コミック『キングダム』の作中に登場する人物の中でも、
ひときわその異貌で記憶に残るキャラクター、「ランカイ」。
巨大な猿のような容貌でその巨躯が発揮する破壊力は凄まじく、
成蟜の乱においては主人公の信を圧倒しました。
ランカイは史実に登場する人物ではなく、
あくまでコミックオリジナルのキャラクターと言われますが、
実はそのモデルになった存在が実在したかもしれない、
そんな驚くべき情報が飛び込んできました。
今回の【はじ三ミステリー調査部(HMR)】は
ランカイのモデルに関する秘密を徹底調査いたします。
なんと2300年前の古代中国には動物園が存在していた!?
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この記事の目次
始皇帝・贏政の祖母の墓所から発掘された動物の骨
2004年、中国は西安市郊外で戦国時代末期の巨大な陵墓が
発見・発掘され、2006年に中国政府によってその陵墓が
始皇帝の祖母に当たる「夏大后」の墓所であるということが
中国政府によって公表されました。」
この陵墓からは、ヒスイや金銀などの財宝、彫刻の施された壺や
二台の馬車が副葬品として収められていました。
古代中国においては、高貴な身分の人たちは
その死後も地上と同じ栄華を手にしたいと望み、
死後、その墓に生前に身の回りにあったものを
副葬品として墓に収める習慣がありました。
秦の始皇帝・贏政の墓所からは
実物大の兵士や軍馬などの像……「兵馬俑」で構成される
軍勢が発掘され、あたかも地上世界を再現するかのように
水銀で満たされた川や湖が作られていたことが知られています。
おそらく夏大后の墓所から発掘された副葬品の数々も
彼女が生前と変わらぬ生活をあの世で送るために
供えられたものに違いないでしょう。
そして、財宝などの副葬品と並んで、特に目を引いたのが
墓所の12ヶ所の穴から発掘された、さまざまな種類の
動物の骨でした。
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夏大后の墓所から見つかった“謎のテナガザル”の骨
夏大后の墓所から見つかった動物の骨には、
ツキノワグマやヒョウ、ヤマネコといった大型獣や
ツルなどの鳥類のものが含まれていました。
中でも研究者の関心をひいたのが、
テナガザルのものと思しき骨でした。
発見されたテナガザルの骨は全体としては
現代生息しているテナガザルのものと似ていますが、
頭骨に際立った特徴がありました。
それは異様に発達した顎と巨大な歯です。
研究チームは、現代のテナガザルにはないこの
際立った特徴から、これが未発見・新種の
テナガザルの骨格であると結論づけましたが、
研究者の一人は、それとは別の可能性があることも
指摘しています。
それは、このテナガザルの頭骨の異常が
人間の飼育下にあることによって起きた変化だ、
とする仮説です。
夏太号は動物園を持っていた?
研究者の指摘によれば、
問題のテナガザルは人間の飼育下にあって
野生では食することのない餌を与えられることで
その骨格に変化が起こった可能性があるそうです。
動物の骨格が、その生存環境の影響を受けて
変化するということはありうる現象のようです。
夏大后の墓所から見つかったテナガザルが
未発見の新種であるとするニュースがネットで
話題になったのと同時期、twitterでは
とある魚の骨の写真が話題になっていました。
買った鯛が解体してびっくり鳴門骨の持ち主。聞いてはいたけど初めてみました鳴門骨。鯛の中でも凄まじい激流の中で生き抜き疲労骨折して尚頑張った選ばれし勇者の証らしいので、その激動の鯛生を讃えつつ行き着く先は刺身とあら汁鯛茶漬けです。うめぇ。 pic.twitter.com/AvKAI2f4ox
— じょにぃ (@johnnie_bts) 2018年6月23日
この鯛の骨にできたコブ状の特徴は「鳴門骨」というそうです。
瀬戸内海の鳴門海峡周辺で捕れる鯛に見られる特徴で、
渦潮の激流の中で疲労骨折を繰り返した結果発生するようです。
骨なんてそうそう変化するようには思えませんが
実際には、その生活環境で結構大きく変化するもののようです。
夏大后の墓所から発見されたテナガザルの骨が、
飼育環境にあって変異したものである可能性は十分考えられるでしょう、
また、そう考えることで、同時に発見された
他の動物や鳥類の骨にもある説明がつくことになります。
それは、これらの動物が夏大后がペットとして飼育していた
動物ではないか、という可能性です。
夏大后は珍しい動物を集めて飼育する、動物園のような
施設を持っていたのかもしれません。
前漢の武帝は、咸陽と長安の南に当たる土地に、「上林苑」と呼ばれる
狩猟場兼動物園のような大庭園を整備し、そこでは多種多様な獣が
飼育されていたことが記録されています。
あるいは夏大后が作った動物園が、
この「上林苑」のモデルになったのかもしれませんね。
古代中国人は世界中に進出していた?
