中南米の国であるコスタリカは、憲法で軍事力を持たない事を明記したとして有名で、日本では反戦平和の人々が日本もコスタリカに見習えと一時期、盛んに主張していました。しかし、重要なのはどうしてコスタリカが軍事力を放棄したかという事ではないでしょうか?今回はその事情について解説します。
軍事大国だったコスタリカ
元々、コスタリカは中南米で有数の軍事力をもつ大国でした。しかし、大きな軍事力を持つ事で軍人に権力が集中、1948年には軍に支持基盤を持つ大統領と野党の間で6週間の内戦が起きました。そこで内戦を平定したホセ・フィゲーレス・フェレール大統領が1949年に新憲法を発布し、その中で旧大統領の勢力が復活するのを阻止する名目で軍隊を廃止したのです。
軍縮の副産物
ただ、大幅に軍事力を削減した事で、コスタリカはその予算を教育や経済に振り向ける事が可能になります。同時に中南米の政権にありがちな軍のクーデターが起きなくなった事で政権が安定し経済成長を果たしました。IMFによると、2013年のコスタリカのGDPは約496億ドルで愛媛県とほぼ同じ経済規模にあり、一人当たりのGDPは10,528ドルで、世界平均をマークしています。貧しい国も多い中南米では、コスタリカは珍しい経済成長を遂げている国なのです。
軍事力を完全に放棄したわけではない
ただし、コスタリカ憲法では有事の際、国家および国民が外勢力からの侵略に対して無抵抗主義を貫くわけではありません。コスタリカ共和国憲法第12条では「大陸間協定や国防のためにのみ、軍隊を組織することができる。」と規定していて、集団的自衛権及び自衛権の行使などの非常時に軍隊を組織し徴兵制を敷く事を認めています。つまりコスタリカ憲法は軍事力を廃棄したものの、未来永劫軍隊を持たないという意味ではないのです。なかなか弾力的ですね。
実際の軍事力は?
コスタリカ憲法は軍隊を認めていないので公安部隊を置いています。その軍事力は陸軍兵力としてM3装甲車やM113装甲兵員輸送車、UR-416装甲兵員輸送車、海軍力では118トンのクルーザーにブローニングM2重機関砲及び60㎜迫撃砲を搭載しています。航空部隊は人員400名、航空機では小型輸送機、軽飛行機14機とヘリコプター3機を保有しています。
軍事力放棄の背景を考えよう
コスタリカの軍事力放棄は元々、軍事クーデターを阻止する為に憲法で軍事力を廃棄したのが最初です。そのお陰でコスタリカは政治的に安定し、予算の投入で教育や経済が繁栄しました。また、そもそもコスタリカに軍事侵攻を考えている国はニカラグアしかなく、コスタリカは隣国との軍事的緊張の解消の為に軍を放棄したわけじゃないのです。日本にコスタリカを当てはめるのであれば、そういう背景も考慮しないといけませんね。
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