古代中国では歯磨きはしていたの?どんな道具を使っていた?

2019年12月11日


 

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歯磨きをしている陸遜

 

現代では一般常識ですが、人類はみんな食後に歯を磨かないと虫歯になってしまいます。歯に付いた食べカスを取り除くには歯ブラシで歯を磨くしかありません。しかし、今でこそ歯ブラシというものがあるから良いですが、歯ブラシが登場する以前はどのように歯の手入れをしていたのでしょうか。

 

呂布にとどめを刺すよう曹操に献策する郭嘉

 

三国志では様々な人物が戦争やら謀略やら行っていますが、そんな彼らも虫歯になったら戦争どころではないでしょう。

 

今回は古代中国の歯磨き事情について紹介致します。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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そもそも古代中国では歯磨きを行っていた?

歯痛に悩む陸遜

 

古代中国では歯磨きを行っていたのでしょうか。そしてそうであれば、どのようにして行っていたのでしょうか。米国の歯科医師会によると、歴史上の最初の歯ブラシは、1498年に中国の皇帝が骨や竹を土台として、豚毛を植えつけたものを歯磨き(豚ブラシとします)に使用したものであるとのことです。

 

趙匡胤は北宋の初代皇帝

 

世界最古の歯ブラシを作ったのはなんと中国だったのです。とはいえ、これは皇帝のみに許された道具ですので、あまり一般市民が用いたものではないようですね。

 

さらに歯磨きの歴史を遡ると・・・

 

米国医師会によれば、1498年には中国の皇帝が歯ブラシを使っていたとのことです。しかし、彼らの主張を疑う訳ではありませんが、さらに遡ってみましょう。

 

実は古代中国では南宋の時代(一一二七〜一二七九年)に歯ブラシの原型が作られていました。牛の角で歯ブラシの柄を作り、馬の尾毛を植え歯ブラシとしました。材料として、豚ブラシとは別に中国の王の墓から発見されました。歴史上において最初の歯ブラシはこちらの南宋時代のものであると考えられます。

 

歴代皇帝の墓を暴こうとする韓遂の兵士

 

とはいえ、王の墓から出土したと伝えていますので、当時の一般家庭の家財道具等を調べても歯ブラシなどは発見できなかったのでしょう。以上から、三国時代において平民は、歯ブラシを使用できなかったようです。

 

それ以外の道具は?

武器・農業器具を制作する張裔

 

それ以前では殷の次代(紀元前十六〜十一世紀)、周 (紀元前一一二〇〜二五六年)の青銅器時代を過ぎると、金製、銀製の爪楊枝が出現した。これを三緒 (さんちょ) と呼びます。

 

この爪楊枝の起源はヨーロッパで、シルクロードを経て中国に渡来したと考えられています。三緒は首飾りのようなものに爪楊枝、小刀、とげ抜き、耳かきなどの道具がついています。首から下げて着用するため装飾的な用途もありますが、食後にその金属製の爪楊枝で歯の掃除を行うことができたそうです。とはいえ、これは恐らく一部の者にしか渡っておらず、市民には普及しなかったでしょう。

 

道具に頼らない方法があった?

庶民、村人の家

 

当時の庶民は、道具は持ち合わせていなかった可能性もあります。戦乱の時代、食物にも困る者もいたぐらいですから、歯磨きどころではないでしょう。

 

疫病が蔓延した村と民人

 

貧しい暮らしの方は三緒のような首飾りは早々に金にして、食物にするなりしていたと思われます。こうした道具を持たない人に関しては、礼記という書物に記載がありました。礼記は周から漢にかけて儒学者がまとめた礼儀作法に関する書物を、前漢の学者である戴聖が編纂したものです。礼記の記述によれば、「鶏が鳴くとき、塩水で洗う」との記述があり、鶏が鳴く頃すなわち早朝になると塩水でうがいをするということが身だしなみ、礼儀に適った方法のように記しています。

 

結論として、どのように御手入れをしていた?

景帝(けいてい)は前漢の第6代皇帝

 

古代中国では、道具の有無によって歯の手入れの仕方が異なっていました。皇帝のような身分のかなり高い人は歯ブラシを使用し、爪楊枝の三緒を持つ人はそれを用いていたのでしょう。道具を持たない人に関しては、礼記の記述から後漢時代もうがいの風習があり、歯磨きは行わず、塩水によるうがいのみおこなっていたのでしょう。

 

三国志ライターF Mの独り言

FM

 

塩水を用いたうがいは、現代でも用いられている方法です。殺菌作用や唾液の分泌促進等の効果がある程度で、ブラッシング以上の成果は見られないと思われます。とはいえ、塩が歯茎の水分を吸収し、歯茎を引き締め、歯周ポケットが閉じる、等の効果があるとは言われているので、水うがいよりも効果はあるかもしれません。現代の様な知識はなくとも、当時の人達は塩水で歯を磨くことが歯に良いことは把握していたようですね。

 

また、個人的な意見ですが、当時お肉を食べているぐらいですから、歯に詰まった汚れを爪で掻き取るぐらいの手入れはおこなっていたとは思います(つくづく汚い話してますね)。

 

参考文献:

歯痛の文化史 古代エジプトからハリウッドまで

ジェイムズ・ウィンブラント著・忠平美幸訳 朝日新聞出版(2017)

礼記 戴聖編纂

 

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歯痛の歴史

 

 

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