中国ではその昔、東の果てには扶桑樹が生えているという伝説が語り継がれていました。
東の果ての仙界にある扶桑樹には太陽が10も住んでおり、1つ、世を照らすという役目を終えた太陽が帰ってくると、扶桑樹で力を蓄えていた別の太陽が1つ昇っていく…。太陽に活力を与えるというその不思議な木の存在に遥か昔の中国の人々は思いを馳せたのだとか。実は、扶桑というのは日本の別称。東の果てに浮かぶ小さな島国・日本は、伝説上の存在であると思われていたのです。三国時代に入ってからも、在るんだか無いんだか、存在自体がミステリアスな国だった日本。
しかし、なんとあの孫権が日本を狙っていたとかなんとか!今回は、孫権の日本進出計画について紹介しましょう。
日本が『三国志』から華々しく世界デビュー
『三国志』は、魏書・蜀書・呉書の3つから成り、形式上は魏を正統な王朝としています。
魏書が『三国志』の中で軸の役割を果たしているという点で、魏書は他の書よりも重要であると言えますが、実は、私たち日本人にとっても魏書はとても重要なものなのです。なぜか?それは、我らが日本国が世界デビューを果たした最古の文献だからです!
邪馬台国の女王・卑弥呼が「魏志倭人伝」に載っていたくらいのことは小学校か中学校で習ったなと誰もがなんとなく覚えているでしょう。この「魏志倭人伝」というのは、『三国志』魏書の東夷伝・倭人条の俗称。ここには、邪馬台国や卑弥呼のことだけではなく日本列島全体の様子が記されています。邪馬台国周辺の国や邪馬台国と戦争状態にある国のこと。他にもその風俗や政治制度、国土の様子や農産業、更には、推測される日本の国土の全長も記されているのでした。
曹叡も仙界から使者が来たと思った?
三国時代、日本は弥生時代でしたから、海を渡ったらタイムスリップしたという錯覚に襲われるほど文明の差は大きく開いていました。しかし、蛮族でありながらそこまで野蛮でもなさそうな、東の果ての国の女王という何ともミステリアスな存在から「天子にお目通りし、献上品を捧げたい」という手紙が貢ぎ物と共に送られてきたことにまんざらでもなかった曹叡。
「あなたの住むところから都まではあまりにも遠すぎるから、わざわざ来なくていい。むしろあなたが使者を遣わして贈り物や奴隷を送ってきたというこの忠孝に大変感動している。」と返事をし、金印や銅鏡をはじめとするたくさんの返礼品を卑弥呼に送ったのだそうです。蛮族相手にしては随分厚遇ではありませんか?もしかしたら、「この卑弥呼って奴、扶桑の国の仙女かも!?」なんて思ったのかもしれませんね。
実はその前に孫権が日本進出を企んでいた?
卑弥呼が曹叡の元に使者を出す少し前に、実は孫権が日本を探していたのです。西には蜀、北には魏という強国があった呉は、その力を拡大したいと考えたとき、東に進むしか道がありませんでした。しかし、呉の東と言っても海。海を渡って、あるのかないのかわからない陸を探し、いるのかいないのかわからない人を求めるとは…。
衛温・諸葛直の2人の将軍に1万の兵を与え、当時夷州、亶州と呼ばれていたらしい、台湾と日本を探しに行かせたのでした。2人の将軍は夷州にたどり着き、数千人の奴隷を連れ帰ります。ところが、孫権にとって重要だったのは、亶州、すなわち日本にたどり着くことの方だったのです。
神風が吹いた?日本到達ならず…
台湾と思われる夷州にはたどり着くことができ、奴隷も手に入れることができた衛温・諸葛直でしたが、その更に東にある日本を見つけることは叶いませんでした。さらに悲しいことには、亶州を探して彷徨っている間に、孫権から預かった兵のほとんどを失ってしまいます。
長江くらいはスイスイだったかもしれませんが、当時の船では流石に云百kmの航海は難しかったのかもしれません。船に問題が無かったとしても、神風に阻まれてしまったのかもしれません。神風とはモンスーン、つまり台風ですね。孫権は亶州までたどり着けず、兵のほとんどを無駄死にさせたということで衛温・諸葛直に死を賜ったのでした。
実は不老不死の仙薬が欲しかった?
それにしても、衛温・諸葛直を処刑する必要はあったのでしょうか?ちゃんと奴隷をゲットしたのに! と思った人も多いはず。なぜ、孫権は2人が亶州を見つけられなかったことにそれほどまで腹を立てたのでしょうか。孫権は老いが、死が、怖くなっていたのかもしれません。
曹操も劉備も、かつてのライバルたちには先立たれていた孫権。自らの命数が気になり始めてもおかしくはないはず。
実は、あの秦の始皇帝も不死の妙薬を求めて亶州に使者を送ったという話が伝わっています。始皇帝の使者は結局亶州に居ついて帰らなかったそうですが…。日本という仙界の薬に一縷の望みをかけた孫権。その期待の大きさは想像以上のものだったのでしょうね。
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