キングダム652話雑学「秦の鋭士、魏の武卒、斉の技撃最強は?」

2020年9月2日

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kawauso編集長(石原 昌光)

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「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務めるほか、紙媒体やWebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者・おとぼけ(田畑 雄貴)

コンテンツ制作責任者

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月に「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感していただけることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。

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馬に乗って戦う飛信隊の信

 

あまり記録が残っていない春秋戦国時代の軍隊編制。

しかし、性悪説(せいあくせつ)で知られる荀子(じゅんし)が趙の孝成王(こうせいおう)、及び臨武君(りんぶくん)と王者の兵について語り合った議兵篇(ぎへいへん)第十五という問答があり、

 

そこには、知られざる秦、魏、斉の精兵について書かれているのです。

今回のキングダム雑学では、荀子が説く秦の鋭士(えいし)、魏の武卒(ぶそつ)、斉の技撃(ぎげき)の精鋭の強弱を紹介しましょう。

 

キングダム652話雑学「斉の技撃とは?」

進軍する兵士b(モブ用)

 

荀子の言では、斉には技撃という精鋭がいました。斉人は武芸を好み、戦場で兵が首を1つ取れば褒美が出ます。しかし、斉では、個人には褒美を出すものの、戦いに勝っても全体には褒美がないようです。そればかりか、実績がない兵士からは罰金を取って、それを手柄を立てた兵士の褒美に宛てるので国は持ち出しがないと言っています。

 

敗北し倒れている兵士達b(モブ)

 

一時金を与えても、徭役(ようえき)を免除したり税の軽減を与える褒美はないので、小競り合い程度は友好でも、大きな合戦で敵が堅固である時には、組織戦闘が出来ないのでバラバラになり敗北してしまいます。

 

荀子いわく、これは亡国の兵で市場で日雇いの人夫を集めて戦うのと変わりはないそうです。

 

キングダム652話雑学「魏の武卒とは?」

進軍する兵士c(モブ用)

 

魏では、名将呉起(ごき)が採用した武卒という強兵を基準を定めて登用しています。

 

これは選抜により兵を選ぶ少数精兵の軍で、鎧と腰当、脛当ての三属の甲で武装し十二石の弩を装備し、50本入りの矢立てを背負い、戈をその上に置き、兜をかぶって剣を帯び、糧食3日分を携帯して一日で昼までに40キロを走れる事が採用の条件です。

 

厳しいテストにパスした家では、徭役を免除して税を軽減しました。

 

病気になった兵士

 

この武卒は確かに強く、一時期は魏を七国最強へと導きましたが、年老いて役に立たなくなっても特権を奪う事が出来ません。従って魏は、兵が少ない割に軍事費が余分にかかる事になり、広大な土地を持ちながら税収が少なく国力が低下したと荀子は言います。

 

キングダムネタバレ考察

 

キングダム652話雑学「秦の鋭士とは?」

進軍する兵士a(モブ用)

 

最後の秦の鋭士ですが、秦では常に人民を困窮させて過酷に働かせています。人民を権力で脅し、雁字搦めの法律で苦しめ、同時に褒美を与えて手なづけ、刑罰で圧迫し他の事を考えられなくしていきます。そして、人民に対し、お上から利益を得る為には、戦争によるしかないと思わせます。

行軍する兵士達b(モブ)

 

最初に苦しめて逃げ道を失くし、次にこうすれば儲かると甘く囁き、戦場で手柄を立てれば必ず褒美があると利で釣る事で、喜び勇んで戦場に向かうように急き立て、敵の首を5つ取ったら故郷の五家を従えさせる特権を与えていました。

 

これが兵を最も強くして長期的に国を治め、結果、土地を奪い取り税収が上る事に繋がったと荀子は説きます。秦が孝公、恵王、武王、昭王の4代において勝ち続けたのは偶然ではなく道理でした。

 

キングダム652話雑学「三国で一番強いのは秦だが…」

孔子の弟子であり文学が得意な子夏

 

その後、荀子は3国の兵士を比較して、一番弱いのが斉の技撃、二番目が魏の武卒、そして一番強いのが秦の鋭士だと趙王に説明します。しかし、だから秦が最強というのではなく、そんな秦の鋭士でも覇者になった斉の桓公や晋の文公の整った軍隊には勝てないとします。

 

さらに、そんな覇者の軍勢でも殷の湯王(とうおう)や周の武王の仁義の軍には敵わないとし、石に消し炭をぶつけるように砕けてしまうでしょうと断じているのです。

キングダム652話雑学「最強は仁義で動く軍」

 

荀子は、秦も魏も斉の兵も所詮、欲得で動くという点においては、市で日雇い人夫を集めてくるのと大差はないと断じます。

 

最強の軍とは欲得ではなく、仁義で動かされる軍であると荀子は言い、現在の世界で流布しているのは、全て、欲得ずくの騙し合いであり、同じレベルの連中同士だから優劣はつけられるが、王者の軍の前には全て砕け散るのみと結論付けました。

 

キングダム652話雑学「そこに中華統一の大義が入る」

嬴政(始皇帝)

 

キングダムの世界は、荀子が言うように欲得ずくの野望が渦巻く世界です。桓騎(かんき)などは極端ですが、ほとんどの将軍が己個人の栄達か、自国のみの国益の為に鎬を削るというのが当たり前としてあります。呂不韋の統治論も突き詰めていけば、やはり欲であり荀子から見れば、騙し合いの手練手管に過ぎないのかも知れません。

呂不韋

 

ただ、その中で秦王嬴政(えいせい)や李信のような一部のキャラクターが己や秦一国の利益をも超えた中華統一の構想を掲げているのであり、それが荀子の考える仁義の軍と呼べるモノでしょう。

 

地上から戦乱を無くすという果てしない夢が仁義であり、そこに至る道は修羅に違いなくとも、正しいと信じればこそ、中華の歯車は動いていくのでしょうね。おびただしい血をその原動力として

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

kawauso 三国志

 

現在でも、やはりお金で雇われた傭兵は命を的にして戦いたくないので、紛争を長引かせたがり、国民皆兵の軍でないと、根本的な解決には至らないようです。

 

命の対価がお金ではないというのは、人間らしい感覚ではあり、そこにお金を超える価値や命を超える価値を見出せないと命を賭けるという事は出来ないのでしょう。

 

荀子の説く所は古めかしいように見えて、やはり人の求める最上のモノに一直線に繋がっているようです。

 

参考文献:荀子 議兵篇第十五

 

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台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。「はじめての三国志」編集長。三国志・中国史を中心に、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を執筆・編集し、当サイトでは4,000本以上の記事を担当。三国志は正史から入ったため、演義を書くときのほうが神経を使うという天邪鬼。故郷・沖縄の歴史に関する勉強会の開催や、ラジオパーソナリティとしての活動も行う。

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