎上を引き起こすのです。そのような心理を悪しきファンダムと言います。
なぜ、告発者を攻撃するのか?
では、どうしてファンは、ジャニ―喜多川に性被害を受けたと告白した元ジャニーズタレントに攻撃の矛先を向けるのでしょうか?。トーマス・ボーディネット豪マッコーリー大学上級講師の話では、日本のファンの多くは自分の推すタレントに性被害は関係ないと考えていたり、売れてないタレントの僻みだと突き放したり、ジャニーズ事務所を守らないと、推しのアイドルの活躍を見られなくなると恐れているのではないかと分析しています。
また、同氏はジャニー喜多川氏が人々に夢を与えてきた事と、若者を搾取してきたことは別の問題ですと述べ、喜多川氏の功績を考慮し性加害について不問にするならば「権力者ならば、どんな罪を犯しても代償を払う必要はない」という誤ったメッセージを若者たちにも送ることになってしまうとしています。
真相究明を願うジャニーズファンも
もちろん、すべてのファンが性被害を告白したタレントに対し攻撃的なわけではありません。ジャニーズファンの中からは、被害の訴えを無視せずに検証してほしいと事務所に働きかける行動も生じました。2023年5月12日には、ジャニーズファン有志らによる「PEN LIGHT」が記者会見。
「私たちはジャニーズファンという立場で直接の性暴力被害者ではないが、このことに向き合っていく責任がある」として、1万6000人の署名を集め「ジャニーズ事務所で起きた性被害の検証」についてジャニーズ事務所側に郵送で送ったと発表しました。TBSでは地上波のニュース番組「Nスタ」と「news23」で報じています。
男性への性加害に向き合うべき時
今回のジャニ―喜多川氏の性加害問題の根深い所は、事務所のみならずファンもマスコミも、この性加害の事実を知りながら、ジャニーズ事務所がもたらす夢の部分や収益の大きさを失う事を恐れ、見て見ぬふりをしてきた事ではないかと思います。また、女性に比較して男性の性被害は日本では欧州ほどに大きな問題にはなりません。しかし、当然のことながら男性であっても意に沿わない相手に強制的に性的関係を結ばされたら、傷つき心身共に深い傷を負うのです。ましてや10代の少年がその被害に遭うとなれば、尚の事です。
甘っちょろい事を言うな、芸能界はそういう異常な世界なんだよ!という意見もあるでしょう。筆者もSNSで多く目にしました。しかし、これまではそうであっても、今後もそうであるべきとはどうしても思えません。今回の問題が日本国内ではなく、BBCというイギリスメディアの報道によりいわば「外圧」により認知されてきたというのは日本人として情ない事ではありますが、何を言おうとも権力者が自分の権力を背景に事務所に入ってきた青少年に対して性的関係を強要し、拒否すればクビにするのは、どう考えても異常な事です。ジャニ―喜多川氏が死んだから終わりではなく、本当は何があったのか?どうすれば、同じような問題を阻止できるのか?考えないといけない時期ではないでしょうか?
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