黒羊丘の戦いでは、離眼勢に対し故郷を蹂躙すると脅迫して撤退させ丘を攻略するのに最大の功績を挙げた桓騎。しかし得意絶頂になる桓騎に対し、李牧と慶舎は桓騎の弱点を察知していました。
素人考えでも野盗の群れである桓騎軍は利益で釣る以外に結束力が弱く、戦況が不利になるとバラバラになる弱点があるように感じましたが、実際に桓騎軍が黒羊丘の戦いでそのままズバリな弱点を晒していたのをお気づきでしょうか?今回は、漫画の中で余りにも堂々と公開された桓騎軍の弱点について解説します。
この記事の目次
キングダム450話で堂々とやっていた「火兎の笛」こそが弱点
李牧や慶舎が見つけた桓騎の弱点は、キングダム450話で堂々と使われた火兎の笛です。
少しあらすじを説明すると、本能型の将軍である慶舎は、黒羊丘を制圧しようとする桓騎軍の頭と尻尾を分断する為、森林を利用して雷土隊とゼノウ隊を包囲し、蜘蛛の巣に掛けるようにジワジワと攻め潰そうとしていたのです。
慶舎の目論見は桓騎でも予想外であり、雷土も、「お頭がこんなにキレイにはめられたのは、初めてだと口にします。しかし、ここで慶舎も岳嬰も予想だにしない出来事が起こります。それは雷土がゼノウに対して、火兎の笛を吹けと言った事でした。
漫画の中の説明では、火兎の笛の意味は「絶対絶命」、あるいは「完全包囲」であり隊ごとの伝令や号令は一切不要で、全員が野盗時代に戻り、脱兎のごとくその場から逃げ去るです。笛が吹かれた瞬間に桓騎軍は、軍ではなくなり、ただの野盗として味方を踏み殺しても、ひたすらに逃げのびる闘争集団と化すのです。
これを見て岳嬰は素人丸出しの桓騎軍の逃げっぷりをあざ笑いますが、将も兵もない逃げっぷりには殿もなく、結局、雷土もゼノウも殺し損ねています。桓騎も本陣で火兎の笛を聞き、「なんだかんだで、あの逃げ方が一番助かる」とまんざらでもなさそうでした。
火兎の笛は部下が勝手に行うリセットである
さて、これだけ説明すると、皆さんは火兎の笛のどこが桓騎の弱点なのかと不思議に思うかも知れません。ちゃんと軍団を温存し、慶舎の包囲からも逃げきれたじゃないか、どこが問題なんだ?そんな風に仰る方もいるでしょう。
でも、問題は大アリなんです。何故なら、この火兎の笛はお頭である桓騎に断りなく、雷土とゼノウが相談して決めた事なんです。これがどういう事かと言うと桓騎の命令があろうとなかろうと、雷土やゼノウが、戦場で「絶体絶命」「完全包囲」と感じれば、吹く事が可能です。
部下の判断で、戦争を勝手にリセットできる権利を与えている。これが桓騎の最大の弱点です。実は、桓騎が李牧に敗れる宜安の戦いは、李牧によって桓騎が宜安に貯めていた兵糧が奪われて負ける事になっているのです。
兵糧を奪われる。それは、今の鄴と同じであり絶体絶命です。そして、それを絶体絶命と感じる部下がいた場合、火兎の笛を吹かない保障はありません。笛を吹いた瞬間、それが例え何万人いようと桓騎軍は野盗に戻り桓騎を放置して、我先に逃亡してしまう事になります。秦に対しても桓騎に対しても忠誠心が無い、欲望にのみ正直な桓騎軍の当然の最期です。
それについて、桓騎がどう思おうと、一人も部下がいないのでは秦は敗北したも同然、もちろん桓騎も死にたくないなら逃げるしかありません。こんな大敗をしてそのまま秦に戻れば処刑を免れる事は出来ないので、どこかに逃亡してしまうと思います。
摩論が桓騎を見下ろす意味深な一コマ
今回の鄴攻略戦には、意味深なコマがあります。それは桓騎軍の参謀である摩論が騎乗したまま桓騎を見下ろし、「一つだけ約束して下さい。兵糧が残り一日分になった時点で鄴の包囲を解いて、さっさと退散すると」と冷たい目で言っているシーンです。
部下でありながら、ほとんど脅迫するような摩論の一言、それに対し桓騎は余裕たっぷりで返していますが、この時は、すでに王翦が伏兵を鄴に忍ばせている事が分かっていたから余裕があっただけです。
或いは、宜安の戦いで火兎の笛を吹くのは、この秦より桓騎より自分の栄達というドライな考えを持つ摩論なのかも知れません。その時に、この鄴での一コマが桓騎には思い起こされるのではないかと推測します。
そして反射的に摩論を斬る桓騎ですが、それを見て余計に桓騎の部下は逃げていき、桓騎は自分の無力さを思い知るわけです。李牧は利益のためだけに無辜の民まで殺す桓騎を洒落にならない程に嫌っていますから、それはそれはもう徹底的に惨く追い詰めて、言葉でなぶり殺すのではないかと考えます。
慶舎が死んでも崩壊しなかった趙軍と対照的
振り返ってみると黒羊丘の戦いでは、桓騎軍と慶舎軍は対照的でした。不利と思えば、火兎の笛を吹いて逃げ散った雷土やゼノウと違い、慶舎軍は慶舎が信に討たれても、総大将の死を隠し、それぞれの将が慶舎の遺志を継ごうと頑張っていました。紀彗の軍勢も退却せずに頑張っていましたが、桓騎の計略で離眼城に危機が迫った為に、涙をのんで丘を明け渡して退却しています。
何から何まで、私的な利益優先の桓騎軍と比べ、趙は同胞愛や国家に対する義務感で戦う崇高な感じがしました。そういえば、桓騎は妙なプライドを見せて自分の命よりも国家への忠誠を優先する、例えば魏の白亀西のような人物に容赦がありませんでしたが、それもそもそも、自分には人望がなく、人に忠誠を誓わせるような芸当が出来ない事に対する嫉妬か、あるいは、過去にそのような愛国心に煮え湯をのまされた事に対する嫌悪感ではないかとも考えられますね。
キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言
以上、あまりにもバレバレな桓騎の弱点について解説してみました。
どう考えても、桓騎が敗れ去る時には、部下の誰かが鳴らした火兎の笛が戦場に敗北の象徴として鳴り響くと個人的には確信しています。
李牧は、龐煖に対してもハッキリとバカと言い切ってしまうなど、三国志の諸葛孔明にも劣らぬ毒舌キャラなので、どんな言葉攻めで桓騎のプライドをズタズタにするのか、今から楽しみです。
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