あまり記録が残っていない春秋戦国時代の軍隊編制。
しかし、性悪説で知られる荀子が趙の孝成王、及び臨武君と王者の兵について語り合った議兵篇第十五という問答があり、
そこには、知られざる秦、魏、斉の精兵について書かれているのです。
今回のキングダム雑学では、荀子が説く秦の鋭士、魏の武卒、斉の技撃の精鋭の強弱を紹介しましょう。
この記事の目次
キングダム652話雑学「斉の技撃とは?」
荀子の言では、斉には技撃という精鋭がいました。斉人は武芸を好み、戦場で兵が首を1つ取れば褒美が出ます。しかし、斉では、個人には褒美を出すものの、戦いに勝っても全体には褒美がないようです。そればかりか、実績がない兵士からは罰金を取って、それを手柄を立てた兵士の褒美に宛てるので国は持ち出しがないと言っています。
一時金を与えても、徭役を免除したり税の軽減を与える褒美はないので、小競り合い程度は友好でも、大きな合戦で敵が堅固である時には、組織戦闘が出来ないのでバラバラになり敗北してしまいます。
荀子いわく、これは亡国の兵で市場で日雇いの人夫を集めて戦うのと変わりはないそうです。
キングダム652話雑学「魏の武卒とは?」
魏では、名将呉起が採用した武卒という強兵を基準を定めて登用しています。
これは選抜により兵を選ぶ少数精兵の軍で、鎧と腰当、脛当ての三属の甲で武装し十二石の弩を装備し、50本入りの矢立てを背負い、戈をその上に置き、兜をかぶって剣を帯び、糧食3日分を携帯して一日で昼までに40キロを走れる事が採用の条件です。
厳しいテストにパスした家では、徭役を免除して税を軽減しました。
この武卒は確かに強く、一時期は魏を七国最強へと導きましたが、年老いて役に立たなくなっても特権を奪う事が出来ません。従って魏は、兵が少ない割に軍事費が余分にかかる事になり、広大な土地を持ちながら税収が少なく国力が低下したと荀子は言います。
キングダム652話雑学「秦の鋭士とは?」
最後の秦の鋭士ですが、秦では常に人民を困窮させて過酷に働かせています。人民を権力で脅し、雁字搦めの法律で苦しめ、同時に褒美を与えて手なづけ、刑罰で圧迫し他の事を考えられなくしていきます。そして、人民に対し、お上から利益を得る為には、戦争によるしかないと思わせます。
最初に苦しめて逃げ道を失くし、次にこうすれば儲かると甘く囁き、戦場で手柄を立てれば必ず褒美があると利で釣る事で、喜び勇んで戦場に向かうように急き立て、敵の首を5つ取ったら故郷の五家を従えさせる特権を与えていました。
これが兵を最も強くして長期的に国を治め、結果、土地を奪い取り税収が上る事に繋がったと荀子は説きます。秦が孝公、恵王、武王、昭王の4代において勝ち続けたのは偶然ではなく道理でした。
キングダム652話雑学「三国で一番強いのは秦だが…」
その後、荀子は3国の兵士を比較して、一番弱いのが斉の技撃、二番目が魏の武卒、そして一番強いのが秦の鋭士だと趙王に説明します。しかし、だから秦が最強というのではなく、そんな秦の鋭士でも覇者になった斉の桓公や晋の文公の整った軍隊には勝てないとします。
さらに、そんな覇者の軍勢でも殷の湯王や周の武王の仁義の軍には敵わないとし、石に消し炭をぶつけるように砕けてしまうでしょうと断じているのです。
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