三国志演義は曹操が悪人として描かれており、劉備が正義の人して描かれている小説です。
そのため曹操=悪人というイメージが現代にまで波及しております。
しかし少しずつではありますが、曹操のイメージが悪役から変化しているのです。
曹操=悪役のイメージを払拭させた近代の人達に今回はスポット当ててみたいと思います。
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魏晋の気風及び文章と薬及び酒の関係by魯迅(ろじん)
曹操の悪役イメージは三国志演義が描かれてから長いこと中華や日本など多くの民衆たちが
信じておりました。
また劉備=善人イメージも三国志演義が発刊されてから、
劉備は悪役・曹操を倒す正義の人であるイメージが定着しておりました。
しかし悪役曹操のイメージを改善する講演を行った人物がおりました。
それは近代中国文学の巨頭である魯迅(ろじん)です。
彼は広東でおこなった「魏晋の気風及び文章と酒及び酒の関係」という講演を行います。
この講演で彼は題名通り、建安七子の文学や何晏(かあん)などの文学者に触れておりますが、
曹操についても彼は触れており、
「曹操と申しますと私達はすぐに「三国志演義」を連想して悪役のイメージを持ってしまいます。
ですが彼を観察する上でこの方法は正しいものではないのです。」と述べております。
当時はまだ三国志演義の影響が大きなかでこのよう発言をするのは、
かなり珍しいことであったのではないかと思います。
また彼はこの講演で「私は曹操のファンとして述べているのではないのですが、
彼の才能には非常に尊敬しているのです。」と述べています。
この講演を聞いた人々は中国の文学の巨頭と言われていた魯迅の曹操評価を聞いて、
多少は曹操のイメージを改善したのではないかと思います。
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近代歴史小説家・陳舜臣も曹操のイメージを変えた立役者
さて魯迅がこのような講演をしてから70年後一人の歴史小説家が本を出版しました。
この本の名前は「秘本三国志(ひほんさんごくし)」です。
この小説を書いた人物こそ曹操のイメージ改善を行った人物であると言われております。
その名を陳舜臣(ちんしゅんしん)と言います。
彼はこの小説で曹操を一切悪役として描いていないばかりか、
劉備が任侠肌をもった人物として描かれており、三国志演義の劉備=善人。曹操=悪役の
イメージを一切払拭した小説でした。
また「秘本三国志」から「曹操 魏の一族」では曹操の家庭内の部分にまで触れている作品で、
後継者争いに敗北した曹植の後日譚の小説まで出ており、
曹操が本当に三国志演義に描かれているような悪役だったのかと
疑問符をつけたくなる物語でありました。
実際にレンはこの小説を高校一年生の時に読んで、非常に驚いた感想があります。
小学生の時に横山氏の「三国志」を読んで三国志が好きになったのですが、
陳舜臣氏が書いたこの「秘本三国志」・「曹操 魏の一族」・
「諸葛孔明」などの三国志の小説を読んで、横山氏が描いていた三国志と全然違うことに驚き、
この小説によって三国志の世界をより深く知ろうと考えさせられた
一冊として現在もこの本を読み返したりしています。
この小説によって曹操の評価はかなりガラリと変わっていくことになり、
現在の三国志関連の小説ではあまり曹操をひどく悪役に仕立て上げている
作品はあまりないのではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
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三国志ライター黒田レンのひとりごと
曹操は魯迅や陳氏のイメージ改善によって次第に彼の悪役イメージが払拭されることになります。
また三国志の漫画でもこの影響は現れているのではないかと考えます。
李氏が原案で王氏が描いた「蒼天航路(そうてんこうろ)」では
三国志演義の曹操とこの蒼天航路の曹操では
全然違う人物に見えてしまうくらいイメージがガラリと変わります。