広告

マザコン光源氏を文学の主人公にする源氏物語作者の凄すぎる執筆スキル

2023年1月14日


 

和歌を楽しむ小野小町

 

 

世界最古の長編小説「源氏物語」その主人公は美貌のプレイボーイ光源氏です。しかし、この光源氏、冷静に観察してみるとクズもクズの最低男。どうしてこんなクズ男の恋愛遍歴が21世紀まで読み継がれるのか不思議なほどです。しかし、そこには光源氏を引き立たせ悲劇の主人公にする、著者紫式部の説得力溢れる文章構成がありました。

 

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


【誤植・誤字脱字の報告】 バナー 誤字脱字 報告 330 x 100



【レポート・論文で引用する場合の留意事項】 はじめての三国志レポート引用について



源氏の永遠の恋人 藤壺

朝廷(天皇)

 

 

光源氏は時の天皇、桐壺帝とその寵妃、桐壺更衣の間に誕生します。しかし、桐壺更衣は源氏が3歳の時に若くして病死。最愛の妃を失った帝は塞ぎこみますが、その時、亡き桐壺更衣にそっくりな藤壺の噂が帝の耳に届きます。ここで藤壺がホイホイと宮中に上がるならば、ご都合主義で源氏物語は凡作になったでしょう。しかし、ここが紫式部の上手な所で、藤壺の周囲の人々に宮中は権力闘争が激しく、愛憎が渦巻く場所だから行かない方がいいと言わせているのです。

 

西遊記巻物 書物_書類

 

 

一番熱心な反対者は藤壺の母で、藤壺も「いかない」と決意を固めていましたが、この母が矢先に病死してしまいます。身寄りを失ってしまった藤壺はまだ14歳、今後、自分がどうなるか分からず気持ちが揺れ動いている所に、桐壺帝の熱心な恋文が届くのです。

 

関連記事:恩賜の御衣ってなに?三国志や源氏物語にも出てくるエピソードを紹介

 

 

生母の死でよろめく藤壺

 

 

生母との関係が切れて、心細く気持ちがフラフラしている時に、熱心なラブコールが届く、このせいで藤壺は(帝の妃になれば生活も保障されるし、愛してくれてもいるのだから)と入内を決意します。女性の皆さんは、元彼とひどい別れ方をした後、声をかけてくれた男性に、なんとなく心を惹かれ付き合ってしまった経験がある方も多いでしょう。紫式部はそんな女心を心得ていて、絵空事になりがちな話の内容にリアリティを与えたのです。

 

 

義理の母を寝取る光源氏もリアル描写

京都御所

 

入内した藤壺は14歳、光源氏は9歳でした。後に光源氏は義理の母である藤壺に激しい恋心を持ち、親子の一線を越えて関係し藤壺は光源氏の子を孕みます。 しかし、この事実は伏せられ、生まれた子供は後に冷泉帝として即位。源氏は准太上天皇の称号を贈られます。

 

斉明天皇(女性)

 

 

これだけ見ると、光源氏や藤壺のインモラルさが強調され、感情移入できなくなりますが、源氏物語では、これも巧妙に脚色されます。3歳の時に母を失った光源氏は母の面影を知らず、藤壺にも特に懐いていなかったのですが、桐壺帝が源氏に藤壺は亡き母と瓜二つである事を何度も言い聞かせ、そのうちに源氏も藤壺を実の母と重ねて見るようになり、次第に懐いていく設定になっています。

 

おんな城主 直虎

 

 

藤壺と光源氏は容貌が美しく、宮中でも評判になり、次第に2人で居る事が自然になっていきます。一方で源氏は少年から大人になっていき、藤壺への思慕が狂おしいほどの恋愛感情に変化していき、妻の葵の上を迎えても心ここにあらずで、いつまでも藤壺を思い続けます。そして藤壺が出家し源氏との関係を拒絶した後も、藤壺の面影を持つ女性を次々と好きになる浮気男へと変貌していくのです。

 

 

因果応報論で光源氏を悲劇補正

オンライン授業の講師を務めるkawauso編集長

 

 

光源氏は最低男ではありますが、その切っ掛けは源氏が造ったのではなく、外ならぬ父、桐壺帝が造ったのです。またプレイボーイの源氏はやりたい放題で話が終わるのかといえばそうではなく、二番目の妻である女三宮が、一方的に彼女に思いを寄せる柏木との強引な逢瀬の結果、不義の子である薫を産む因果応報も経験します。こんなわけで源氏は最低男ではありますが、そんな彼もまた犠牲者だよねという物語上の補正がなされているのです。

 

▼こちらもどうぞ!

日本が戦後の焼野原から 一気に経済大国にのし上がった隠れた理由は?前編

 

 

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
kawauso

kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

-外部配信