三国志や曹操を分かりやすく紹介|はじめての三国志

menu

デザイン担当:よりぶりん

現代ビジネスマンの必携の書?兵法書『孫子』とその作者について

孫子の兵法 曹操
この記事の所要時間: 431




三国正史 劉禅

 

兵法書(へいほうしょ)とは、戦争の場における軍隊の戦い方を論じた書物のことです。

中国には、『武経七書:(ぶけいしちしょ)と呼ばれる有名な7つの兵法書の古典が存在しました。

 

・『孫子』(そんし)

・『呉子』(ごし)

・『六韜』(りくとう)

・『三略』(さんりゃく)

・『尉繚子』(うつりょうし)

・『司馬法』(しばほう)

・『李衛公問対』(りえいこうもんたい)

 

その中でも古今東西にその名を知られているのが『孫子』です。

中国のみならず、広く世界で評価される兵法書であり、現代のビジネスマンにとってもビジネスの心得を学べる名著とされています。

また、武田信玄の軍旗で有名な「風林火山」の出典としても知られていますね。

 

兵法書『孫子』とは、どんな書物だったのでしょうか?

また、どんな人物が『孫子』を書いたのでしょうか?




戦争の指南書なのに、内容は反戦的?

a76b0e8fecc83ff69cd37bf121a18df7_m

 

孫子は、戦争は国家の非常事態であると捉え、いたずらに軍を動かし戦争を行うべきではないという視点が貫かれています。

それは同書の中にある有名な

 

「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」

(百回戦って百回勝つのが最良とはいえない。もっとも良いのは戦わないで敵国を破ることである)

 

という一文にも現れています。

 

孫子が現代にあっても名著として評価されているのは、単に戦時における兵の用い方を論じたものではなく、

あくまで国家を運営する視点から戦争を論じる点が、現代にも通じる普遍的な価値となっているからと言えるでしょう。




『孫子』を書いたのは誰?

孫武 ゆるキャラ

 

『孫子』がいつ頃書かれた書物であるかについては、近年に至るまで2つの説が存在していました。

ひとつは紀元前500年頃(春秋時代)、当時の新興国であった呉(三国志に登場する呉とは別の国です)に仕えた人物、孫武(そんぶ)が記したという説、

もうひとつは孫武の時代から約100年後の戦国時代に斉という国に仕えたとされる孫臏(そんぴん)です。

(孫臏は孫武の子孫とされています)

 

長い間、『孫子』の作者は孫臏であるというのが有力な説とされていました。

しかし1972年になって山東省にある前漢時代の墳墓から『孫子』の書かれた竹簡が発見されたことがその説を覆しました。

 

現在では孫武が孫子の原型となる書を書き、後継者によって徐々に内容が付加され、

それをある人物が整理・注釈をつけることで現代目にすることのできる『孫子』が成立したと考えられています。

 

 

 

女性部隊を訓練した孫武

三国志 ヒカリ

 

孫武は紀元前500年頃、呉の王であった闔閭(こうりょ)に仕えた人物とされています。

孫武については司馬遷(しばせん)の記した歴史書『史記』(しき)などにその記述を見ることができますが、孫武が生きた時代である春秋時代の歴史をまとめた『春秋左氏伝』(しゅんじゅうさしでん)にはまったく記されていないことから、長い間実在の人物であることが疑われてきました。

しかし、前述した山東省での発見などから、現在ではほぼ実在の人物と考えられています。

 

『史記』に書かれている孫武の有名なエピソードに、こんな話があります。

 

孫武の著作を読んだ呉王闔閭は、ふざけてこんなことを言いました。

 

「先生の書物はすべて読んだが、宮中にいる女たちで軍の指揮を実演してくれないか?」

 

孫武は了承すると、王の後宮に仕える美女180人を宮殿の庭に呼び出し、二つの部隊に分けて並ばせました。

 

 

美女180人の軍の指揮を実演した孫武

3ce3b3e43694ce615ef3cdb0e63f1aa7_m

 

孫武は女たちに太鼓の合図で動くよう命じ、「右向け!!」と言って太鼓をドンと鳴らしました。

しかし、女たちはそんな孫武を見てどっと笑い声をあげます。

 

孫武は王に「命令が伝わらなかったのは将である私の責任です」と謝罪。

再び女たちに命令すると今度は「左向け!!」と言って太鼓を叩きました。

しかし、女達はやはりマジメに命令を聞こうとはせず、笑い声をあげました。

 

 

命令を聞かない美女に孫武が取った驚くべき行動とは?

