日本の超少子高齢化は、どうにもできない状況に入りました。総人口に占める65歳以上人口は28.4%で2025年には3人に1人が65歳以上の高齢者、5人に1人が75歳以上の後期高齢者です。一方で子供人口は49年連続で減少しています。急速に活力が薄れ、病める大国になった日本。その中でバブル期に建設されたマンションが住民の高齢化と維持管理の難しさから急速にスラム化が進んでいるのです。
90年代の億ションが無価値に
かつては、都心から少し離れたベッドタウンで1990年代に建築されたマンションは、当時1億円以上になり億ションともてはやされました。しかし、かつての億ションの価格は下落しています。一般には下落すれば買い手がいそうですが、実際には買い手はいません。それは、1990年代のマンションは、もう耐用年数を過ぎて、これからは壊れていく一方になってしまうからです。
高齢化と物価高騰でマンションが老朽化
また、これら老朽化マンションには若い人は住んでいません。若い世代はマンションを出て行き、残っているのは高齢者ばかりです。年金に頼って生活している高齢者も多く、ここ1~2年の水道光熱費の高騰で、マンションの管理費も支払えない状態の入居者も出ています。維持管理費が支払えない場合、管理組合は、これをマンションの修繕費から補填します。こうするとマンションが老朽化した際の修理費用がなくなります。こうして、マンションの外壁は剥げ落ち、下水道は逆流し、廊下の電球が切れ、雨漏りが頻発するようになると、見た目も薄暗く汚くなりさらに若い世代はよりつかなくなります。また、入居者が耐えかねて出ていくと、そこは空き家になり、管理費も修繕費も徴収できません。明るい未来は何一つ見えないのが、90年代建設マンションの実態なのです。
認知症で問題行動を起こす高齢者入居者が増加
もうひとつ、深刻な問題があります。それがマンション入居者の認知症問題です。統計によれば65歳以上の5.4人に1人は認知症を発症すると言われ、有病率は18.5%です。急いで注意しておきたいのですが、認知症=問題行動を起こす人では決してありません。実際には、特に周囲とトラブルを起こさない認知症患者の方が多いのです。ただ、2025年には認知症患者数が675万人になると予測され、その中には問題行動を起こす高齢者も一定数出てくる事が想定されます。
糞尿や口論、奇声、地獄の老朽マンション
すでに一部のスラム化マンションでは、廊下に糞尿が垂れ流しになっていたり、認知症で昼と夜の区別がつかなくなった入居者が真夜中に犬を連れて廊下を徘徊したり、住民同士が毎日、口論を繰り返したり、幻聴から四六時中奇声を発したりする入居者が出るなど、深刻なケースも報告されているそうです。なんども釘を刺すようですが、すべての老朽化マンションがそうではありません。しかし日本の高齢化率を見ると、そんな地獄のような状態のスラムマンションも一定数出てくるのは否定できないのです。
姥捨て山と化した老朽マンション
こんな酷いマンションに親を住まわせていて子ども達や親類は平気なんだろうか?という疑問もあるでしょうが、何とかしたくても自分の生活に精一杯で、高齢になったり、認知症を抱える親と同居する決心も持てず、見て見ぬふりをしている子どもや親族も多いようです。絶望的な言葉ですが、老朽化したマンションを高齢になった両親の姥捨て山として、ここで生涯を終えてくれと思っている家族もいるのです。
まとめ
この問題に即効性のある解決策はありません。日本が明治維新以来続けてきた土地と建物という私有財産の概念を覆し、国が適切に私有財産に関与し、増えすぎて空き家だらけになった住宅を撤去して全体のために活用し、人が住むエリアを縮小して、介護ロボットや少ない若年者で高齢者を効率的に見るような仕組みが出来ないと難しいでしょう。それは、明治維新以来の大改革になります。それでも問題に向き合い決断しなければ、いずれ、上記の問題は、私たちにのしかかってくるのです。
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