「科学立国」という言葉がありますよね。
そして日本の近現代史でも、しばしば、これはキーワードとされてきました。
たとえば、幕末明治で西欧列強の脅威から日本がなんとか独立を守れたのは、薩摩藩や佐賀藩において、既に科学やテクノロジーが十分に発達している素地があった、すなわち、科学技術に通じていた武士たちがたくさんいたからだ、と言う説もあります。
実際の歴史はもちろん、もっと複雑でしょうが、あくまで「イフ歴史」を考える上での素材ならば、「軍事や国力的に圧倒されている勢力は、科学技術において秀でることで、生き残り策を見出す」というイフ展開パターンはあってもよさそうですよね。
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三国鼎立のうちの一国がまさかの「科学立国」を方針に掲げたらどうなった?
そこで、今回は、いささかとっぴに聞こえるかもしれませんが、三国時代を舞台に、「軍事や国力的に圧倒されていた勢力が、科学技術開発で起死回生」というイフシナリオを考えてみたいと思います。ここで注目したのが、「羅針盤(らしんばん)」です。
羅針盤というのは、航海で使う方位磁石のこと。これはヨーロッパ発の大航海時代の原動力となったという点で、世界の三大発明のひとつに数えられることもあります。ですが、そもそも羅針盤の発祥は、中国とされているのです。もともと昔から、中国では磁石を使うと南北を把握できることが知られており、北宋の時代にはいわゆる羅針盤としてのスタイルは完成していた。
それがアラビアを通じてヨーロッパに伝わり、ヨーロッパ人たちの大航海時代の起爆剤になったということです。世界史的には、そのような流れなのですが、こういう話をきいたとき、私は、以下のように、夢想してしまいました。」
すなわち、そもそも羅針盤の原型が中国発祥ならば、ヨーロッパの大航海時代よりも何世紀も前に、いやいっそのこと、三国時代の古代中国で、史実の世界史よりも何世紀も早く、羅針盤が発明されてしまったら、どうなっていただろうか、と。
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羅針盤を手にした孫権の無双時代が始まった!
さて、魏呉蜀の三国を見たとき、「羅針盤」を開発するのがいちばん似合っている勢力はどこでしょうか。これは、だんぜん、孫権が率いる呉でしょう!
というのも、孫権の呉は、長江より南の江南を拠点とし、水軍を駆使して長江を死守することで、自分たちの領土の独立性を守っていました。史実の三国時代でも、魏呉蜀の中では魏が圧倒的な強国でしたが、呉が水軍の運用で優位だったがために、国力では劣勢な呉が蜀よりも国家としては長命に過ごせた理由となります。
そんな孫権軍の重臣の中の誰かが、ここは架空のシナリオなので、諸葛瑾でも、魯粛でも、張昭でも、誰でもよいのですが、磁石の性質を研究しているうちに、羅針盤を完成させてしまったとしましょう。
そしてそれを、孫権に献上したとしましょう。すると、どういうことになるでしょうか?
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羅針盤がある以上、中国大陸の内戦にこだわる理由もなくなる?
羅針盤が手に入ったということは、陸地から離れて遠洋まで自在に航海できてしまうことです。こうなると、孫権軍の水軍は、長江を防衛する川船の船団程度で収まっている必要はなくなります。引き続き、長江の水軍の防衛線で魏を牽制しながら、そのいっぽうで、太平洋岸に造船場をつくり、遠洋航海用の巨大船の建造を始めることでしょう。そして呉が太平洋に自在に出発できるようになると、三国志の地図の見方が、がらりと変わってしまいます。
孫権の呉といえば、長江の南に狭く閉じ込められた、袋小路にあるように見えていたものが、自由自在に太平洋に出られるようになった呉は、魏も蜀も無視して、どんどん太平洋に航路を発見し、太平洋の島々の古代王国と同盟を結ぶと言うとんでもないことができてしまうのです。
たとえば台湾、たとえばフィリピン、たとえばインドネシア。他にもいっぱいありますよね!中国大陸から遠洋に出られるようになれば、交易を結べそうな太平洋のさまざまな島が。ヨーロッパ大航海時代を先導したスペインやポルトガルに先駆けて、呉の孫権の一族が「航海王子」を輩出する王家になっていたかもしれない。こうなるともちろん日本のことも気になります。
魏志倭人伝という記録によると、三国時代には、邪馬台国の女王卑弥呼が魏に対して使者を送ったとされています。
ですが、今回のこのイフ歴史では、邪馬台国がわざわざ魏に使者を送るまでもなく、孫権の呉のほうから交易を求めて船が到着することでしょう。
そして、まさかまさかの、邪馬台国と呉の軍事同盟が成立し、邪馬台国の援軍が、魏との対決において活躍する、などという展開も、あり得たかもしれません!
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まとめ:偉大なる航海王孫権のおかげで世界史は「アジア太平洋」が中心に?
三国時代の南に追いやられていたと思われていた呉が、太平洋諸島との強固な交易・同盟国家に化けて超強力になってしまうというこのシナリオ。魏の優位性も、大いに崩されかねません。いくら魏が中国内陸の生産力や人口を背景にしていても、呉は太平洋のさまざまな島嶼国からの産物や援軍で急成長してしまうのですから。これならば呉が中心の三国志展開があってもおかしくはない?
いやそれどころか、ヨーロッパの大航海時代に先駆けて、孫権が太平洋にさまざまな海の交易ルートを開拓してくれたおかげで、世界史そのものが、ヨーロッパ中心ではなく、アジア太平洋を中心に動いた世界線になってしたかもしれません!
たった羅針盤ひとつを発明するだけで、呉がここまでのチート「科学立国」に!もちろん、これは、かなり「夢」が入ってしまったイフ展開です。ただ、これは孫権軍ファンの方にはきっと、胸躍る、夢いっぱいなイフ展開になったと思っておりますが、いかがでしょうか?
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