キングダムの読者の皆さん、いよいよ明日は2週間ぶりのキングダムの発売日ですね。そんなわけで今回がキングダム休載SPの最期の第四弾!秦王政を悩ませる脱税と徴兵逃れについて解説します。漫画でどんなにイケメン王として描かれても、史実の秦はなかなかの重税国家&国民皆兵国家でした。その過重な負担を逃れようと、秦の庶民はあの手この手を駆使して法の網を掻い潜ろうと奮闘したのです。
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この記事の目次
キングダム休載SPvol4「15歳から65歳に毎年120銭の課税」
秦は王に権力が集中する中央集権体制であり、歳入の柱は人口の大半を占める農民の納める穀物でしたが、秦の巧妙な所はそれを物納ではなく銭によって支払わせた事です。秦の半両銭は国だけが発行できるので、その価値は国によってきめられたのです。
秦では15歳から65歳までの人口に原則一律120銭の人頭税が課されていました。諸説ありますが当時の一銭は現在の500円くらいだそうです。それで換算すると120銭は、6万円という事になります。当時の秦はすでに核家族でしたが、家族が5人いて全員が課税対象なら、30万円を支払わないといけません。
これは、搾り取られる税金の一部でしかなく、労働税である徭役や兵役が課されましたし、女性で15歳から30歳で未婚の人には600銭という未婚税のようなものが課せられました。現在価格だと300万円になり、ベラボーな金額で庶民にはとても払えません。
当時の中国は500年の戦乱状態、産めよ増やせよの世界なので、なるべく早く嫁に行かせて子供をつくらせようと考えたのでしょう。余談ですが、羌瘣や河了貂は年齢から見て、毎年払っているんでしょうね。まあ、ともかく過酷な税金でしたので、秦の人民は何とか税を逃れようと色々と税金逃れや徴兵逃れを画策したのです。
キングダム休載SPvol4「脱税や兵役逃れの方法」
秦王政の時代には、数え年17歳で兵役に就く義務がありました。兵役は二年間で、戦功を立てれば信のように将軍になるチャンスもありましたが、普通人では五体満足で帰って来られれば儲けものという過酷さでしたから、出来れば行きたくないというのが本音でした。
元々120銭の人頭税は、「賦」と言い徴兵に行かない代わりに支払う身代金でしたが、いつの間にやら、全ての人民に課されるようになり、原則兵役は免れない義務に代わっていたのです。当時、年齢や人口の把握の為、秦は詳細な戸籍を作成していましたから、税金や兵役を逃れるには戸籍に登録しない、または年齢を詐称する方法が使われました。
キングダム休載SPvol4「注意書きが出るほど横行した戸籍不正」
秦の時代、戸籍に関する不正が多く存在した事は、それに対する罰則を定めている文書が出土している事で分かります。
①青年に達した者を隠して申告しなかったり、身体障碍者の申告が不正確であれば里老に労務刑を科す。
②老人の年齢ではないのに「老人」としていたり、老人の年齢なのに「老人」としていない場合は、鎧二領を納めなくてはならない。
③里老を申告していないものは鎧一領を納めなくてはいけない。
①は青年を隠して戸籍に申告しなかった事や、健康でも身体障碍者だと偽って兵役を免れたり、税の減免を受ける人民がいた事が分かります。②も65歳以上は課税されない事を狙い、年齢でサバ読みして課税を免れた人への罰則です。逆に老人なのに若く申告したケースとは、法を軽んじて守らない事を問題視したのでしょう。③は、よく分かりませんが戸籍を調べるのが、その村の長老だった事を表していると考えられます。里老に戸籍の責任を持たせる事でいい加減な申告が出来ないようにしたのです。
しかし、それでも、こんな罰則が出来たという事は、戸籍の不正は非常に多かったという事で、秦王政にとっても戸籍問題は、頭痛のタネだった事を意味しています。鎧一領というのは、現在価格で自家用車一台分の価値があったようですから、かなりの高負担ですし未納だと強制労働が科されました。戸籍の不正は、バレると一家離散ものの犯罪だったわけですね。
商人や富豪に課される人頭税は倍額
ちなみに、人頭税ですが、商人には240銭と倍額が課されていて奴隷にも240銭が課せられていました。奴隷は主人の所有物なので当人の課税ではなく、奴隷を保有する主人に支払い義務があったのです。労働力として奴隷を保有できるのは富裕な家だけなので、これも奢侈税の一部でした。特に金持ち優遇ではない秦ですが、成功した商人や富裕層は10万銭レベルで蓄財していたので、2倍程度の人頭税ではビクともしませんでしたが・・
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