大人気春秋戦国時代漫画キングダム、鄴攻めの手柄で大将軍に就任し名前も改めた李信は、以前、貰った土地に巨大な邸宅を建てて、いよいよセレブの仲間入りを果たしました。元の下僕から考えると破格の大出世ですが、実は李信の大出世こそが秦の滅亡に直結していました。今回は秦を栄えさせ、また破滅に追いやった軍功地主を考えます。
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キングダム642話ネタバレ予想「庶民のやる気を引き出す軍功爵制」
元々、李信のような下僕の地位にある人々は社会でのしあがる機会などありませんでした。それが大きく変化したのは、秦の孝公に信任された商鞅が行った改革、商君の変法です。変法の内容には、
①分異の令・・・次男以降は成人すると分家しないといけない。
②什五の制・・・家の付近の五戸と戦争時の協力と相互監視を義務付ける。
③軍功爵制
④県制・・・・・・地方豪族の力を削ぎ、中央から県令を送り込み直轄統治する
上記の4つがありましたが、その中の軍功爵制こそが李信のような下僕にチャイニーズドリームをもたらします。すなわち、戦争に従軍して手柄を立てると、どんな身分でも褒美と爵位が受けられ、逆にどんなに高い地位でも手柄が無いと身分が落ちていきました。今の地位を維持し、出世するまでには、なんとしても戦功を上げるしかないのです。
キングダム642話ネタバレ予想「事務仕事より首を獲るのがポイント高し」
さらに、秦においては従軍して敵の首を獲る事が、ほかのどんな事より優先されました。秦にも役人がいて、毎年査定を受けて昇進していきましたが、それはチマチマしたものであり、従軍して首を獲る方が、遥かにジャンピングチャンスでした。
これなら、役人になるより将軍として戦場に身を投じる事を選ぶ人が出るのも無理からぬ事でした。ましてや、庶民は文盲が普通なので、ここは迷わずに兵士になるのを選ぶのが、当然の選択となります。本来なら誰でも死ぬのは嫌ですがその恐怖を豊かになりたい。出世したいという欲望で上回らせるのが軍功爵制の狙いでした。
キングダム642話ネタバレ予想「最高のステータスを得た軍人」
キングダムの641話では、咸陽の人々が凱旋する飛信隊を熱狂的に迎えるシーンがありましたが、あれは虚構ではありません。それというのも、秦においては軍人の席次は文官さえ超えていて、社会的にも尊敬される存在だったからです。それを裏付ける史料として、紀元前219年に始皇帝が琅邪まで巡幸して石碑を立てた時に記した部下の序列があります。
そこには、
列侯の武城侯王離、列侯の通武侯王賁、倫侯建成侯趙亥、丞相王綰、卿李斯
このような順番で名前が刻まれ、軍功地主である王離や王賁の名前が李斯のような文官のトップよりも上位に来ています。これは、秦においては武人が尊ばれた証で、だからこそ、咸陽での熱狂的な歓迎も嘘ではないのです。
キングダム642話ネタバレ予想「秦の中華統一で軍功地主が爆増」
秦でも、始皇帝が登場する以前には、それほど他国の征服が進まず、軍功地主の数も微々たるものでした。しかし、始皇帝が即位して中華統一事業を開始すると、毎年のように戦争が起こり秦の領地は拡大していきます。
その中で手柄を立てた兵士が軍功地主として爵位と土地を与えられて、秦の勢力下にはいった土地へと移動していくのです。このような軍功地主には、県令として行政官になり役人顔で秦の法律を押し付ける横暴な人物も多くいました。
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