大人気春秋戦国時代漫画キングダム第618話は、蒼淡大活躍の回になりました。殺される寸前だった河了貂を救い、さらに瀕死の重傷を負った兄を救いさらには、李牧の側近であった金毛さえも射殺する大金星を挙げたのです。しかし本当にカッコ良かったのは、滅びの美学を体現した金毛でしょう。そこで今回は、髪型がロバート秋山のような金毛の人生の軌跡を振り返ってみます。
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この記事の目次
黒羊での敗戦
キングダムの人気を支えている要素の中には、サブキャラの心理も丁寧に描かれている部分もあります。従来の歴史漫画には、主人公クラスのキャラクターばかりが活躍してしまいサブキャラは飽くまでサブという事が多かったからです。
金毛は、黒羊丘編の敵ボスだった慶舎の副官として登場します。本能型の慶舎に対して金毛は冷静なベテラン副将としての扱いであり、地味ながら堅実な戦い方を展開し桓騎軍の摩論と互角でした。金毛が退却のやむなきに至ったのは、大将の慶舎が討たれ、さらには、桓騎軍の離眼城虐殺の脅迫に折れた紀彗の軍勢が趙軍から離脱してしまった為です。
本来、退却も作戦続行も副官が決断する事ではありませんが、慶舎不在の中で、金毛は二者択一の選択を迫られます。
紀彗の方針を理解し岳嬰を叱る
ここからの紀彗と金毛の撤退を巡るやり取りは「今さら退却なんて身勝手は許さねえ、ここで貴様を殺してでも止めてやる」と脅迫に出た岳嬰より遥かに高度なものでした。金毛は、この戦いの勝敗の決め手が紀彗であり、離眼衆の動向が勝敗を決める事を認めた上で故郷を守りたいという紀彗の立場にも一定の理解を示しています。そして恫喝で無理強いしようとする岳雷を叱りそれすら分からんなら兵卒からやり直せと突き放します。戦争の勝敗が掛かった状態で、それでも紀彗の立場に理解を示す辺り金毛はなみの武将ではないと言えるでしょう。
紀彗にも重い選択を迫る
金毛は、紀彗にも以下のように釘を刺します。
「我々慶舎軍は、離眼の為ではなく趙国を守る為に黒羊の戦いに来た。
事実、ここを失えば黒羊を拠点に周囲一帯が秦軍の侵略を受けるだろう
離眼はその中の一城に過ぎず、実際そうなった時、どれほどの趙人の血が流れるか命を失うか予測すら立たぬ。
そして、一帯すべてが秦の領土と化した時、言うまでもなく次は趙の領内奥深くまで次の侵略を受けるそうさせない為の黒羊戦だった。
それを防ぐ為に皆は戦い血を流しその大義の為に死んだのだ」
黒羊を放棄して離眼を救う事で、趙の西半分が深刻な侵略の脅威に曝されるその重さを理解した上で決断してくれ
結局、紀彗は故郷を守る事を優先して黒羊から撤退してしまい、金毛は上官を死なせた上に一敗地に塗れる屈辱を味わいます。しかしながら金毛は、それを恨みに金毛に辛く当たる事はしていません。本来ならば、総大将の慶舎が下さないといけない重い選択を副将でありながら、この上ない冷静さで下したのです。地味でロバート秋山みたいな髪型ですが、人格がよく練れた人物と言えます。
恨みと冷静さの相克
そんな金毛ですが、冷酷非情な人物ではありません。上官である慶舎を殺した飛信隊の信に対しては恨みと復讐心を持ち続けます。朱海平原では、今度は李牧の首を狙おうとする飛信隊に対して小隊を率いて迎撃し、李牧の本陣には近づけまいと獅子奮迅の働きをしました。
個々の戦闘力では金毛隊を上回る飛信隊は大苦戦しますが、亜花錦が亜光軍の半分を率いて援軍に回った事で、金毛軍は敗れ去ります。ここで金毛は、最後の突撃を敢行して信と刺し違えようとしますが、副官の竹進に止められ、結局退却します。代わりに殿を引き受けた竹進は飛信隊の猛攻の前に戦死。金毛は、この辺りが人生で最高にカッとなっていた時期でしょう。ところが、歴戦の名将は、それでも自暴自棄にならずに自分の命をもっとも有効に散らせるポイントを探し続けていました。
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