三国志演義の「裏ボス」といいますか、「ラスボス」といいますか、もしかしたら「悪役令嬢」ポジションといいますか。圧倒的ヒーローの諸葛亮孔明の行く手を阻む「究極のライバル」といえば、なんといっても司馬懿仲達でしょう。
いや三国志演義上の設定のみならず、最終的には魏でも呉でも蜀でもなく、この司馬懿の一族が天下を統一してしまうわけですから、史実の三国時代を愛する人たちからも、司馬懿は「天下の簒奪者」みたいに嫌われていることでしょう。
その司馬懿と孔明、軍と軍とをぶつけあって何度も対決したわけですが、実際に会って話をしたことは(たぶん)なかったと思われます。
決着は「ことば」で決めよう!夢の公開討論はこうして始まる!
ですが、ここで想像を逞しくしてみましょう。五丈原の合戦で、双方、がっぷりと戦線が膠着していた時、「かくなるうえは、軍事ではなく、議論で勝負しよう!」と思いついた孔明が、司馬懿に、日時を指定して、両軍の兵士たちが見守る中での公開討論会の招待状を送ったら?そしてその挑発に、まんまと司馬懿が乗ってきたとしたら?
武将と武将が矛を交える一騎打ちではなく、軍師タイプの二人が言葉を交える一騎打ち!そんなことが五丈原で実現したら、どんな論戦になったのか!今回はそんな、「夢の公開討論」を、対話篇形式でシミュレーションしてみました!
諸葛亮対司馬懿の激論を対話篇でシミュレーション!
司馬懿「諸葛亮よ!約束通りの時間に来てやったぞ!わしに何か言いたいことがあるそうだな」
諸葛亮「やあやあ司馬懿殿!まさか本当に来てくださるとは思いもしませんでした!双方の武将や兵士が見ているここでぜひ、今日はところん、議論をしましょう!というのも、あなたには、言いたいことがたくさんあるのですから」
司馬懿「言いたいこととはなんだ!言ってみよ!」
諸葛亮「たとえば、以前、贈り物としてお届けした、女モノの着物と髪飾りは、気に入っていただけましたかな」
司馬懿「あ!またそのネタでいじるの?そんなハナシかよ!ふざけるつもりならわしは帰るぞ!」
諸葛亮「あ!待って待って!今のは私の悪ノリでした。反省します!仕切り直して、どちらの主君こそが天下にふさわしいか、を、マジメに討論しましょう!」
司馬懿「ほお?どちらの主君が天下にふさわしいか、とな?そんな議論なら秒で終わりだな」
諸葛亮「と申しますと?」
司馬懿「私が代々仕えてきた魏の曹一族こそが天下にふさわしい!というか、そもそも、魏呉蜀を比較して、もっとも国が豊かなのはどれだ?既に大勢は決しておるのに、無用の戦いを続けている不義は、呉や、蜀にあるのだぞ!」
諸葛亮「呉のことは私も知りませんが」
司馬懿「ま、そりゃそうだが」
諸葛亮「蜀のことについては私が説明すべきですな。ちなみに司馬懿殿は、私の名文、『出師表』を読んだことはありますかな?」
司馬懿「いや?読もうとしたことはあるが、わしは、ああいうウェットな文章は嫌いだ」
諸葛亮「…まあ、今の失礼は許しましょう。あなたにもわかるように説明しますと、私や劉禅様は、漢王朝の復興という先君の意志を継いでおります。それに対してあなたの仕える曹一族は、そもそも漢王朝から帝位を簒奪した不義理の一族」
司馬懿「あー、劉禅か、劉禅ねえ」
諸葛亮「呼び捨てにしないでください」
司馬懿「おぬしは、劉禅が世間からどう呼ばれてるか知っておるのか?」
諸葛亮「しりません」
司馬懿「ウソだな…まあいい。双方の兵士が見ているここでハッキリ言ってやろう。いかに蜀の先代劉備が偉大でも、その倅の劉禅については、みんながビミョーだと言っているぞ。あの倅にはとうてい、天下を治める器量なし、とな」
諸葛亮「そんなこと初耳ですよ?失礼な」
司馬懿「しらばっくれおって。だが考えてみよ!人々は、この戦場にいる兵士たちも含め、戦乱に疲れておる。みんなが求めているのは、血筋のよい皇帝ではなく、天下を治める実力をもった皇帝ではないか?なぁ兵士たち、そうだろ?」
(魏軍からは歓声が、蜀軍からはざわめきの声が溢れる)
諸葛亮「(なんと…我が軍の兵士たちが動揺している…うまく話題を変えねばなりませんね…よし)なるほど司馬懿殿は、血筋や義理よりも、実力のある者が天下を取るべきという考えなのですね?」
司馬懿「いかにも」
諸葛亮「となると、曹操殿や曹丕殿が、漢王朝から皇帝の座を簒奪したのも、彼らが実力者だから、よいことなのだと」
司馬懿「おうおう!やっとイイところを突いてくれたな!いかにも、曹一族は実力ゆえに、皇帝の座を手に入れるにふさわしいのだ」
諸葛亮「なるほど。そこはまあよいとしましょう。でもその理屈でいうと、もし曹一族の後継者に実力の伴わない人物が出た時は、魏の中では、今度は曹一族から帝位を簒奪する謀反人が出てもおかしくないわけですかな?」
司馬懿「な…なんだと?」
諸葛亮「魏って怖い国なのですね!実力の伴わない皇帝は、実力のある部下にいつでもクーデターを喰らいかねない…そんな国が天下を取っても、真の平和は訪れましょうか?」
司馬懿「それは…」
諸葛亮「言われてみれば…なんかあなた自身の過去の行動も怪しく思えてきた」
(今度は魏軍の兵士たちから動揺のざわつきが起こる)
司馬懿「おいやめろ」
諸葛亮「そうだ…そもそもあなたこそ、実は帝位簒奪をひそかに狙っているのかもしれない!あやしい行動ばかり取ってる!」
司馬懿「やめろコラァ!公開討論なんか来るんじゃなかった!もういいよてめえ帰れよ!」」
諸葛亮「あなたこそ帰りなさい!」
司馬懿「なんだこのお」
諸葛亮「お?やりますか?」
姜維「おい!みんな!あの二人を引き離せ!」
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まとめ:二人の猛喧嘩のせいで公開討論は中止
こうして大荒れの喧嘩で終わった公開討論。けっきょく五丈原での合戦が再開となりました。ただし史実との違いとして、司馬懿とガチで取っ組み合いを演じてしまった孔明、頭に血が上りすぎて史実よりも数日早く逝去してしまいましたそうな。
【北伐の真実に迫る】
諸葛孔明の兵法 「三国志」最強の軍師に学ぶ生存戦略・処世訓 / 守屋洋