三国志 ろうそく 写真

 

孫武は「命令を徹底したにも関わらず兵士が命令を聞かないのは、各部隊の指揮官に責任があります」と言い、隊長役の二人の女を斬首しようとしました。

 

二人の寵姫を殺されそうになった闔閭はあわてて

「その女たちを殺されては飯も食えなくなるからやめてくれ」と孫武を制止します。

 

しかし孫武は「一度、将軍として軍の運用を命じられた以上、現場ではいかに君命であっても従いかねることもございます」

と言って制止をはねつけ、二人の首を切ってしまいました。

 

そうして新たに二人の指揮官を選び直した上で訓練を再開すると、

斬首を目の当たりにした女たちは殺されてはたまらないと、今度は孫武の命令をきっちり守り、誰一人声を出すこともなく見事に行動しました。

 

孫武は訓練の成果を見てもらいたいと闔閭に言いますが、二人の美女を殺されてはなはだ不機嫌になっていた彼は「そんなもの見たくない」と突っぱねます。

孫武は闔閭に「陛下は兵を論じるのはお好きでも、実践することはできないのですね」と痛烈な皮肉を言ったとされています。

 

 

 

学友に復讐した孫臏(そんぴん)

関羽 呪い 反骨心

 

孫武の時代のおよそ100年後、斉に仕えたとされるのが孫臏(そんぴん)です。

その“孫臏(そんぴん)”という名前、実は本名ではないとされています。

“臏”とは当時存在した足を切る刑罰の名前です。

孫臏には自分と同門の学友に騙され、足切りの刑を受けた過去がありました。

 

孫臏(そんぴん)は斉の人である鬼谷(きこく)という人物の教えを受け、同門に龐涓(ほうけん)という学友がいました。

龐涓(ほうけん)はその後、魏(三国志の魏とは別です)に仕えましたが、彼は同門であった孫臏の才能を恐れ、孫臏を魏に呼ぶと罠にかけて足を切る臏刑にしてしまいました。

 

その後、孫臏は魏にやってきた斉からの使者に救い出され、斉に仕えるようになります。

十数年の後、魏が斉の同盟国であった韓を攻めた際、斉王は救援部隊を差し向けます。

孫臏は軍師としてこの部隊に同行します。

 

相手の将軍が龐涓であることを知った孫臏は、自軍の部隊から脱走者が相次いでいるように偽装、わざと逃げて見せます。

一方で伏兵を用意した上で木の枝に「龐涓、この樹の下で死す」と記した板をぶら下げ、敵軍を待ち受けました。

 

斉の軍隊が臆病だと高をくくっていた龐涓はこれを追跡、夜遅くになって孫臏が用意した板のぶら下げられた木の前まで来ます。

彼が明かりを灯してそこに書かれた文面を読んだ瞬間、それを合図に周囲に潜んでいた斉の伏兵が一斉に矢を仕掛けました。

 

孫臏に陥れられたことを知った龐涓は「ついにヤツの名を成さしめてしまったか!!」と叫んで自害、斉は魏の軍勢を破ることに成功しました。

 

孫武と同じく、孫臏も『孫臏兵法』と呼ばれる兵法書を記しています。

兵法書『孫子』はこの孫臏の記した兵法書ではないかと言われていましたが、1972年に『孫子』の原型文と同時に、『孫臏兵法』も発見されています。

 

 

現在、読むことのできる『孫子』をまとめたのは、曹操だった。

孫子の兵法 曹操

 

当初31篇から成るとされた『孫子』はその後、孫武の後継者たちによって82篇にもなる大著となっていました。

これを整理し、13篇にまとめ直したものが現代でも読まれる『孫子』の原型となっています。

 

このバージョンの『孫子』を『魏武帝註孫子』(ぎぶていちゅうそんし)と呼びます。

 

ここで言う『魏武帝』とは、孫臏の時代の魏ではなく、三国時代の魏です。

その魏の武帝がまとめたのが『魏武帝註孫子』……つまり、このバージョンの『孫子』を編さんしたのは、あの曹操だったのです。

 

曹操が編さんした『孫子』が現代ビジネスマンにも読まれていると考えると、なんだか三国時代がとても身近に感じられませんか?

 

—熱き『キングダム』の原点がココに—

春秋戦国時代バナー

—あなたの知的好奇心を刺激する諸子百家—

諸子百家 バナー

 

関連記事:武経七書(ぶけいしちしょ)って何? 兵家を代表する七つの書物

関連記事:これぞ戦争の極意!!兵家の思想ってどんな思想?

関連記事:衝撃の事実!呂不韋は始皇帝の父だった?諸子百家のいいとこ取りの雑家

 

 

耳で聞いて覚える三国志




こちらの記事もよく読まれています

大喬 小喬 三国志当時のファッションとは!

 

よく読まれてる記事:三国時代のファッションはどんなのだったの?

 

 

孔明 軍師

 

 

よく読まれてる記事:軍師ってどんな職業なの? <三国志豆知識>

 

 

お酒 三国志 曹操

 

よく読まれてる記事:三国時代のお酒は発泡酒レベルだった?

