中国の春秋戦国時代を舞台に始皇帝と中華統一の夢を誓った主人公信の生涯を描く漫画キングダム、このキングダムで現時点の最強のボスとして君臨しているのが趙の李牧です。
李牧はその知略で秦を散々に苦しめますが、最後には非業の死を遂げ直後に趙も滅亡してしまいます。策略において右に出るものがいなかった李牧が非業の最後を遂げた理由は、あまりに反骨精神が強い頑固な性格のせいでした。
自分が正しいと思えば妥協しない李牧
李牧は元々趙と匈奴や林胡といった騎馬民族がすむ国境の雁門(がんもん)という土地の司令官でした。雁門は、度々、騎馬民族の襲撃にやられていましたが、李牧は襲撃に対しては、打って出る事はせず一斉に住民を引き上げさせ城壁の中で籠城する事で被害を最小限に食い止めていました。
しかし、李牧のやりかたを臆病で消極的だと批判する人々が少なからずいて、もっと積極的に打って出て、敵を全滅させるべきだと李牧に言いますが、李牧は「命令に逆らう者は斬首する」と聞く耳を持たず頑なにやり方を変えませんでした。
王の命令を無視しクビになる李牧
李牧の悪評は趙王にも届き、もっと積極的に敵を攻めるように命令が下りますが、李牧は王の命令でも道理に合わない事は受けないと、これも平然と無視してしまいます。
コケにされたと感じた趙王は激怒し李牧を雁門の司令官から下ろし、もっと攻撃的な将軍を送り込みました。ところがいざ積極攻勢に出ると騎馬民族は得意の機動力を活かして戦い、返って趙の損害が跳ね上がります。
仮病を使い司令官復帰を拒む李牧
ここでようやく趙王は李牧のやり方が正しかったと認め、戻ってくるように命令を出しました。
李牧はここでも反骨精神を発揮し、病と称して家に閉じこもり使者と会おうともしません。それでもしつこく使者を送り続けると李牧は、「王が私のやりかたに口を挟まないなら、もう一度雁門の司令官になってもよい」と答えます。
趙王は条件を飲んだので李牧は雁門の司令官に返り咲きます。このように李牧は名将でしたが、相手が王であろうと自分が正しいと思った事は断じて曲げず趙王との間に信頼関係を築けませんでした。
またも王の命令を無視し殺される李牧
紀元前229年、李牧は大挙して攻めてきた秦の王翦の軍勢を副官の司馬尚と食い止めます。困った王翦は、趙王の寵臣で欲深い郭開に賄賂を贈り、李牧を交替させるように依頼しました。郭開は李牧がいたずらに戦争を長引かせて、自らが王になろうとしていると趙王に讒言。趙王は恐れ李牧に使者を派遣して司令官の交代を命じます。ところが反骨の李牧は王の命令を拒否して軍の指揮を執り続けました。いよいよ李牧を疑った王は李牧を逮捕し殺害してしまうのです。
度が過ぎる反骨が李牧を殺した
人間、まっすぐに正直に生きる事も大事ですが、無理解な相手に対してひたすら衝突するのは賢明とは言えません。李牧の宿敵でもあった王翦(おうせん)が始皇帝の機嫌を取って天寿を全うしたのに比べると、李牧はあまりにも融通がきかない性格の為、最後には我が身を滅ぼしてしまったのです。