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陸遜の孫、陸機も犬愛者![三国志時代の犬との深い絆]

2024年6月30日


犬

 

ペットは現代中国語で「寵物(chǒng wù)」と綴ります。直訳すると「かわいがるもの」。ペットを家族として迎え、愛情を注いでいつくしむ私たちにとってはしっくりくる表現ですね。

 

しかし、「寵物」は比較的最近できた言葉。ペットがかわいがられるものとしての地位を築いたのは最近のことのようです。事実、現在最も多くの人に愛されている犬も、元々は番犬や猟犬として飼われているに過ぎないものでした。では、いったいいつから犬は愛玩動物としての地位を確立したのでしょうか。そして、番犬や猟犬として飼われていた犬は、愛玩犬ほど愛されていなかったのでしょうか。

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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陸遜の孫・陸機と愛犬との絆

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人と犬の絆の物語…動物を扱う番組でよく取り扱われる題材ですよね。犬を飼っている人はその犬の健気さに胸を打たれ、自分が飼っている犬への愛情を深めることでしょう。そんな人とペットの絆の物語の先駆けともいえるエピソードが『晋書』にあるのです。

 

三国呉で活躍した武将として名高い陸遜(りくそん)の孫にあたる陸機(りくき)は、西晋王朝に出仕する際、幼少の頃から可愛がっていた猟犬も都に連れていきました。

 

時が過ぎ、実家と疎遠になっていた陸機は、「実家に便りを持って行ってくれないか?」と犬に冗談めかして言いました。すると、犬は尾を振りながらワン!と返事しました。そこで、陸機が手紙を入れた竹筒をその首に括りつけると、犬は実家の方向に走り出し、ついに返事を携えて陸機のもとに帰ってきたのです。犬は主人の愛情に応え、伝書鳩ならぬ伝書犬として陸機に尽くしたのですね。

 

 

昔の中国にはどんな犬がいたの?

犬

 

さて、昔の中国にはどんな犬がいたのでしょうか。藤島志麻(ふじしま しま)「中国古代のイヌの品種改良」によれば、中国に存在した犬の変遷は以下のようになっています。

 

1.新石器~周代:立ち耳、柴犬程度のサイズ。

2.漢代:猟犬・番犬・贄犬と、用途別に品種改良が行われる。

3.南北朝:垂れ耳の犬の埴輪。

4.唐代:絵画に「サルーキに似た大型犬」や「パピヨンに似た小型犬」。

『旧唐書』・『新唐書』に、「拂菻狗(馬をひく犬)」。

玄宗皇帝(げんそうこうてい)時代の武官の墓から長毛犬の埴輪。

5.宋代:庶人の墓に「払菻狗」の埴輪。

6.遼代:宦官や軍人の墓室に犬の壁画。

 

4.唐代に登場した「サルーキに似た大型犬」。

 

サルーキは人に飼われるようになった最古の犬種と言われています。アラブの遊牧民は、鷹を狩るときに使う猟犬として飼っていました。『簪花仕女図』に描かれた2匹の「パピヨンに似たイヌ」。16世紀頃、パピヨンは耳が蝶のように広がっているさまが可愛らしいため、欧州の貴婦人の間で大人気になった犬種です。しかし、『簪花仕女図』を描いた周昉は中唐(8~9世紀)の人。もし描かれているのが欧州で人気を博したパピヨンそのものだったら、唐代の人がヨーロッパの流行を先取りしていたということになり、それはそれで面白そうですね。

 

両『唐書』に見える「拂菻狗」。馬をひく犬といえば大型犬のダルメシアンをイメージする人が多いと思いますが、両『唐書』の記述によれば、体高約19cm、体長約31cmとどう見積もっても小型犬サイズです。最近は動画サイトで馬の手綱を咥えてリードする小さな犬が話題になっていましたし、小型犬でもそれくらいのことはできてしまうのかも?

 

 

 

犬と人との絆 まとめ

犬

 

犬は人類の友と呼ばれているように、犬は人と共に進化を重ねてきた生き物です。しかし、古代より犬は家族としてではなく、人間の生活や仕事のための道具として飼われていました。

 

中国で、犬が現代のように人を癒す存在として飼われるようになったのは唐代あたりからのようですね。しかし、言葉としては残されていませんが、たとえ道具として犬を飼っていても、献身的に尽くしてくれる犬に対し、陸機のように愛情を深めていった人はたくさんいたのではないでしょうか。犬と人との関係の根底に流れるものは、実は古代から変わっていないのかもしれません。

 

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