古今東西、継母による継子いじめの物語は数多く存在します。
その中でも最も有名なものといえばシンデレラでしょうか。
シンデレラは継母どころかその連れ子である2人の姉にもいじめられ、
ボロボロの服を着せられて毎日毎日奴隷のようにこき使われていました。
ところが、そんな彼女を哀れに思った魔法使いの計らいで舞踏会に出かけることになり、
そこで王子様に見初められて楽しいひと時を過ごします。
しかし、夜中の12時の時を告げる鐘が鳴る前に家に帰らなければならないという
魔法使いとの約束を思い出したシンデレラは、
ガラスの靴を片方落としたのにも気づかないほど慌てて城から出ていったのでした。
美しいシンデレラが忘れられない王子様は、
ガラスの靴の持ち主を探して国中を探し回ります。
そしてついにシンデレラが探し当てられ、
シンデレラは王子様と幸せに暮らすことになったのでした。
女の子なら誰もが夢見る幸せなこの物語ですが、
ちょっと心が汚れてしまった大人になって読み返してみると、
「継母に天誅とか制裁とかは無いのか」と何だか物足りなく感じちゃいませんか?
ほら、『落窪物語』みたいにもっとやれよ!
確かに復讐もいいけれど、
もっとスッキリする終わり方だってありませんか?
継母が改心するというハッピーエンドです。
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涙を誘う少年・閔子騫の孝行物語
後に孔子の弟子として名を馳せる少年・閔子騫は幼い頃に母を失い、
しばらくは父と共に男同士身を寄せ合いながら慎ましく暮らしていました。
ところが、父がある女性と結婚することになります。
その女性は既に2人の子どもを抱えていました。
母親だけではなく2人の弟までできたと閔子騫は喜びましたが、
継母の方は閔子騫のことを良く思っていませんでした。
継母は閔子騫につらく当たり、
寒い冬が訪れると連れ子2人には綿を入れたモコモコの着物を与えたのに、
閔子騫には枯れた葦を入れたスカスカの着物しか与えませんでした。
閔子騫はその着物を羽織りましたが、
凍てつくような寒さに体が自ずと震え、
歯がガチガチと鳴っていました。
閔子騫の父はその様子を見て流石に頭にきたらしく、
継母に強く離婚を迫りました。
ところが、これに猛反対したのは虐待されていた閔子騫だったのです。
「母が居なくなってしまっては3人の子が凍えてしまいます!
私だけが凍えていれば弟たちは凍えずに済みますから、
どうか母を追い出すようなことはおやめください!」
閔子騫のこの言葉を聞いた継母は、
今まで自分が閔子騫にしてきたことを悔い改め、
以後閔子騫も実の子と同じようにかわいがったのでした。
慎ましく物静かだが、言うことは言う閔子騫
自分に辛く当たってきた継母を恨むこともせず、
むしろその窮地を救って見せた孝行者の閔子騫ですが、
やはりあの孔子にも孝行者として一目置かれる存在でした。
閔子騫は孔子のそばにいるとき、
それを他人に誇るような態度をとるようなことはなく、
慎ましく静かに付き従っており、
彼と一緒にいるときに孔子はとても楽しそうだったといいます。
また、魯で主君の蔵が新しく建造された際に
閔子騫が「わざわざ造り替えなくても、昔のままでよかったのに…」
とポツリと呟いたということを耳にした孔子は
「あの閔子騫は基本だんまり屋だけれど、たまに話す言葉はどれも的を射ている!」
と大絶賛。(『論語』先進篇)
他にも、閔子騫が季孫に費という小さな町の取締役になってほしいと頼まれた際には、
その使者に「わたしのためにうまく断ってください」と伝えてスッパリ断っています。
その上、「またそのようなすすめを受けたら、私は隣の斉に亡命します」と宣言。
言葉は少なくもの静かな閔子騫ですが、
心の内には強い意志を秘めていたことを感じさせますね。
三国志ライターchopsticksの独り言
自分が一番辛い思いをしただろうに、
自分をいじめた継母をかばった閔子騫。
彼はもしかしたら、
継母の立場故の弱さや苦悩を理解し、
自分がストレスのはけ口になることで継母を救おうと
常々考えていたのかもしれません。
しかし、閔子騫の父が継母の所業に怒り狂う心を持っていなければ、
閔子騫の胸に継母を思いやる心など育たなかったことでしょう。
元々父が閔子騫を深く愛していたからこそ
閔子騫の心にも継母を思いやる愛が育ち、
最後にはその愛で継母の冷たい心を溶かすことができたのではないでしょうか。
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