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この記事の目次
武士の秩禄消滅と豪商の没落で明治維新は達成された
明治維新達成における最大の障害は、武家に先祖代々支払われていた固定給である秩禄と、経済的に困窮していた300諸藩が大坂や江戸や京都の豪商に負っていた莫大な借金でした。特に、武士の秩禄は国家予算の3割にもなり放置しておいては富国強兵など不可能です。
そこで明治政府は、300諸藩が負っていた債務を廃藩置県を契機に政府が肩代わりした上で債務をほとんど踏み倒し、武士の秩禄も、大幅減給した上に数ヵ年分を公債で支払うという形で打ち切りました。
つまり、武士と豪商に犠牲を強いる事で明治政府は債務整理し維新は成就したのです。特に武士の俸禄を切り捨てた事は俸禄で生活していた武士の反発を呼び、多くの不平士族の反乱に影響しましたが、明治政府は断行しました。
また「半世物語」によると江戸時代の大坂の豪商34家の中で維新期に23家が破産して家が絶え、明治以降も以前の勢力を維持できたのは9家に過ぎなかったようです。
借金棒引きも秩禄の廃止も、その分のお金を社会に還元したも同様です。明治維新は大きな犠牲付きの富の再分配だったという側面も忘れてはいけないでしょう。
日本史ライターkawausoの独り言
このように、日本では、豪族の私有民を解放し、人民に土地を与えた大化の改新、戦国末期の荘園の消滅による中間搾取の撤廃。
江戸時代の年貢負担の軽さや、三大改革期の徳政令の発布による武士階級の救済、そして地租改正による自作農の増加と武士の秩禄廃止や豪商が大名に貸していた借金の棒引きという、土地と財産の再分配が定期的に行われた事が分かります。
昔の日本の政治家は、放置すれば富も土地も一極集中し99%の国民が貧しくなる事を知っていて、度々既得権益に介入する事で再分配を繰り返し、それが経済格差が小さく差別が小さい日本社会を産み出したのです。
参考文献:土地と財産で読み解く日本史 大村大次郎 PHP研究所
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