2016年、イギリスはロンドンにある、ロンディニウムと呼ばれる
古代ローマ時代の遺跡から2体のアジア人の人骨が発見されたことが
ネット上で話題になりました。
http://tocana.jp/2016/10/post_11081_entry.html
ロンディニウムは紀元前一世紀頃に古代ローマ人が、交通の要衝として
テムズ川の岸に建設したもので、現代のロンドンの原型になっています。
この遺跡からは、二体のアジア系(中国?)の人骨の他、
4体のアフリカ系、5体の地中海系の人骨が発見されており、
この時代、世界中からの移民がロンドンに訪れ、
この地で交易を行っていた可能性を示唆しています。
中国の漢王朝と古代ローマ帝国の間に交易があったことは
よく知られているところですが、
中国人のヨーロッパ・アフリカ方面への進出は
現代の定説以上に早い時期に行われていた可能性は
十分あるといえるでしょう。
夏大后の動物園にゴリラがいた可能性を考えてみる
中国史上最古のち李書とされる『山海経』(せんがいきょう)には
中国神話において語られる数多くの猿の怪物に関する記述が見られます。
・戦争の兆しとされる「朱厭(しゅえん)」
・馬のようなたてがみと蹄(ひづめ)を持つ「足訾(そくそ)」
・投擲が得意とされる「挙父(きょふ)」
・笑うことが好きな「幽鴳(ゆうあん)」
……などなど。
中国神話と猿は、切っても切れない関係と言えるでしょう。
後の時代、西遊記に登場する「斉天大聖」=孫悟空もまた、
そうした神話の影響を強く受けていることは間違いありません。
夏大后が、国の内外から珍しい猿を集め、
自慢の動物園で飼育していた
……そんな可能性も十分考えられます。
集められた世界中の猿の中には
ゴリラがいたかもしれません。
古代ローマ帝国は北アフリカをその支配下に
おいていこともあります。
古代ローマ人が捕獲したゴリラが
遠く中国へと献上品として輸送され、
夏大后の動物園に収容された
そんな可能性を考えることはできないでしょうか?
そして、そのゴリラを、贏政や成蟜が知っていたとすれば……?
コミック『キングダム』に登場するオリジナルキャラである
ランカイは、案外リアリティのある登場人物だったのかもしれません。
三国志ライター 石川克世は気づいてしまった!!
……と、ここまで妄想を膨らましていた筆者は
ある事実に気づいてしまった!!
ゴリラが古代にいた可能性があるなら、
カバが古代中国に運ばれた可能性だってあるじゃないか!!
夏大后の動物園にいたカバの子孫が汗血馬と呼ばれ、
赤兎馬になったとしたら……!?
これは、「赤兎馬=カバ説」を裏付ける
新たな証拠になるやもしれません!!
これからも【はじ三ミステリー調査部】は
「赤兎馬=カバ説」を裏付ける
新たな証拠を鋭意調査して参ります!!
乞うご期待!!
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