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この記事の目次
北伐の意義
蜀という国は、魏との講和はあり得ません。というのも蜀は「漢室の正当後継者」を主張して「魏は漢室から無理やり皇帝の権利を奪い取った逆賊」であるからです。なので事実はどうあれ魏とは永遠に戦い続けなければいけません。
これは国を挙げての国家プロジェクトであり、国を挙げてやり続けなければいけないプロジェクトと言っても過言ではないのです。
掲げなければいけないもの
さてここで気付かれたでしょう、それならば先帝である劉備以上に名前を出さなければいけない人物がいますね。そう、献帝です。
三国志をご覧になった人たちはご存知と思いますが、献帝はまだ生きており、魏に割かし手厚く保護され、禅譲もそこそこ穏やかに執り行われました。しかしこれを認めては魏に臣従しなければならないので、蜀では「献帝は殺されてしまった」が通説となっています。
この献帝の名前はこの出師の表には出てきません。それはなぜか?
それは蜀という国が掲げるべきものが「分かりやすいものでなければならなかった」からだと思うのです。
劉備という存在
蜀は紆余曲折あったにしろ、劉備の土地であり、劉備に惹かれて集まった人たちが住んでいる土地です。そこで民衆を説得、力付けるなら劉備の名前を出すのが一番。ここで献帝の名前を出されても民衆は今一つ北伐に乗り気ではなかったのでは?
何よりも恐らく諸葛亮自身は「献帝が生きている」ことを知っているため、万が一それが確認された時に「皇帝劉禅に嘘を付かなかった」ようにするため、敢えて献帝の名は出さなかったのではないか……?
その結果、劉禅の心も、民の心をも動かす立派な上奏文が生まれたのではないかと考えると、この上奏文を書いた諸葛亮が如何に非凡な人間であったかということが再確認できるのではないでしょうか。
三国志ライター センのひとりごと
因みに劉備の名前こと「先帝」という文字が何度も何度も出てくると言いましたね。こういう文章の中で同じ文字を繰り返していると文章自体の美しさが損なわれることが多々あります。しかしそれでいてなお、この出師の表は美しくまとめられている文章であることを考えると、正に感嘆の一言。
筆者としては今回、この出師の表を見返してみて改めて、三国志の魅力や諸葛亮の政治手腕だけでなく、この文の流れる美しさも見習っていきたいと思う所存でありました!
参考記事:出師表 wikipedia
【北伐の真実に迫る】