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この記事の目次
王翦の名将たるゆえん
李信の敗北を受けて、始皇帝に登板を懇願された王翦は再び兵力60万人を要求しています。この大軍を持っていても、それよりは少ない項燕の兵力に対して慎重で陣を堅く守り、持久戦の途中で訓練が足りない秦兵を鍛えて、項燕が耐えきれなくなり退却を開始してから、ようやく追撃を開始しています。
王翦は決して兵力を分散せず急がず、項燕を自殺に追い込み楚王を捕らえるまで、副将の蒙武と共に、なんと一年を掛けて楚各地を平定していました。電撃戦とは真逆の、地味で手堅い戦法で戦い抜いて、楚を滅ぼしたのです。
漫画的には面白みがゼロですが、戦争は負けるマイナス要素を一つでも多く取り除いた方が勝利するので補給を確保した大軍が丹念に、城を1つ、1つ、潰すという戦法が最も有効なのです。
少ない兵力で大軍を破るというのは、見た目にもカッコイイですがリスクの方が大きく、本当の名将はそんな危ない方法は取りません。
王翦の見事なアフターケア
余り知られていませんが、王翦は楚を滅亡させて、そのまま帰還したわけではありません。さらに、江南に軍を向けて百越と呼ばれた春秋時代の越の後裔の異民族を攻撃して平定しています。楚が弱体化した隙を突いて、これらの百越が楚に侵攻してきて混乱する状況まで予想したのでしょう。楚を滅ぼして終わりじゃなく、その将来まで見通しているというのは王翦の見事さと言え李信とでは将軍としてのレベルがまるで違いますね。
キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言
李信の敗北を見た時に、どうしても李信の若さゆえの慢心と項燕の名将ぶりが強調されがちですが、本当は楚の広大さを理解せずに、過小な兵力で楚に攻め込み、さらには少ない兵力で電撃戦を敢行しようとした李信の実力不足こそが最大の原因であり、項燕でなくても、そんな李信を打ち破るのは難しくはなかったと思います。
文:kawauso
参考文献:春秋戦国の英傑たち 五覇七雄の光芒 双葉社
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