楚漢戦争終了時、長城の外では匈奴が領地を伸ばしておりました。
この時の匈奴の王様を冒頓単于(ぼくとつぜんう)といいます。
彼は異民族の王にしては土地に執着し、ある会議の時に「地は国の本なり」と言う名言を
残しております。
彼はなぜこのような名言を述べたのでしょうか。
前回記事:冒頓単于(ぼくとつぜんう)とはどんな人?漢帝国の宿敵で匈奴の名君Part.1
最大の版図を広げた匈奴の王様
始皇帝は北方の異民族からの攻撃を防ぐために、将軍である蒙恬に長城を築城させます。
これが現在に残る万里の長城の原型です。
この長城のおかげで北方の異民族は、
漢の領土へ攻撃を仕掛けることが簡単にできなくなくなります
しかし冒頓単于は果敢に長城を超えて攻撃を仕掛けて、漢の内部に領土を拡大。
さらに彼は他の異民族の領土を奪い、
匈奴の歴史の中で最大級の領土を保有することになった
英雄的な王・冒頓単于ですが、彼が王へ就任した時の匈奴の領地は小さく、
他の異民族から馬鹿にされている時期もありました。
東胡の国から使者が来る
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冒頓単于が匈奴の王に就任したとき、
匈奴より大きな領土を持つ東胡の王様から使者がやってきます。
この使者は冒頓単于へ「あなたの国には千里の馬があるそうですね。
ぜひ私にその馬を譲って欲しいのですが、いいでしょうか。」とねだってきます。
単于の家臣は猛反対しますが、
彼は家臣の反対を聞き流して東胡に千里の馬を譲ってしまいます。
二度目の使者
東胡は再び匈奴へ使者を送り、「君の所には美しい后がいるそうだね。
私の国へその后を譲ってくれないか。」と言ってきます。
この時も匈奴の家臣達は激怒し「王よ。后を譲れとはこちらを舐めきっていますぞ。
絶対に渡してはなりません」と言って激怒しながら反対します。
だが冒頓単于は家臣をなだめ「后ぐらいあげてもいいではないか」と言って彼らを宥めて、
后を東胡へ嫁がせてしまいます。
三度目の東胡の使者
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三度東胡の使者が匈奴へとやってきます。
今回の目的は「君の国と我が国の間に空白地帯が横たわっているが、
この空白地帯を我が国の物としたいのだが、承知してくれるよね」と述べてきます。
冒頓単于は適当に使者をあしらってから東胡の要件に対してどのように対応するべきかを
考える会議を開きます。
この会議である家臣が「あの空白地帯には草さえ生えない不毛地帯です。
あの土地を上げたとしてもこちらに痛手はないので、上げてしまえばよろしいのではないですか。」
と東胡の使者の申し出を受けるように進言します。
この進言を聞いた冒頓単于は激怒します。
「地は国の本なり」BY冒頓単于
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冒頓単于は東胡の申し出を受けるように行った家臣に対して
「バカ野郎。地は国の本なり。あげるわけにはいかん!!」と激怒しながら言った後、
賛成意見を述べた家臣を全員処刑します。
その後彼は全軍に東胡攻撃を命じて、自ら軍勢を率いて出陣。
そして見事東胡を攻略して匈奴の領土を広げることに成功します。
前漢ライター黒田レンの独り言
冒頓単于が発した「地は国の本なり」の意味は、国の根幹は土地であると言う意味です。
この言葉に従って漢の領土へ侵入して、領土を拡大してその領土をしっかりと保全します。
彼が「地は国の本なり」なりの基本方針をしっかりと遵守していたことにより、
匈奴の領土は数十年以上に渡って最大勢力のまま保全することができたのでしょう。
しかし匈奴の最大の勢力も武帝の時代になると大きく変化することになります。
彼は平民出身の衛青(えいせい)を鍛え上げ、彼を匈奴討伐軍の将軍に任命。
彼が将軍となると漢にある匈奴の領地を奪い、
霍去病(かくきょへい)が現れることで、匈奴を長城以北へ追い返すことに成功します。
だが二人の将軍が出現するまで、漢の中に領土を保つことができたのは
冒頓単于のこの名言をしっかりと歴代の王様が守っていたことによるのではないのでしょうか。
「今回の匈奴のお話はこれでおしまいにゃ。
次回もまたはじめての三国志でお会いしましょう。
それじゃあまたにゃ~。」
—三国志を彩どる異民族が満載!—
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