鎌倉時代なんて当たるわけがない!そんな一部の冷笑を乗り越えて社会現象にまでなったNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」皆さんはご覧になりましたか?筆者は1話から最終話まで全てに目を通しました。ドラマは非常に面白いものでしたが、それ以上に「鎌倉殿」の21世紀とのシンクロ率に驚きました。
アリエナイ時代を描いた鎌倉殿
鎌倉殿の13人は平家全盛の平安時代末に伊豆に流罪になった源氏の貴種、源頼朝が伊豆の小豪族、北条時政の娘、政子と結ばれ以仁王の令旨を切っ掛けに挙兵するところから始まります。しかし、平家を滅ぼして鎌倉幕府を立てるまでは前半パートであり、後半は当時の日本の精神的な支配者、後鳥羽上皇に対し、後半の主人公北条義時が極めて不利な戦いを挑んで大勝し上皇や天皇を流罪にし、義時の意向で新しい天皇を立てて終了します。これは今でいえば、日本政府を倒して総理大臣を追放し、新しい政権を造るような大事件です。当時の人々はまさに世の中がひっくり返ったと認識したでしょう。
アリエナイ侵略が起きた2022年
さて、ドラマが始まった2022年1月から1ヵ月後、現実世界でも驚天動地の大事件が起こりました。日本の大半の識者がアリエナイと語っていたロシアのウクライナ侵略が始まったのです。世界がインターネットで1つに統合されつつある今、大国による侵略戦争は絶対に起きないと信じ込んでいた私達日本人は、地上で近代装備をした兵士と兵士が銃撃戦を開始し、空爆とミサイルで美しい都市が廃墟となり、不変と思っていた国境が簡単に変わる様子を目の当たりにしました。
シンクロするドラマとリアルのアリエナイ
天地がひっくり返ってもアリエナイと信じ込んでいた日常が得体の知れないマグマのようなエネルギーで一瞬で引っ繰り返される。そのアリエナイという感覚、非日常が毎回繰り返されたのが鎌倉殿の13人ではなかったかと思います。院宣さえ出せば鎌倉は恐れて義時の首を差し出してくると太古からの皇室の威光に胡坐をかいていた後鳥羽上皇は、21世紀の現在、ロシアがウクライナを侵略するなんてアリエナイと高を括っていた平和ボケした日本人と重なって見えないでしょうか?
鎌倉中の怨嗟を受けて地獄に落ちた小四郎
アリエナイ現実を前にした時、私たちはどうするのでしょう?それを示してくれたのも、また鎌倉殿の13人でした。頼朝が築いた鎌倉を守るため、坂東を鎌倉御家人の理想郷とするため、伊豆の小豪族の次男坊小四郎が取った手段は粛清につぐ粛清でした。仲間を殺し身内を殺し、忠誠を誓った主君まで殺してしまう小四郎の表情は前半と後半で大きく変貌。
ついには、仏師運慶にお前にそっくりだとしておぞましい仏像を贈られるまでになります。呪わしい宿業を背負った小四郎でしたが、では、他にどんな手段を取れば地獄の粛清を回避できたのでしょうか?神ならぬ人の限られた叡智ではそんな事は分かりません。それでも現実は待ってはくれず小四郎は自分に出来る唯一の方法として、鎌倉中の怨嗟を一身に担う形で最後を迎えます。唯一の救いは立派に成長した嫡男、泰時が血と粛清の鎌倉を平和で豊かな鎌倉に変えてくれることを願うだけだったのです。
悲惨で理不尽な世界に立ち向かうしかない
大国ロシアによる隣国ウクライナへの侵略、民間人虐殺という野蛮な戦争犯罪に北方領土を巡り領土紛争を抱えている日本はどうすればいいのか?これという答えはありません。そして、今まで通りに安穏と過ごしていて大丈夫という保証もまたありません。私たちもまた、小四郎のように世界の理不尽、残酷さ、無理解、強者の横暴に立ち向かわねばならないのです。誰も答えを持たない中で手探りで、そしてそれは小四郎が泰時に未来を託したように、これから生まれてくる未来の子供たちのためでもあります。鎌倉殿の13人を視聴していて、時に胸を抉られるような感情になったのは、小四郎の物語は21世紀の日本を生きる私たちの物語でもあるからなのでしょう。
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