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曹植、白粉(おしろい)を塗り、上半身裸で鉢巻を巻き、五椎鍛を踊る♪
次に曹植は、上半身裸になると、白粉を塗りたくり、頭には鉢巻を巻き、音頭を取りながら、五椎鍛(ごすいだん)という体操の一種を、異国風に踊るというわけのわからない行動に出ます。
さらに、呆然としている邯鄲淳の前で、いきなり鍛冶屋の真似をしたかと思えば、次にはお手玉を持ってきて大道芸人のようにジャグリングを行い、次には、剣を片手に剣舞を披露しつつ、役者のやるような小噺をしています。
※以上の事は、『三国志』「魏書」巻21 「王粲伝附」抄にあります。
傅粉、遂科頭拍袒、胡舞五椎鍛、跳丸撃劍、誦俳優小説數千言訖
曹植、次は一転、大真面目に・・
一通り、剣舞で踊り狂った後、曹植は邯鄲淳に向き直り、
「先生!いかがでしょうか?」と微笑んで言います。
ですが、なおも邯鄲淳は黙っています。まあ、いきなり体を洗うわ、お手玉をするわ、体操を踊るわ、剣舞を披露されれば、黙る以外にないでしょうけどね。それを見ると曹植はいそいそと、衣服を整えて正座しました。
そうして、さっきまでの事など何も無かったように、まずは天地創造の話をし、次に歴代の聖人君子、聖賢の優劣の話をし、次に文学論をぶち、現在の政治の話をして、最後に兵法戦術の話を繰り広げます。もちろん、曹植一人で延々と喋り続け、邯鄲淳は沈黙です。
曹植、喋り終わると、御馳走を準備して邯鄲淳をもてなす
一通り、喋り終わると、曹植は、手を叩いて御馳走を用意しました。
曹植「先生、本日はお付き合い頂き、有難う御座いました」
なんだか、曹植の独演会を見て帰ったような邯鄲淳ですが、彼は、その後、友人に曹植の印象をこう語りました。
「曹植殿は、素晴らしい人物だ、まさに天人というべし」
原文: 對其所知歎植之材、謂之 天人
なんと、邯鄲淳、曹植の独演会を気に入り、彼を天人、「天が遣わした才能」と最大限の賛辞を送ったのです。
邯鄲淳の話を聞いた、曹操、曹植を後継者に考え始める
さて、邯鄲淳の話は、曹操の耳にまで到達します。邯鄲淳が、曹植を天人と称えたと聞いた曹操は驚き、
曹操「邯鄲淳を驚かせるとは、これは、曹丕ばかりでなく曹植を、後継者にする事も考えなくてはならんかも知れぬ」
と曹植を後継者候補として本気で考え始めたと言われています。
三国志ライターkawausoの独り言
実は邯鄲淳は、儒者にありがちなカチカチの石頭ではなく、当時の笑い話を集めた、笑林を編纂するなど、思考が柔軟な人物でした。おそらく、曹植は、邯鄲淳のそういう大らかさを見越して、自分の出来る全ての事をやって見せたのでしょう。本日も三国志の話題を御馳走様でした。