今回は宦官のお話をさせて頂きます。その前に皆様は宦官に付いてある噂を聞いたことはないでしょうか?
「宦官になると顔つきが変わる」
宦官になると、顔つきが変わり、見た目が女性的になる、というのは良く聞きますね。男性ホルモンの分泌が影響していると言われていますが、これはどこまで本当の話なのでしょうか?また「宦官は臭い(臭かった)!」と言われていますが、これはどういう意味なのでしょうか。今回はこの両方に付いて、とある症例を紹介しながら見ていきたいと思います。
この記事の目次
宦官が宦官になるまで~生命の危険とトイレ~
さてまずは宦官ができあがるまで。宦官となるには刑罰であったり、自ら志願したりと様々ですが、基本的に宦官になるには手術が行われます。簡単に言うと男性器を切除します。切除は男性器全てを切除、睾丸部分を切除、睾丸部分以外を切除する……など次代が進むにつれ色々な方法があったようですが、主に男性器全てが切除されていたようです。そしてここで問題になるのが、トイレです。
トイレに行けない宦官は、そのまま・・・
男性と女性の尿道は、男性が15㎝から20㎝、女性が3㎝から4㎝となります。これは男性器と女性器の違いが長さに現れているのですね。で、宦官の場合は男性器を切除する訳ですから、当然ながら尿道も切除されています。
時代が進むと男性器から尿道を取り除き、体内に埋め戻して繋げる方法も取られたようですが……そうでない時代は、恐らく尿道の処置が甘く、排尿ができない事で命を落としてしまう宦官が多くいたと言います。手術も命がけならば、それ以降もまた命がけであったのです。
宦官はどうして「臭い」と言われたのか?宦官の「臭い」理由
ここでもう一度振り返りますが、宦官は男性器を切除します。そうすることで尿道が以前より短くなるので、トイレの感覚が掴みにくくなり、漏らしやすくなるそうです。このため宦官は良くトイレに行くため、彼らは「臭い」と言われるようになった……だけではなく。
宦官の尿道は以前と位置が変わり、尿が排出される穴が上向きになって排尿の「方向」が掴みにくく、トイレや来ている衣服を良く汚し、更にはトイレが近いことで「粗相」をしやすくなったため、宦官そのものが臭かった、というのです。排尿を我慢するのに使われる筋肉は括約筋、と言いますが、排尿する場所自体が変わってしまう宦官は、それを我慢することがしにくかったのでしょう。そういう要素も踏まえてやはり宦官という役目は「屈辱」なお役目であったこともあり、それ自体が刑罰であったことが良く分かるかと思います。
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宦官は顔つきが変化していた?宦官になると顔つきが変わるのはホント?
ではもう一つ「宦官になると顔つきが変わる」と言われているお話もしましょう。良く宦官になると顔つきが変わる、体が女性的になる、性格も変化していく、と言われます。身体の線が細くなったり、ヒゲが生えなくなったり、体が丸みを帯びるようになったり、時には乳房に膨らみが出てくるなど、身体的な特徴が出てくる……これは、果たして本当でしょうか?
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共通認識ではあったけれど、確実ではなかった「宦官の顔つき」
この答えになる要素として、三国志の「袁紹の宦官皆殺し」があります。袁紹は宮廷に乗り込み宦官たちを皆殺しにするように命じ、2000人ほど殺されてしまいました。この際に宦官の見分け方として「髭があるかどうか」があったのです。
なので宦官=ヒゲが薄いというのは認識としてあったそうですが、この時の被害者にはヒゲが薄いと言うだけで宦官と思われて殺された、という人物もいたそうです。このため男性たちは着物の前をがばっと広げて「宦官じゃない」アピールをしたと言いますが……まあそれは置いといて。宦官の顔つき、それは全てに共通するものではなく、あくまで身体的特徴、という枠に収まる者であった可能性は否定しきれません。
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どうして宦官となると顔つきが変わるのか、その可能性と理由
さてここでちょっと疑問を一つ。どうして宦官となると顔つきが変わるのか。その理由として挙げられるのが、男性ホルモンの減少にあります。宦官は男性器を取られてしまうので、男性ホルモンの分泌が減る。男性ホルモンによって男性らしさが失われ、その代わりとして女性らしくなるというのですね。しかしこれは本当に有り得るのでしょうか?と、いう所でちょっとした症例についてご紹介させて頂きます。
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「宦官となると顔つきが変わる」その認識は古くからあった!?
類宦官症宦官症という症例があります。これは何らかの脳の以上により、精巣から男性ホルモンの分泌がされない、もしくは少ないために声変わりがなかったり、陰毛やヒゲが生えないなどの、男性化徴候が発現しない症例です。症例の中には精神の不安定なども挙げられており、この症例の原因は不明となっています。
類宦官症とはまた違いますが、この症例を見る限り、後天的な身体及び顔つきが変わる、というのは有り得る範疇ではないかと思われます。同時に宦官のようになる症状と考えると、宦官の顔つき、体つきの変化に対する認識は、古くからあったとも考えられます。歴史の人幕でもある宦官ですが、その陰で失われた命、尊厳、そして苦しみもあったと思うと、中々に苦々しい思いになりますね。
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三国志ライター センのひとりごと
女性と間違うような美しさとなった宦官……となるとやや非現実的かもしれませんが、それでも己の男性としての尊厳を失うことになった宦官。刑罰と言ってしまえばそれまでですし、志願者も多くいた、と言えば自業自得な面もあったかもしれません。それでもやはり振り返って考えると、恐ろしいことでもあったのだと感じました。
更に歴史上、宦官が権力を握った、私腹を肥やしたというイメージもありましたが、調べてみるとその背景は更に深い闇が広がっていることも……本当に、苦い思いです。そのお話はまたどこかで、今回はこれまで。どぼん。
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