彼女は元々、袁熙(えんき)の奥さんだったのですが、
袁尚の本拠地である鄴(ぎょう)が曹操軍に奪われた時に
曹丕の奥さんとして迎えられることになります。
彼女には色々と真心あふれたエピソードがあり、
今回は甄氏の真心あふれるエピソードをいくつかご紹介しましょう。
この記事の目次
曹操の奥さんが関中十部連合軍討伐戦に従軍
曹操(そうそう)は関中の豪族達を討伐するために出撃しますが、
この戦に正妻である卞皇后を伴っていきます。
曹操は命を狙われる危ない時もありましたが、関中にいた豪族連合を討伐することに成功します。
だが卞皇后はこの戦に従軍したことがきっかけで体調を崩してしまいます。
甄氏は当時曹丕と一緒に鄴城で留守番をしていたのですが、
卞皇后のお見舞いに行くことができませんでした。
甄氏のほっこりエピソードその1:卞皇后を心配して涙を流す
甄氏は卞皇后に可愛がられていたこともあり彼女に心を尽くして仕えておりました。
そんな甄氏は卞皇后のお見舞いに行くことができないため心配で一日中泣いていたそうです。
卞皇后が回復したと伝えられても信じることができず
「義母(ははうえ)様はご病気になられるといつも回復するまでに時間がかかっております。
ですからそんなに早くご病気が回復することなどありえません。」と信じることができませんでした。
卞皇后から「私の病気は治りました。あなたに心配をかけてしまって申し訳ないわ。
もうすっかり良くなったから心配しないでね」と手紙をもらってやっと彼女は泣くのをやめたそうです。
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鄴に来た時に再び涙を流す
卞皇后は病気が治ってから甄氏がいる鄴へ遊びに来ます。
この時甄氏は彼女の顔を見るなり再び泣いてしまいます。
この様子を見た卞皇后は「ごめんね。心配かけてしまって。
でもあの時は慣れない戦場へ行ったから疲れが出てしまったのよ。
すぐによくなってこのとおり元気だからそんなに泣かないの」と言って彼女の心配を取り払います。
その後甄氏と色々な事を話してから自らの宿泊地に帰ると侍女に
「あの嫁は本当にいい子だ事。」と言って甄氏をベタ褒めしたそうです。
甄氏のほっこりエピソードその2:側室を庇う甄氏
甄氏は曹丕に気に入られておりましたが曹丕に可愛がられるとつつしみ深く振る舞います。
彼女は曹丕の側室達の中で曹丕に可愛がられている側室には
「もっと曹丕様に可愛がられなさい」と応援。
また曹丕からあんまり可愛がられていない側室には慰めてあげて、
どのようにしたら曹丕に可愛がられることができるのかアドバイスをしたりします。
後宮ではその国の君主の子供を産むことができれば、
彼女達の地位は向上して行くため、君主から可愛がられるようにするための争いがあります。
また可愛がられている側室などはすぐに追い落とすような事をして陰湿な場所でしたが、
甄氏はそんな事は一切せず心に余裕を持っておりました。
そんな彼女はある日側室の一人である任氏(じんし)が追放されることを知ります。
すると彼女はすぐに曹丕の元へ行き「任氏は名家出身であり、
私よりも美しく徳を持っている女性ですから追放を取りやめて頂けませんか」と懇願します。
曹丕は甄氏へ「あいつはすぐにキレるし。俺を怒らせるから追い出すのだ」と述べます。
甄氏は曹丕の任氏追放の理由を聞きますが、
納得しないで泣きながら追放を止めるようにと曹丕に再度説得。
だが曹丕は甄氏の涙を見ても任氏追放を取りやめる事をせずに追放してしまいます。
甄氏の相手を思いやる真心を持った女性であったことは上記のエピソードで
明らかなのではないのでしょうか。
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三国志ライター黒田レンの独り言
甄氏はその後曹丕に殺害されてしまいます。
そして彼は側室を皇后に擁立することになるのですが彼女のような相手の気持ちを忖度して、
真心がこもっている女性は三国時代には中々いないのではないのでしょうか。
あのような殺伐とした世の中で甄氏のような真心を持った女性を見つけることは至難であり、
現在でも男女問わず中々他人を思いやる気持ちを持った人は多くいないように思いますが、
皆様はどのように思いますか、
参考文献 ちくま文芸文庫 正史三国志魏書1 今鷹真・井波律子著など
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