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【はじめてのスキッパーキ】船乗り犬?それとも牧羊犬?意外に謎の多い犬種だった?【第2話】

2016年4月1日


 

スキッパーキ

 

さて、「はじめてのスキッパーキ」第2回。

今回はスキッパーキという犬種について、更に深く紹介していきましょう。

調べてみると……実は謎の多い犬種であることがわかります。

前回記事:【はじめてのスキッパーキ】スキッパーキって、どんな犬なの?【第1話】

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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ところでベルギー原産で有名な犬と言えば?

スキッパーキ

 

スキッパーキはベルギー原産の犬、ということは前回もお話しした通りです。

さて、ベルギーというと皆さんは何を連想しますか?

 

ベルギーワッフル?

それともトラピストビールでしょうか?

 

実はベルギー原産とされる犬の中には、日本人の多くの人が知っている、

有名な犬がいるのですが、なんのことだか、おわかりになりますか?

 

それは『フランダースの犬』に登場する、パトラッシュです。

 

イギリスの女流作家ウィーダの小説『フランダースの犬』は、

日本ではアニメ化されて有名ですね。

40年以上も前の作品ですが、いまだに『懐かしのアニメベスト◯◯』

みたいな番組で紹介されることが多いので、平成生まれの人でも

ご存知の方は多いのではないでしょうか?

 

原作小説がイギリス人作家の作品だったため、物語の舞台となった

ベルギーでは実はあまりその名を知られていませんでしたが、

日本人観光客があまりに『フランダースの犬』の話をするので、

いわば逆輸入される形で現地での知名度が上がり、銅像まで建てられた

……というのは、わりと良く知られたトリビアでしょう。

 

じゃあ、パトラッシュのモデルがスキッパーキなの?

スキッパーキ

 

……残念ながらそうではないんですね。

 

パトラッシュのモデルになったのは、

ベルギーとフランスの国境地帯のフランドル地方(フランダース)

原産のブービエ・デ・フランダースだと言われています。

 

Bouvier des Flandres wiki

(Photo by wikipedia)

 

名前の“ブービエ”とは『牛追い犬』という意味で、

体格のがっしりとした大型犬です。

荷馬車曳きとして使役されていた記録もあり、『フランダースの犬』の

劇中でもパトラッシュがミルク缶を乗せた荷馬車を曳くシーンがあったことを

考えると、どうやらこれが正解のようです。

 

まあ、体重7キロ前後のスキッパーキじゃ、

とても荷馬車なんて曳けないんですけどね。

 

『スキッパーキ』という名前について

スキッパーキ

 

スキッパーキという名前はベルギーからフランス北東部にかけて

使用されるフラマン語が語源で、「Schipperke」と書きます。

 

この犬種がSchipperkeと呼ばれるようになったのは19世紀末のこと。

もともと船の番犬をすることが多かったと言われていたことから、

ドイツ語で『小さな船長』を意味する言葉を元に名付けられたと、

長いこと言われてきました。日本でもこの考え方が主流でした。

 

一方、20世紀に入ると、ベルギー北部のフランデレン地方の方言で

「小さな羊飼い」=牧羊犬を意味する言葉を語源とするという説が

ベルギー本国で一般化、近年では日本でも、こちらの説が正しいと

考える方向性にあるようです。

 

はたして、スキッパーキは船乗り犬だったのか?

それとも牧羊犬だったのでしょうか?

 

スキッパーキの先祖はルーベルナールという牧羊犬だった

スキッパーキ
文献上のスキッパーキに関する確かな記録は17世紀頃のものですが、

この犬種自体はそれよりも古い時代から存在していました。

 

スキッパーキの祖先と言われているのはルーベルナールという

牧羊犬だったとされています。現代ではすでに絶滅してしますが、

オオカミに似た容貌の中型犬であったとされています。

 

実はスキッパーキ同様、このルーベルナールを先祖とするとされる

他の犬種があります。

 

それはベルジャン・シェパード・ドッグ・グローネンダール

(通称グローネンダール)という大型犬なのですが……。

 

European Groenendael male wiki

(Photo by wikipedia)

 

どうですか? この容貌。

スキッパーキがそのまま大きくなったようにしか見えません。

この2犬種が同じ祖先の血を引いているのは間違いないでしょう。

 

推測:スキッパーキは牧羊犬だった。

スキッパーキ

 

スキッパーキとグローネンダールの先祖だったルーベルナールは

牧羊犬とされています。そして、グローネンダールも19世紀までは

牧羊犬として使役されていました。

 

このことから考えれば、スキッパーキもまた、牧羊犬として使役される

犬種だったと考えるのが自然ではないでしょうか?

 

ちなみに、「スキッパーキ=船の番犬」説はどこから来たかというと、

どうやらオランダで実際にはしけなどの船の番犬として飼われることの

多かったというキースホンド、という犬種と勘違いされた、

というのが正解のようですね。

 

Keeshond wiki

(Photo by wikipedia)

 

スキッパーキライター 石川克世の独り言

石川克世

まだまだ謎の多い犬、スキッパーキ。

次回はスキッパーキの断尾にまつわる謎を追求します。

そこから、あの日本でも大人気の犬種との、意外な繋がりが……?

 

次回記事:【はじめてのスキッパーキ】どうして?スキッパーキのしっぽ(断尾)の話【第3話】

 

 

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石川克世

石川克世

三国志にハマったのは、高校時代に吉川英治の小説を読んだことがきっかけでした。最初のうちは蜀(特に関羽雲長)のファンでしたが、次第に曹操孟徳に入れ込むように。 三国志ばかりではなく、春秋戦国時代に興味を持って海音寺潮五郎の小説『孫子』を読んだり、 兵法書(『孫子』や『六韜』)や諸子百家(老荘の思想)などにも無節操に手を出しました。 好きな歴史人物: 曹操孟徳 織田信長 何か一言: 温故知新。 過去を知ることは、個人や国家の別なく、 現在を知り、そして未来を知ることであると思います。

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