ログイン | 無料ユーザー登録


夜のひとときながら三国志
歯痛の中国史


はじめての三国志

menu

西郷どん

西郷どんの恩返し奄美大島貿易拠点構想


はじめての三国志コメント機能バナー115-11_bnr1枠なし

西郷隆盛像

NHK大河ドラマ、西郷(せご)どん、現在舞台は奄美大島(あまみおおしま)に移行しています。

ここでの3年間は、西郷隆盛(さいごうたかもり)の生涯に大きな影響を与えるのですが、

奄美大島から薩摩に帰った後、西郷どんが奄美大島を貿易拠点として、

発展させようという構想があった事はあまり知られていません。

 

今回は、貧しい奄美大島の人々を経済的に豊かにしたいと願ったかも知れない

幻の西郷どんの貿易構想を紹介します。

 

西郷どん:全記事一覧はこちら

関連記事:流刑生活は意外に快適?奄美大島を満喫西郷どんを巡る旅

関連記事:愛加那(あいかな)とはどんな人?西郷どんの島妻と西郷隆盛の人生を変えた女房


西郷どんは経済に疎いとは大きな誤解

実は経済に強い西郷どん

 

社会一般には、西郷隆盛は道義と仁愛の人であり経済には(うと)い人という

イメージが大半ではないかと思います。

研究者の中にも、西郷は農本主義者で資本主義を理解していないとか

商人を毛嫌いしているとか、そんな主張をしている人がいます。

 

しかし、それは、大きな誤解というものです。

それというのも、西郷どんはそのキャリアの最初を郡方書役助(こおりかたかきやくじょ)という

道路や堤防を修理したり、新しく造るという仕事から始めます。

もちろん、それには見積書を出す必要があり算盤(そろばん)の技量も必要でした。

そろばん

 

西郷どんの息子の西郷午次郎(さいごううまじろう)の回想では、西郷どんは、

算盤に巧みで14歳から15歳頃には大変な評判だったと言うのです。

計算に巧みな人が経済に疎いという事があるとは考えにくいでしょう。


商人が大嫌いというのは事実ではない

島津久光と西郷隆盛

 

また、西郷どんが、大蔵卿の井上馨(いのうえかおる)五代友厚(ごだいともあつ)市来四郎(いちきしろう)のような

経済に精通した人々を毛嫌いしていたという逸話から、

西郷は経済に理解がなく商人を嫌ったのだとする話もあります。

嫌儲け主義

 

しかし、西郷隆盛が嫌ったのは無節操な儲け主義でした。

井上馨を「三井の番頭どん」と蔑んだのは、その癒着(ゆちゃく)を嫌ったのです。

つまり暴利をむさぼり、政官で結託するような汚職役人が嫌いだっただけであり

商人、ないし商取引そのものを理解しなかったわけではないのです。

 

愛と勇気で時代を切り開いた西郷どんを100倍楽しむ
西郷どん

 

西郷どんが私淑した島津斉彬は稀代の経済家

島津斉彬

 

そもそも、農本主義で金儲けが嫌いで農業だけでやっていくべきと

西郷どんが考えていたなら、

どうして島津斉彬(しまづなりあきら)に登用されたのかという疑問があります。

もし、西郷隆盛がゴリゴリの農本主義者なら

日本は開国して商業を盛んにするという斉彬の考えとは、

正反対になってしまう筈です。

西郷隆盛

 

西郷どんは斉彬の命令だからで、唯々諾々(いいだくだく)と従うような人ではなく

苛烈な反論を試みたりして、斉彬に(たしな)められています。

それは、島津久光(しまづひさみつ)の上洛計画に対して意見を求められ、遠慮なく

「ジゴロウ(田舎者)に何が出来るものか」と発言して、

久光の心証を悪くした点からも分かる事です。

斉彬の集成館事業

 

斉彬は集成館事業を通して製造した大砲や鉄砲を日本各地の大名や

太平天国の乱の最中の清に売りさばこうとする構想もあり、

儲けるという事に躊躇(ちゅうちょ)がない人ですから、

その斉彬に認められたという事は西郷どんに経済への理解があったか

素質があったと考えるべきではないでしょうか?


