キングダム「十円玉と秦の半両銭には共通点がある」

2019年10月9日


 

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呂不韋

 

大人気春秋戦国時代漫画キングダム、今回はキングダムの雑学について書きます。

戦国七雄で最強の国である秦の貨幣は半両銭(はんりょうせん)で、呂不韋(りょふい)も金の力で七国を結び付けて戦乱を無くそうと考えていた事は、

キングダム読者にはお馴染みです。

ところで、この半両銭と日本の十円玉は不思議な事に主成分が銅で出来ているのはご存知ですか?

今回は、十円玉と半両銭の共通点について考えます。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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どうして半両銭は青銅なのか?

 

 

では、第一にどうして半両銭は銅で出来ているのでしょうか?実は半両銭の材質は、銅80%、錫20%で青銅(せいどう)です。

因みに、十円玉の材質は銅95%、錫1~2%、亜鉛3~4%でこちらも純銅に近いではありますが錫と亜鉛が僅かに含まれるので青銅なのです。

さて、半両銭はどうして青銅なのか?これはピンとくる人も多いと思いますが、そもそも古代の中国文明は青銅器文明でした。

鼎(かなえ)

 

殷や周王朝では、すでに高度な冶金技術(やきんぎじゅつ)があり、当時の王や諸侯は、自らの権威を誇示するように大量の青銅器を生み出していました。

ただ、青銅器を造っただけではなく、これを王が諸侯に下賜したり、プレゼントしあったりしてもいたようです。

このことから青銅器は貴重で権威の高い金属になっていきやがてこれが貨幣の形をとっていったと考えられています。

実際に半両銭以前にも、同様の形状を持つ青銅貨幣は造られていました。

大和朝廷 古代宮殿と邪馬台国

 

日本は中国の貨幣を真似て貨幣を造ったので、やはり材料を青銅にしたのです。

後進国で最新技術を逸早く手に入れられた日本は青銅器文明の時期が短かくすぐに鉄器の時代に入るのですが、

通貨を鉄にする事はなかった点に何でも中国の真似をしてみるミーハーな日本人の性質が窺えます。

 

黄金の輝きと耐食性の強さ

宋銭 お金と紙幣

 

もう一つ青銅が半両銭に使用された理由は鉄に比較して錆びにくい事です。

2000年前ともなると、鉄製品が完全な形で出土するのは稀ですが、青銅器は表面こそ黒ずんで錆びていますが完全な形で出土してきます。

これは青銅がなかなか腐食しない金属である事を意味しています。

ましてや、銅銭は金や銀より価値が低い補助貨幣なので、ある程度まとまった数が必要でボロボロ錆びられては困るのです。

曹操に印綬を与えられ、従う費桟

 

そして、青銅は新品の十円玉のように出来た頃には赤みがかった黄金の輝きを放ちます。

これが非常に見栄えがよく貨幣としての格を高めたのです。

実際、金や銀は計量貨幣で重さが重視されますが、銅貨はコインとして成分以上の価値を持っている名目通貨(めいもくつうか)になっています。

世界的にも、すでに銀貨や金貨は通貨として出回る事は少なくなり、ほとんど銅貨になっている点でも通貨として優れた青銅の価値が分かります。

 

キングダムネタバレ考察

 

半両銭も十円も名目通貨だった

嬴政(始皇帝)

 

もう一つ、十円玉と半両銭には共通点があります。それは、両者が計量通貨ではなく名目通貨であるという事です。

例えば、十円玉は製造コストが3.6円かかるのですが流通する時にはその3倍くらいの価値で流通しています。

貨幣の材料の価値ではなく貨幣自体に価値がつくのを名目通貨と言います。

実はこれ現代日本だけでなく、秦の半両銭も同じだったようなのです。

 

秦が滅亡した後、劉邦(りゅうほう)が興した前漢は秦が発行した半両銭をしばらくそのままで使用していましたが、

半両銭が次第に欠損して薄く小さくなっても価値を下げる事なくそのまま流通させていました。

まだ漢王朝で消耗しているの? お金と札

 

当時の法律では、銭の口経が八分以上あり半両の文字が判読できて、鉛を多く含有していなければ美銭じゃなくても公の銭とするとされ、本来の半両銭の4分の1の重さでしたが、文句は出ませんでした。

これが、半両銭が計量通貨ではなく名目通貨だった為なのです。

 

どうして、十円も半両銭も円形なのか呂不韋が解説

呂不韋

 

今となっては、当たり前すぎて疑問にも思わないですが、どうして半両銭も十円も円形をとっているのでしょうか?

実は、この半両銭が円形である理由は、あの呂不韋が自身が編纂(へんさん)させた「呂氏春秋(りょししゅんじゅう)」において解説しているのです。

それによると当時の秦の人々は世界が丸いとは思ってなく、天地は四角で、その上に円形の蓋がかぶさっていると考えていました。

 

世界が四角で天が丸いので、この思想を天円地方説と言います。

そこで半両銭は、四角の孔で世界を丸い形で天蓋を表現したのです。

因みに、このような貨幣を方孔円銭(ほうこうえんせん)と言います。

 

中華を統一した始皇帝は、各国の貨幣を廃止して半両銭を流通させますがそこには、自分が世界の支配者であるという意味も

込められていたかも知れません。

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

 

一見、関係ないように見える十円玉と半両銭。

しかし、調べていると2200年の時を越えて両者には材質の一致、名目通貨としての一致、形状の一致など似たような部分がある事が分かります。

ちなみに半両銭の孔は四角ですが、これは世界が四角であるという概念以外に半両銭を製造した時に表面に出来たバリを取る為に

孔に鉄棒を通したのですが丸い孔だと鉄棒が回ってしまうので、四角の孔にしたようです。

 

参考:中国古代の貨幣 お金をめぐる人々と暮らし/34p~44p/柿沼陽平/2015年4月20日第二版/歴史文化ライブラリー395/

 

次回記事:キングダム617話ネタバレ雑学vol3「十円玉と秦の半両銭には共通点がある」

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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