『水滸伝』108人の豪傑である林冲は物語初期に登場する人物です。彼は無実の罪により職も家族も失ってしまい、逃げるようにして梁山泊に入りました。
主人公の宋江が登場するまでは、彼が主人公としてお話が進みます。さて、そんな悲劇のキャラクターである林冲は『三国志演義』にモデルが存在します。それは誰でしょうか?
今回は林冲について解説します
この記事の目次
武術師範は凄く・・・・・・なかった
林冲はあだ名を「豹子頭」と言います。初登場時は34,5歳と推定されていました。彼のあだ名である豹子頭の意味については後で解説します。職業は北宋(960年~1127年)の禁軍(近衛兵)で武芸を教える師範でした。
聞いた感じではスゴイと思うかもしれませんが、ちっとも驚くレベルではありません。実は武術師範は非常に待遇が悪く、最下級である九品の武官よりも下でした。
小説にツッコミを入れるのは野暮ですけど、まだ辺境で警備をして異民族と戦争をした方が稼ぎもよいし、功績も挙げれたはずです。林冲は、まだ30代で妻もいる身。わざわざ自分から暮らし向きを悪くする意味が分かりません。
林冲のモデルは張飛
林冲にはモデルがいました。それは・・・・・・張飛です。イメージが合わないと感じる人もいるかもしれません。まったくもってその通り。私も最初にこの話を聞いた時、同じ思いを味わいました。
ヒントは『三国志演義』の中にあります。『三国志演義』で初登場時の張飛を「豹頭」と表現する記述があります。要するに豹のような顔という意味です。
林冲のあだ名は豹頭に「子」の字を付け足したのです。「子」はジュニアという意味。つまり、林冲は張飛ジュニアです。また、虎のような髭・つぶらな瞳という容貌、武器も蛇矛であることから林冲は明らかに張飛をモデルにしているのは確かです。
無実の罪で逮捕
先述したように林冲は下級武官。出世・政争とは無縁。そんな彼がある日、事件に巻き込まれます。ある日、林冲の美人妻がチンピラに絡まれていました。助けに入った林冲ですが相手はなんと、軍の幹部である高俅の息子。高衙内でした。とんでもない奴に手を出したと思った林冲でした。
そんなある日、林冲は街で立派な剣を購入します。するとタイミングよく高俅が「剣を見せてくれ」と頼んできました。仕方なく参上した林冲は、とある一室で待たされます。「どこかで見たような場所だな?」と思いますが、しばらく待ちます。
だが、いつまでたっても高俅はきません。それどころか、林冲は自分がいる場所が白虎節堂であることを思い出しました。白虎節堂とは帯剣所持禁止の部屋です。気付いた時には遅く、兵士たちが一斉に入って来て、林冲は法律違反で逮捕されました。
林冲暗殺指令 その1
林冲は死刑にされるところでしたが、裁判を担当した役人が林冲の無罪を見抜いたので死刑は免れます。結局、林冲は滄州まで護送されることになりました。ところが、高俅は全く諦めません。護送役人を買収して林冲殺害を依頼。林冲は道中でボコボコにされてしまい弱ってしまいます。殺されそうになった瞬間、幸いにも林冲の親友である魯智深が助けにきました。
魯智深は背中に刺青をしていることから「花和尚」と呼ばれています。魯智深は逃げることを提案するも林冲はそれを拒否して、素直に流刑地まで行くことにします。
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