社会人の皆さん、日々のお勤めご苦労様です。突然ですが皆さんは「一発芸」をやったことがありますか?
ほらほら、忘年会とか新年会とか、何かの宴席で…。あ、思い出したくないですし、考えたくない…?そんな社会人にとっての苦行・一発芸。固辞すれば場の雰囲気が悪くなり、かといってやってみても、ウケずに皆からしらーっとした目で見られる…。あぁ、吐きそ。でも、中には酒で変にテンションがぶち上がり、自ら一発芸をしにステージに飛び出しちゃう!という猛者もいるんですよね、これが。
そんな彼らはスベってもどこか得意げ。…そのメンタル、うらやましいっす。でも実は、そんな鋼のメンタルを持つ奴が三国時代にもいたのだとか…!
博学のスーパーじいちゃん・邯鄲淳
魏の曹操が荊州をゲットしたとき、人材コレクター・曹操はかねてから気になっていたある人物を招き寄せます。儒教はもちろん文才にも長け、その上文字にも明るく、書の心得まであったという邯鄲淳というおじいちゃんです。
父・曹操が邯鄲淳を招聘したことを聞きつけた後継者第一候補の曹丕は、父に「俺、邯鄲淳欲しい~」とおねだり。曹丕もまた、邯鄲淳のことがずっと気になっていたのです。しかし、なんと弟・曹植まで「パパ、僕に邯鄲淳ちょうだい!」と言い始めたからさぁ大変。曹操は邯鄲淳を曹丕と曹植どちらにやろうか悩み、ひとまず曹植に邯鄲淳を会わせてやることにしたのでした。
あの悲劇の王子がまさかの暴挙…!
曹植はウキウキしながら邯鄲淳が臨淄に来るのを待ちました。いよいよ邯鄲淳が曹植の元に到着すると、曹植は喜んで部屋に招いて座らせます。
曹植「…」
邯鄲淳「…」
なぜか言葉を発しない曹植と邯鄲淳の2人。両者の間にとてつもなく微妙な空気がただよいます。やはり年の差がありすぎて、お互いにどう接すればいいのかがわからなかったのでしょうか…?すると突然、気まずい雰囲気に居たたまれなくなったのか、曹植が従者にあるものを持ってくるように命じました。
あるものとは、水。しかし、飲むための水ではありません。曹植は水を用意させると、おもむろに服を全て脱ぎ捨て全てをさらけ出し何とその水で体をゴシゴシ洗い始めたのです!これだけでも「え!?」って感じですが、曹植の暴走は止まりません。なんと今度はおしろいをペタペタつけて顔を真っ白にし、さらに自分の頭の冠をはぎ取って髪を振り乱し、蛮族風アレンジを加えた珍妙奇天烈なリズミカルダンスを披露。
その上ダンスをしながらボールや剣を器用にジャグリングして見せ、その後謎の漫談をペラペラとしゃべり倒してキメ顔でこう言ったのです。「邯鄲淳先生、いかがでしたか?」
意外とウケた…?
評価を求められた邯鄲淳先生でしたが、無表情で沈黙を貫きます。その様子を見た曹植は目が覚めたのでしょうか。いそいそと服を着て居住まいを整え、天地開闢の話をし始めたのでした。これには流石の邯鄲淳も乗っかってくれたようで、その後2人の話は弾んだようです。
邯鄲淳はその後食事をして日が暮れる頃に帰っていったのですが、知り合いに向かって曹植のことを「天の人」だと話したそうです。それは、曹植と交わした議論が面白かったからかでしょうか?それとも、あの曹植渾身の一発芸を見たからでしょうか…?実は、この邯鄲淳というスーパーじいちゃんは、『笑林』という笑話集を作ったことでも有名な人物。もしかしたら曹植は笑いの心得のある人には笑いが受けるだろうと思って「身体を張った渾身のギャグで笑わせて距離を縮めよう!」と考えたのかもしれません。結局それがウケたのかウケなかったのか、邯鄲淳本人に聞いてみたいものですね。
悲劇の幕開けはここからだった…
邯鄲淳が曹植を褒め称えたという話は父・曹操の耳にも届きました。これを受けて曹操は、曹植を後継者にしようかな?と考え始めます。しかし、このことを良く思わない者がありました。後継者第一候補の曹丕です。
三国志ライターchopsticksの独り言
もし曹植が裸芸に走らなければ…いえ、邯鄲淳が曹植を褒め称えなければ、曹丕が曹植を目の敵にすることも無かったかもしれません。
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