はじめての三国志読者の皆様、こんにちは。
今回は、「はじめての三国志」より電子書籍として2020年7月4日(土)にリリースする『鉄と日本の二千年史』の告知を致します。
この記事の目次
沢山ある鉄より青銅器が使われた理由
普段、あまり鉄について考える事がない私達ですが、実は地球は核の部分以外はほとんど鉄で出来ています。通り過ぎる自動車も、ビルの鉄骨も、飛行機も、船も、その骨格の大半は鉄です。また21世紀も鉄器文明の中に入り、私達の文明は鉄なしには成立しないのです。
そんなありふれた鉄ですが、人類は鉄の文明に入る前に青銅器文明に入っています。鉄よりも希少で高価な錫と銅の合金である青銅器は、どうして鉄よりも先に使われたのでしょう?
鉄を実用化して覇者になるヒッタイト
それは、鉄を溶かすには専用の機密性が高い炉が必要で、昔の人類には鉄を実用に耐える程に精錬するのは難しかった為です。しかし、3500年前にアナトリア半島に勃興した騎馬民族のヒッタイトが実用に耐える鉄の精錬に成功し、鉄の武器で青銅器文明の古代エジプトのような帝国を打ち破り、世界最強の帝国を築くのです。
ところが鉄の秘密を独占したヒッタイト帝国は紀元前13世紀頃には衰えて滅亡し、鉄の技術は世界へと拡大していく事になります。
鉄をガラパゴス的に発展させる日本
極東の日本には、欧州から誕生した鉄が最も遅く入ってきます。その為に、朝鮮半島からは青銅器と鉄器が同時に入り、石器の文明からいきなり鉄器文明へ進み、青銅器文明の時期が曖昧になっています。
当初は伝来した技術をそのまま踏襲した日本ですが、豊富で再生能力が高い森林を使って鉄を精錬するたたら製鉄が確立すると鍛造技術が進んでいき、非常に高い硬度と柔軟さを併せ持つ日本刀のような優れた鉄製品を産み出し、その技術の延長で、16世紀の西洋科学の粋だった鉄砲の量産も可能にします。
一方で、朝鮮半島や中国、インドやペルシャのような土地から鉄の技術者を呼び寄せた結果、奈良の大仏のような鋳型を用いた巨大な大仏も造れるようになります。
ガラパゴス化のツケが幕末に炸裂
しかし、優れた日本のたたら製鉄技術でも不得意分野がありました。それは大砲で、たたら製鉄では炉の温度が低すぎて鉄の中に気泡が残って強度が不足したのです。鉄砲なら鍛造でカバーできますが、大砲を鍛造する事は大きすぎて不可能でした。ところが、大砲が日本に伝わって本格配備される頃には、戦国時代は終結。
日本は制限貿易の時代に入り、その中で西洋では反射炉のような鉄鉱石も溶かせる1800度の炉も登場し、日本では鋳造できない巨大な大砲を無数に生産してきます。
この大砲を載せた船こそ、ペリーが乗ってきた黒船でした。泡を食った幕府は慌てて、たたら製鉄で大砲を鋳造しますが強度不足で暴発が頻発。結局、青銅砲に発展的に後退する事態になります。
これに危機意識を抱いたのが、江川太郎左衛門のような幕末のエンジニアでした。
300年は遅れた精錬技術を取り返すために彼らが始めた事は、なんと製鉄事業ではなかったのです。
鉄と日本の二千年史をお楽しみに
なーんて、少し引っ張ってみましたが、知られざる日本人と鉄の歴史が分かる一冊です。きっと意外な事実に目からウロコが落ちますよ、おススメです。
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