ある程度、年配の方になるとお札を数えるのに指先に唾をつけてめくる人いますね?これは年齢を経る事で指先からうるおいがなくなり、お札がめくれなくなるからですが、それはそれとしても、お札をなめるのは危険な行為ってご存知ですか?
今回のゆるい都市伝説は、お札をなめる事で起きる危険について解説致します。
金は天下のまわりもの…
お金は天下のまわりものと言われます。それは、お札が多くの人の手を渡っていく事を示しています。一般に千円や五千円の寿命は1~2年、一万円札は5~6年の寿命だそうです。
お札は、人の手から手を介して所有が移っていくので、当然、手の平の細菌がお札に付着する事になります。つまり、人からお札を受け取ると、その時紙幣を通じて細菌があなたの手に付着する事になるのです。
お札と硬貨の汚染細菌を調査した結果
では、1万円や五千円、千円は、どの程度汚染されているのでしょうか?また、お札より頻繁に流通する硬貨とお札の汚染度の比較はどうなのか?
株式会社衛生微生物研究センターが2013年5月に、東京都23区の飲食店、ならびに物販店で採取した紙幣と硬貨を対象に汚染細菌の付着状況を把握した調査をしました。
調査では、調査員が23区内の10カ所の店舗において買物をおこない、紙幣と硬貨をお釣りとして収集。その上で日常的な買い物によく使用される千円札、百円玉、十円玉を選定し、また、汚染細菌が付着しやすい形状と想定される穴あき硬貨として五十円を加えて合計4種類をそれぞれ10枚ずつ検体として用いています。
汚染細菌の測定は、紙幣は両面をそれぞれ専用の培地に押し付けて培養士、培養後の汚染細菌の集落をカウントし、硬貨については滅菌水で洗い出した液を希釈培養する方法を用いました。
その結果、10枚全ての千円札には多くの汚染細菌が付着している事が確認されたそうです。汚染細菌の付着量は、最小で62個、最大で440個と同じ千円札でも付着量に開きがある事が明らかになりました。
一方、紙幣より汚れていそうな硬貨は、五十円と百円玉に一定量の汚染細菌が付着している事が確認されましたが、付着量は平均13個、6個と千円札を大きく下回り、さらに十円玉に至っては検出限度以下で汚染細菌は培養されませんでした。つまり、株式会社衛生微生物研究センターの調査により、お札は硬貨よりも汚い事が証明されたのです。
参考:現金の清潔度調査を実施 ~日常的に使用する紙幣と硬貨の汚染細菌付着実態が判明~(外部リンク)
千円札に付着した細菌とは?
また、検出された汚染細菌の種類についてさらに調査した結果、千円札2枚からは、厚生労働省から主な食中毒原因物質として指定されているセレウス菌が検出されました。東京都福祉保健局のホームページによると、セレウス菌とは土壌細菌のひとつで、土壌・水・ほこりなどの自然環境や農畜水産物などに広く分布しています。
セレウス菌による食中毒は、「下痢型」「嘔吐型」の2つのタイプに分類され、いずれも、この菌が産生する毒素が食中毒の発生に関与しています。
しかも、この菌は耐熱性(90℃60分の過熱に抵抗性)の芽胞を形成し、増殖に適しているのは28℃から35℃で、嘔吐を起こす毒素も熱に強く126℃90分の過熱でも失活しません。
嘔吐の症状は一般に軽く、患者数も100名~400名前後で死亡例はほとんど見られませんが、平成20年に発生した家庭でのセレウス菌食中毒では3名中1名が死亡していますので、用心に越した事はないでしょう。
参考:加熱しても死なない食中毒菌 1.セレウス菌による食中毒(外部リンク)
世界で一番汚れているお札は?
では、日本を離れ世界で一番細菌に汚染されているお札はどこの国のお札なんでしょうか?
2019年、トルコ、オランダ、ドイツの研究者が各国の紙幣(ユーロ、ドル、クーナ、レウ、ディルハム、ルピー)などを黄色ブドウ球菌と大腸菌で意図的に汚染し(1)紙幣の細菌がどのくらい生存できるか、(2)紙幣の手渡しで細菌が伝染するのかを調べて見た結果、どちらの細菌でも他人に伝染させたのはルーマニアの紙幣、レウだけだったとあります。
ルーマニア人にとっては、なんとも気分が悪い結果ですが、その汚染されやすい理由も、ちゃんと判明していて、ルーマニアレウには耐久性と偽造防止のためにポリマーが使用されている事が原因だとか…ちなみにこの研究により、調査チームはイグノーベル賞を受賞し10兆ジンバブエドル(当時の価格で40セント)を受け取ったそうです。
参考:研究者らが解明 どの国の紙幣が世界でもっとも細菌に汚染されているか(外部リンク)
参考:なぜウォンバットのフンは四角いのか? など奇妙な研究が勢ぞろい。2019年イグ・ノーベル賞10部門の受賞研究発表(外部リンク)
アメリカドルの恐ろしい事実
お札に付着しているのは、汚染細菌だけではありません。例えば、アメリカドルには、もっと恐ろしい物質が付着している事が分っています。アメリカでは、1994年、ロサンゼルスにおいて第9巡回区控訴裁判所が平均すると4枚のドル紙幣のうち3枚以上が違法薬物に汚染されていると断定しているのです。
どうして違法薬物とお札が関係しているのか?それは一部の違法薬物を鼻から吸引する際、お札をまるめて使用するからであるとする説もあります。また、医学的に証明された話ではありませんが、紙幣を通じて、様々な病気が媒介されているという研究結果もあります。
日本のお札がアメリカと同じと言うつもりはありませんが、少なくともお札を指でなめたりするのは、リスクがあると考えた方がよさそうです。
都市伝説ライター kawausoの独り言
お金は日々の暮らしを支えてくれる便利で大事なアイテムですが、天下のまわりものであるだけあり、多くの汚染細菌が付着している事が事実としてあります。お札を触った後は手を洗う、お札を数える時には指サックなどを使い、つばをつけてなめたりしないのがリスクを避ける事に繋がりますね。
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