おいは商売をやりたい!大久保への手紙

大久保利通に手紙を送る西郷隆盛

 

西郷どんが商売を嫌っていなかった、

その証拠は盟友の大久保利通(おおくぼとしみち)への書簡にも現れています。

1864年9月16日、大久保への手紙で西郷隆盛は、

もう少し暇が出来たらと前置きした上で

 

私面(しづら)を突き出し、商法をやりたきものと相考え申し候」と書き

人任せではなく自分が前面に立ってビジネスをやりたいとの希望を述べます。

それも、「のるか反るかの大商売をやりたい」と書いているのです。

 

どうやら、奄美大島、徳之島、沖永良部(おきのえらぶ)への足掛け5年の歳月を西郷どんは、

漫然と過ごしていたわけではなく、これらの島々の特産である黒砂糖の

販売の仕組みなどを実際に見る事により、俺ならこうやるという

ビジネス構想がむくむくと湧いてきたようなのです。

 

この書簡を見る限り、西郷どんは農本主義者どころか、

積極的に商売をやりたいという商人そのものに見えます。


  

 

長崎と横浜を開港し、雄藩の大名と自由貿易を構想

雄藩の大名と自由貿易を構想

 

では、西郷隆盛のビジネスプランとは、どんなものでしょうか?

それは、大久保への手紙によると雄藩の大名で協力して、

長崎と横浜の二港を開いて海外と貿易をするのがベスト、

その許可が得られないなら、仕方がないので雄藩それぞれで、

自藩の港を開いて銘々で富国強兵策を取るしかないとしています。

 

そして具体的な富国強兵の方策としては、

 

「蒸気船を使用して、砂糖や中国漢方薬・煙草・鰹節(かつおぶし)様の物産を

海外で売りさばき、初年度は儲けはあまり考えずに信用を得て、

その資金で銅(大砲や銃弾の原料)または生糸(きいと)等の品を輸入しては

いかがでしょうか?」としています。

闇討ち

 

1864年と言えば、攘夷(じょうい)の嵐が吹き荒れた時期で積極的に海外と

貿易するなど内心では思っても、とても口には出来ませんでした。

しかし、西郷どんがそのように考えていたという事は、

商売嫌いの経済音痴という西郷隆盛のイメージを覆すには、

十分な証拠ではないでしょうか?

 

暴利を貪ってはいけない、西郷どんの経済倫理

号泣する西郷隆盛

 

西郷どんが蒸気船で商いたいとする砂糖や漢方薬、煙草、鰹節は、

奄美大島や琉球、鹿児島の物産です。

それらを世界相手に手広く扱い、富国強兵を実現して

倒幕資金を得るのが西郷隆盛の構想でした。

 

しかし、同時に西郷の構想の中の初年度は儲けはあまり考えない

という所にも注目すべきです。

これは、対外的にも暴利を得るべからずだけでなく、

国内的にも過酷な搾取(さくしゅ)をしないという事にも繋がります。

 

それは、西郷どんが奄美大島で目撃した砂糖地獄、

あまりにも酷い搾取についての戒めだと言えるでしょう。

西郷は琉球、奄美、鹿児島を貿易の拠点にする事で、

そこに暮らしている貧しい人々にも貿易の恩恵が落ちて豊かになる

この事を考えて、初年度は儲けは余り考えないという

一文を入れたのではないでしょうか?

 

奄美大島の人々を豊かにしたい西郷どんの恩返し

西郷どんの恩返し

 

薩摩藩のあまりにも酷い搾取(さくしゅ)に憤りを隠さなかった西郷どんですが

それだけでは現実は何も変化しません。

島で大量に取れる砂糖を島人がなめるだけで処罰される理不尽

それを無くして貿易の恩恵が奄美の人々にも行きわたるように、

自分が貿易を主導して島の人々を経済的に豊かにする。

 

「そいが、おいを受け入れてくれた島人への恩返しじゃっど」

西郷どんは、そのように考え、沖永良部から鹿児島に帰還した当初から

のるか反るかの貿易構想を考えたのではないかと思うのです。

kawauso

 

「そんな弱者に都合がよい立派な人間などいるか?