 

この記事を書いた人:石川克世

石川

 

自己紹介:

三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。
最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。
三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、
兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。

 

関連記事

  1. 若かりし劉備 チャライ★ 若い頃の劉備はチャラすぎ!劉備略年譜
  2. 沖縄 関羽 時空を超える関羽、琉球の民話に登場
  3. 三国志タクティクスデルタ 引用 三国志タクティクスデルタとはどんなアプリゲーム?
  4. 袁術 スーパーエリート袁術!理由はファミリーにあり?スーパー名家を探る…
  5. 袁術 【無職の力恐るべし】漢帝国をぶち壊したのは清流派官僚とニートの袁…
  6. 越王句践 これなら誰でも騙される!越王句践の凄まじいゴマすりを紹介。
  7. photo credit: Romantic via photopin (license) 劉巴(りゅうは)とはどんな人?天下に名声を轟かせた名士であるが、…
  8. 天下三分の計 孔明だけじゃなかった!?呉にも天下三分の計を唱えた人物がいたって…

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. 董卓マジック
  2. 劉備 ゆるキャラ
  3. 関帝廟 関羽
  4. 兵士 朝まで三国志
  5. 龐統
  6. 孔明
  7. おんな城主03b 今川義元セリフあり
  8. 曹操軍
  9. 真田丸
  10. photo credit: The Heart of It via photopin (license)

おすすめ記事

  1. 子産(しさん)とはどんな人?超弱国を強国にした春秋時代の名宰相 管仲(衣食なして礼節を知る)
  2. 人々の鑑になった良い宦官達 宦官集合 
  3. 【出世の花道】三国志時代の人々はどのように出世した? 袁家ヒストリー02 袁安
  4. 82話:呉の提督、周瑜は荊州争奪戦に散る 周瑜逝く
  5. 【5分で読める】ビジネスマン必見!崩壊寸前の組織を建て直すなら司馬穰苴(しばじょうしょ)から学べ! photo credit: Portada Rolling Stone España via photopin (license)
  6. 7話:黄巾の乱は、どうして起こったのか? 黄巾賊についてわかりやすく解説 黄巾賊 滅ぼされる

三國志雑学

  1. 孔明 出師
  2. photo credit: coloured smoke via photopin (license)
  3. 劉姫
  4. 三国志 象兵
  5. 兀突骨

ピックアップ記事

  1. 劉備 結婚
  2. 劉備 呂布 裏切り
  3. 沙摩柯
  4. 蒙恬
  5. 信 キングダム
  6. 馬超フルボッコ02 関羽
  7. 曹操 五胡十六国
  8. 王昭儀

おすすめ記事

黄忠 厳顔 張郃 103話:黄忠・厳顔の老将コンビ大活躍|年寄りをなめるな! photo credit:  via photopin (license) 夏侯嬰(かこうえい)ってどんな人?劉邦を挙兵時代から支えた夏候惇の先祖 曹操を逃す関羽 80話:曹操の命乞いで関羽が曹操を逃がす 西遊記 えっ?三蔵法師にも、猪八戒にも沙悟浄にも前世があった!? 函谷関 キングダムでお馴染みの秦の函谷関ってホントに難攻不落だった?函谷関に隠された秘密 氐族 冒頓単于(ぼくとつぜんう)とはどんな人?漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.1 photo credit: Orchids in the Mist via photopin (license) 孔明にパクリ容疑!?天下三分の計を最初に考えた蒯徹(かいつう) photo credit: Magic Forest via photopin (license) 【はじめての孫子】第5回:戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり

おすすめ記事

  1. 【架空戦記】帝政ローマ軍と三国志軍が戦ったらどっちが勝つの?軍隊の編成や武器なども徹底解説 Centuria hoka
  2. 【キングダム ネタバレ注意】秦・中華統一後、王賁(おうほん)は今後どうなる? 王賁
  3. 【魏の五虎将】俺たちだって五虎将だ!張遼編 張遼・楽進・李典
  4. 中国四大美女のひとり貂蝉 貂蝉
  5. キングダムの史上最悪の宦官、趙高(ちょうこう)はどうやって浮き上がる? 宦官
  6. いつまでやるの?またまた『赤兎馬=カバ説』を検証してみる。第2弾【HMR】 石川克世
  7. 曹操の妻はどんな人達だったの?13人を紹介 Part4 趙姫
  8. 伍子胥(ごししょ)とはどんな人?復讐の鬼となり、楚を滅亡寸前まで追い詰めた呉の名将【誓い編】 photo credit: Echinopsis Pollen via photopin (license)

はじさん企画

袁術祭り
特別企画
異民族
諸子百家
春秋戦国時代
日常生活
はじめての三国志TV
PAGE TOP