三国志は陳寿が綴ったけど、現代日本の歴史教科書は誰が綴っているの?

2017年4月10日


 

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三国志演義のベースになった正史三国志は陳寿(ちんじゅ)によって執筆されました。

陳寿が最初に在籍した蜀漢には、珍しく歴史書を書くセクションが無かったので、

三国志は当初、個人執筆でしたが、出来が良い事から評判を受ける事になり

裴松之(はいしょうし)の増補を受けて、唐の太宗の時代に正史認定されます。

正史とは内容が正しいという事ではなく、国が認めた正統な歴史書という意味です。

では、現代日本の歴史教科書は誰が綴っているのでしょうか?

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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日本の歴史教科書には検定制度がある

 

戦前の日本においては、歴史教科書はかつて国定教科書とされていて、

国の命令で作成されて種類も一種類しかありませんでした。

 

しかし、それでは著しく公平性を欠きますし、時の政府に都合の良い歴史観を

生徒に植え付ける事になるので、戦後は国定教科書を廃止、民間の出版社数社に

歴史教科書を作成させています。

 

その後、執筆した教科書について、出版社で10回以上の編集会議が行われ、

教科書としての使いやすさや分かりやすさ、そして「教科用図書検定規則」と

「学習指導要領」に反しないかを慎重に検討し申請を出します。

 

申請を受けた文科省では、審議員数百名から組織される

「教科用図書検定調査審議会」が審査に当たり教科書の内容を調べて、

問題がある個所の修正を求めるなどして出版社とのやり取りを繰り返し

最終的に合格をもらった教科書だけが学校教科書として使用されるという

仕組みになっています。

 

歴史教科書は、ほぼ5年に一度改定されていますが、

新しい歴史教科書の作成には申請を含めて5年かかるので、

出版社は新しい教科書を出版した翌年には

再び次の改定後の歴史教科書の作成に入ります。

 

日本の歴史教科書は誰が書いているの?

 

日本の歴史教科書の執筆者については、文部科学省の平成29年度使用の

中学校教科書目録によると以下の人の名前があります。

 

坂上康俊  九州大学教授     日本古代史

深谷克己  早稲田大学名誉教授  日本近世史

三谷博   東京大学名誉教授   日本近代史

黒田日出男 東京大学名誉教授   日本中世史

藤井譲治  京都大学名誉教授   日本近世史

杉原誠四郎 評論家・歴史家    日本外交史

伊藤隆   東京大学名誉教授   日本近現代政治史

安井俊夫  愛知大学経済学部教授 社会科教育法

 

読んでもらえば分かる通り、いずれも大学教授や歴史家、評論家等で

自身でも何冊も歴史の本を出している著名人が含まれます。

もっとも、この人達が単独で教科書を書いているのではなく、

これらの人を筆頭に何十人という歴史の専門家が一冊の教科書を

仕上げているのです。

 

検定合格した歴史教科書にはどんなのがあるの?

 

日本の教育制度における歴史教育は、小学校六年生の1年間で日本史全体を習い、

中学校では、社会科の括りで、地理、公民、歴史の3つが必修です。

高校では、日本史と世界史を教えますが、世界史は必修なのに日本史は選択制で

そのせいで世界史は分るけど日本史は知らないという人が多いです。

 

こんな理由から、日本史を集中して習うのは、中学校の時代なので、

この時期の日本史の教科書は割合充実しているという事になります。

 

どのような歴史教科書が出ているのか?というと以下の通りです。

 

東京書籍   新編 新しい社会 歴史

教育出版   中学社会歴史 未来を開く

清水書院   中学歴史 日本の歴史と世界

帝国書院   社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き

日本文教出版 中学社会 歴史的分野

自由社    新版 新しい歴史教科書

育鵬社    [新編] 新しい日本の歴史

学び舎   ともに学ぶ人間の歴史

 

これらの歴史教科書のシェアでいくと、筆頭の東京書籍が69万1223冊で

58・6%を得て、ダントツの1位、2位は教育出版、14万9561冊で

12・7%、3位が日本文教出版で、13万2852冊で11・3%です。

 

ここだけの話、歴史教科書って儲かるの?

 

義務教育の教科書は無料配布ですが、それは生徒に負担がないというだけで、

実際には、政府が自治体で採択された分だけ、各出版社から教科書を買い取ります。

それには国民の税金が使われているので無償ではないわけです。

 

さて、歴史教科書の出版社は儲かるのか?という話ですが、ぶっちゃけ儲かります。

何故なら、幾ら売れるか分からない市販と違い、教科書なら生徒が使う使わない

関係無く生徒の数だけ確実に売れるからです。

上述の東京書籍なら在庫を抱える必要なく、69万1223冊が全て売れます。

しかも買い上げるのは親方日の丸ですから、絶対に倒産しません。

売れ残りのリスクを背負う必要なく刷った分が売れるのですから、

出版社としては、教科書はかなり良い商売の部類に入ると言えるでしょうね。

 

三国志ライターkawausoの独り言

 

以上、現代日本の歴史教科書について調べてみました。

日本の歴史教科書は、様々な出版社が、錚々たる歴史の権威に依頼して、

5年かけて作成し、最期は文科省の検定に合格して、はじめて教科書になる

という事が分っていただければ幸いです。

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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