晋の文公と言われることになった重耳(ちょうじ)。
彼は春秋の五覇のうちの一人に数えられる名君として歴史に名を残すことになるのですが、
生まれ故郷である晋の国から逃げ出して、長い年月各国を旅して回りながら晋へ帰国して
君主の座に着くことになります。
だが彼が晋の国へ帰る事ができたのは国を出てから19年後のことになります。
彼はなんで晋の公子でありながら国から逃げなければならなくなったのでしょうか。
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国が乱れた原因はある討伐戦にあった
重耳のパパは晋の献公(けんこう)と言われる人物です。
彼は晋の国の君主の座につくと晋に逆らい続けていた異民族を討伐するべく
軍事行動を行います。
この戦いは晋の圧倒的勝利で幕を閉じることになるのですが、
この戦いで献公は異民族の王の娘二人を捕虜にして帰国。
このふたりの娘は可愛い女の子でした。
彼は帰国後この可愛い女の子二人を側室に向かい入れて昼も夜も愛し続けていたそうです。
その中でも献公が特に可愛がっていたのは姉の驪姫(りき)と呼ばれる事になる女の子です。
献公が愛した驪姫が男の子を出産
驪姫は献公に愛されたことがきっかけで男の子を出産します。
献公はこの男の子が可愛くて仕方がなく、晋の次世代の当主にしたいと考え始めます。
だが当時の献公には三人の子供がおりました。
長男である申生(しんせい)。二男の重耳。三男の夷吾(いご)がおり、
次世代の君主として晋を導いていくのは長男の申生と決まっておりました。
しかし献公はなんとか理由をつけて三人の息子たちを遠くへ追いやりたいと考えはじめ、
ピカーンとある考えがひらめきます。
献公が考えた理由とは「曲沃(きょくよく)は晋の大事な土地だ。
また国境の蒲邑(ほゆう)と屈邑(くつゆう)は国の大事な場所である。
この三つの都市は家臣に任せるのではなく、血縁である息子たちに任せたいと思っている」と
大臣達へ伝えます。
この意見に反対意見がなかったため、長男・申生は曲沃へ、三男・夷吾(いご)は屈原へ
次男の重耳は蒲邑へ向かうように命令されます。
こうして晋の首都には驪姫が生んだ子供しか残らないようになります。
この驪姫が生んだ献公の子供の名前は奚斉(せいけい)と名付けられます。
驪姫の罠にはまる太子・申生
申生はその後父から小国を討伐するように命令を受け難なくこなします。
そのため献公は彼を太子の座から引きずり下ろして可愛い奚斉を晋の太子として据えることが
できませんでした。
しかし驪姫は献公よりも悪謀に秀でており、
ある日申生に「あなたのお母様のお墓参りに行ってきて欲しいと献公様から言伝されました。
その際に献公様へお土産として食べ物を買ってきてはいかがでしょうか。」と伝えます。
申生は驪姫の言うとおり自分の母親のお墓参りを行ってから、
献公へお土産として食べ物を買って帰ります。
献公は申生が買ってきた食べ物を食べようとしますが、
驪姫が「買ってきてからだいぶ時間が経っているから
毒見させたほうがいいのではないのですか。」と伝えます。
彼は驪姫の進言に従って申生が買ってた食べ物を犬に与えると犬は泡を吐いて
死んでしまいます。
そして宦官にも与えますが、この宦官もすぐに亡くなってしまいます。
この毒見の結果を見た献公は激怒。
申生は曲沃へ逃亡しますが、城内で彼は毒を飲んで自殺してしまいます。
こうして申生は驪姫にハメられてなくなってしまうのです。
重耳国外に逃亡
重耳と夷吾はちょうど申生が亡くなった時に献公のもとへ挨拶をするべく首都へ来ておりました。
この時驪姫はこの二公子も一緒に抹殺してしまおうと考え献公へ
「献公様あの公子たちも申生の事件に関与しているそうです」と述べます。
このことを知った献公は激怒して二人を逮捕しようと追っ手を差し向けますが、
ふたりは申生の事件を耳にして各々の領地へ逃亡。
重耳は領地へ帰るとすぐに防備を固めて父の軍勢が来るのを待ち受けますが、
監視役として献公から送られてきていた宦官に「自殺しなさい」と迫られます。
重耳はこのままでは戦う前に殺害されてしまうと感じ、すぐに領土からも逃亡することを決意。
そして宦官の目が離れた隙を狙った逃亡します。
春秋戦国ライター黒田廉の独り言
重耳は驪姫を寵愛した父親である献公から命を狙われてしまったことが
原因で晋を出て逃亡することになってしまうのです。
彼にこの時付き従ったのは数名の家臣だけでした。
しかしこの家臣達がいたおかげで重耳は晋へ帰り着くことができるのです。
また三男の夷吾も国外へ逃亡しており、
晋の国は献公が可愛がっていた奚斉が国を継ぐことになるのです。
参考文献 史記 司馬遷 訳市川宏・杉本達夫
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