西郷の頭には、ただ富国強兵だけがあり奄美大島や沖永良部の人々への

思いなどは、多忙の中で遠くに追いやられたのではないか?」

 

そうかも知れません、しかし、このような積極的な貿易構想が、

沖永良部から帰還して、10か月の間にたて続けに出されている点に西郷どんの

「なんとか島の人々を豊かにしてやりたい」という焦りにも似た感情を

掬い取るのは、そこまで無理な事ではないと思います。

 

西郷は、一度こうと思い込むと呆れる程に信じやすい一面もあり、

紀州出身で明治政府に先んじて、廃藩置県と軍制改革を断行した津田出(つだいづる)

政府の首相に担ごうと熱心に運動するも、大勢の反対を受けて失敗、

弟の西郷従道(さいごうつぐみち)を津田に遣わして謝罪した逸話があります。

(画像:津田出Wikipedia)

 

明治に入ってでさえそうなのですから、幕末の頃の西郷どんが、

理念に先走り、何とか島の人々の貧しさを救おうと必死に考えたのは

有り得た事ではないでしょうか?

 

その人間的な魅力が重宝され経済から遠ざかる西郷どん

遠ざかる西郷どん

 

しかし、その後、西郷どんが経済に関わる事はありませんでした。

当時の薩摩藩が西郷に求めたのは、巨大な人間的魅力で藩論を統一し

倒幕へと引っ張っていくエネルギーの牽引者(けんいんしゃ)の役割だったからです。

 

明治維新後の西郷どんは、陸軍大将、参議として大勢の部下を抱え、

なおの事、商売に自ら乗り出すには難しくなり、ボスとして、

現場に必要な援助とアドバイスを行う存在になります。

演説する人

 

西郷について、経済音痴だという評価を下している伊藤博文(いとうひろぶみ)や、

大隈重信(おおくましげのぶ)は官軍の総大将としての西郷しか見ていません。

それ以前に海外貿易に意欲を示し、細々とした計算にも長けた

経済官僚としての西郷隆盛も、もちろん知らないのです。

 

確かに実際に西郷どんが貿易に関わり、五代友厚や市来四郎のような

業績を上げたかどうかは分かりません。

ですが、西郷隆盛が資本主義に理解がない、経済に疎い朴念仁(ぼくねんじん)だったとは

必ずしも言えないという事は十分証明できると思います。

 

幕末ライターkawausoの独り言

幕末ライターkawausoの独り言

 

本当は経済に暗くなかった西郷どんについて解説しました。

大河ドラマでは、ここまで突っ込んで描く事はないでしょうが、

西郷どんが、貿易を通じて奄美大島の人々の暮らしを豊かにし、

貧しさを抜け出させようと考えていたかも知れない

その事を想像すると、ドラマがより楽しく見れるのではないでしょうか?

 

西郷どん:全記事一覧はこちら

関連記事:【西郷どん】奄美大島に流された西郷隆盛は本当に荒れていたの?

関連記事:西郷隆盛は大家族!幕末ビッグダディを解説

 

【あなたの知らない新選組の姿がここにある!】
新選組


 

kawauso

kawauso

投稿者の記事一覧

三度の飯の次位に歴史が大好き

10歳の頃に横山光輝「三国志」を読んで衝撃を受け
まずは中国歴史オタクになる。
以来、日本史、世界史、中東、欧州など
世界中の歴史に興味を持ち、
時代の幅も紀元前から20世紀までと広い。
最近は故郷沖縄の歴史に中毒中、、

好きな歴史人物:

西郷隆盛、勝海舟、劉邦、韓信、、etc

何か一言:

歴史は現在進行形、常に最新のジャンルです。

関連記事

  1. 坂本龍馬(幕末時代) 松平春嶽がいなければ坂本竜馬が歴史に名を残すことはなかった!?
  2. 【西郷どん】奄美大島に流された西郷隆盛は本当に荒れていたの?
  3. 江川英龍とは?パンから銑鉄まで幕末のマルチ技術者を紹介
  4. 江戸城オフィスを大公開!大名の争いは部屋取りゲーム?
  5. 薩長同盟が結ばれるシーン 坂本龍馬と西郷隆盛と桂小五郎 廃藩置県とは?中央集権国家を目指した改革を分かりやすく解説
  6. 佐久間象山、幕末の天才奇人はどうして暗殺された?
  7. 江藤新平 幕末 江藤新平と佐賀の乱について語り佐賀を観光しよう!
  8. 幕末 帝国議会 江藤新平と大久保利通、明治時代の権力闘争

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

  1. バナー はじめての三国志コミュニティ300×250
  2. 公孫サン(公孫瓚)
  3. キングダム
  4. 孔子
  5. キングダム53巻
  6. 程昱(ていいく)
  7. kawauso
  8. 劉備 髀肉の嘆 ゆるキャラ
  9. 蒋琬(しょうえん)
  10. 祁山、街亭

おすすめ記事

  1. 【三国天武 攻略その1】全世界3000万人がプレイしている三国志の世界へ「内政編」
  2. 明智光秀の年齢は信長より若かった! 明智光秀 麒麟がくる
  3. 兵法三十六計(借屍還魂)の古今東西
  4. 【曹魏クロニクル】220年~239年までの魏の歴史を紹介 曹丕と曹植
  5. 【官渡決戦間近】曹操軍の陣中で慎重論と積極論を進言をしていた代表者達 荀彧
  6. 朝まで三国志 三国志最強のワルは誰だ(笑) 第10部

三國志雑学

  1. 曹植を暗殺しようとした曹丕を止める卞皇后
  2. 甘寧と凌統
  3. 孫権の娘が大喧嘩 孫魯班、孫魯育
  4. 張コウ 張郃


“ながら三国志音声コンテンツ開始" “読者の声" “はじめての三国志Youtubeチャンネル" “誤字・脱字・誤植などの報告フォーム" “はじめての三国志コメント機能"
“はじめての三国志企画特集"

はじめての三国志 書籍情報

朝まで三国志 三国志最強のワルは誰だ (桃園出版 三国舎)

著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

  1. 郭汜
  2. 嫉妬している明智光秀
  3. 劉備と孫権
  4. 江戸城
  5. 親バカな諸葛孔明
  6. 馬で高速移動する王翦
“ぐっすり眠ってならが三国志"

おすすめ記事

キングダム52巻 キングダム582話ネタバレ予想vol2玉鳳隊と飛信隊の関係は史実? 高漸離(こうぜんり)が始皇帝に復讐を行う、荊軻の親友の始皇帝暗殺計画 後継者争いで喧嘩する曹丕と曹植 兄弟はやっぱり家族?それとも他人?『三国志』兄弟列伝 顔良と文醜 顔良と文醜は三国志の中でも可哀想な武将だった!その理由とは? キングダム キングダム585話ネタバレ予想外伝信の生まれ育った村はどんな感じ? 劉備の黒歴史 劉備は黄巾の乱の時に何をしていたの?どうやって軍資金を調達したの? 諸葛一族 蜀は龍を。呉は虎を。魏は狗をで知られる諸葛誕の一族が一番優秀だった!? 【はじ三グッズ】可愛い馬超の手帳型スマホケース(iPhone/Android対応)発売中

はじさん企画

“if三国志" 英雄の死因 “三国志とお金" “はじめての漢王朝" “はじめての列子" “はじめての諸子百家" “はじめての三国志企画特集" “つながるはじめての三国志" “龍の少年" “読者の声" 袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
“歯痛の歴史"
“三国志読み放題サービス"
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論
ビジネス三国志
ながら三国志音声コンテンツ
春秋戦国時代
日常生活
架空戦記
北伐
呂布vs項羽
英雄の武器 編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志" 英雄の墓特集 誤字・脱字・誤植などの報告フォーム はじめての三国志コメント機能
“西遊記"

“三国志人物事典"

“つながるはじめての三国志

“はじめての三国志Youtubeチャンネル"

“ながら三国志音声コンテンツver3"
PAGE TOP