ハイ、それでは、三国志の世界をいろいろな角度から掘り下げていく「ろひもと理穂の三国志の天才たち」のコーナーです。
三国志に登場する天才たちの中でも群を抜いているのが魏の曹操(そうそう)と蜀の諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)でしょう。
「三国志演義」では術を駆使し、変幻自在の兵法を編み出す人間を超越した存在として描かれています。さすがにそこまでは話を盛り過ぎている感じはありますが、様々な分野で手腕を発揮したことは間違いないようです。
戦場での駆け引きだけでなく国家の戦略をプランニングし、インフラの整備、法典の編纂、外交交渉のプレゼンテ―ションと大活躍しています。
あまりにも働き過ぎて過労死したのではないかという憶測もあるぐらいです。今回はそんな天才・諸葛亮孔明の兵法書について触れていきましょう。
兵法七書
またの名を「武経七書」とも呼ばれる軍学・兵学の教科書です。
①「六韜」 6巻60篇 文の巻、武の巻、龍の巻、虎の巻、豹の巻、犬の巻から成ります。慣用句の「虎の巻」はここからきています。成立、作者ともに不明ですが、太公望が周の王に指南する形式で構成されています。
②「三略」 上略、中略、下略から成り、こちらも太公望(たいこうぼう)が書いたという伝説が残っています。「柔よく剛を制す」の言葉が有名です。
③「司馬法」 春秋戦国時代の斉で書かれたとされています。155篇のうち5篇のみ現存します。斉は太公望が作った国です。
④「尉繚子」 春秋戦国時代の斉または魏で書かれたとされています。大義名分があれば先制攻撃もやむなしと記載されています。トランプ大統領も読んでいるかも。
⑤「呉子」 春秋戦国時代の呉起が作者とされています。四十八篇ともいわれていますが、現存するのは6篇のみです。「和してしかるのちに大事をなす」とあり、日本の17条憲法に影響を与えたかも。
⑥「唐太宗李衛公問対」問対形式で、諸葛亮孔明や曹操の兵法も話題にのぼっています。
⑦「孫子」 兵法七書の中で最も優れているとされています。紀元前500年頃の孫武が作者とされており、三国志では曹操が注釈を加え後世に伝えました。現代のビジネスマンも教科書としているベストセラーです。
諸葛亮孔明が遺した兵法書?
① 「将苑」 ほぼ孫子のコピー作品です。諸葛亮孔明の名を借りて宋代に作られたものといわれています。諸葛亮孔明の兵法書と信じられ愛読されてきましたが、偽物です。
② 「心書」 はっきりいって将苑と同じ内容です。ということは、こちらも孫子のコピー作品ということになります。偽物です。
➂ 「便宜十六策」 こちらも宋代に作られたものですが、諸葛亮孔明の真作と思われる箇所もあります。「太平御覧」という書物に記載されているものと共通する部分がそれです。「武候兵法」として引用されています。全体的には政治指南書です。ということで数ある兵法書の中で、諸葛亮孔明の兵法書だと思われているのは、「便宜十六策」なのです。
便宜十六策の中身を一部紹介
地形に応じて戦うべきと書かれています。
・草原では深く生い茂った場所に軍を進めてはならないとあります。伏兵を案じてのことでしょうか。
・丘陵では低地に布陣して高地にいる敵を攻めてはならないとあります。逆落としを食らうからですね。
また、軍の禁止事項についても書かれています。
・「軽」進軍の合図や点呼に応えないのはダメ。
・「背」隊列を乱したり、逃げ腰になったり、戦線離脱してはダメ。
・「乱」先頭争いでバラバラに行動するのはダメ。 などなど。
三国志ライター ろひもと理穂の独り言
諸葛亮孔明の兵法書がそのまま後世に伝わっていたらきっと大ベストセラーになっていたでしょうね。世界のリーダーたちはみんな愛読したのではないでしょうか。しかし知識はあくまで知識です。兵法書はあくまでもマニュアルですから、その場その場の環境に応じて臨機応変に「知識を使える人」が勝つのでしょう。戦場はこれからの時代同様、アクティブ・ラーニングを要求しているのです。みんな、2020年からのセンター試験改変にあわせるだけじゃだめだぞ。国際舞台で知識を使える人になろう!!
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