洪水にまつわる神話として、多くの人がまず思い出すのは旧約聖書に書かれたノアの方舟の物語でしょう。
実は、古代中国の神話にも巨大な洪水が起こったという記述が残されています。
果たしてそれは、ノアの方舟の物語に描かれたのと同じ洪水なのでしょうか?
世界各地に残る“洪水神話”
人間の行いに怒る神が、天罰として大洪水を引き起こす、という物語は、世界各地の神話に描かれています。
インド神話やギリシア神話、メソポタミアの神話など枚挙に暇がありませんが、特に有名なのは、旧約聖書に描かれた『ノアの方舟』の物語でしょう。
人々が悪しき行いをすることに心を痛めた主は、人間を創造したことを後悔してこれを滅ぼすことにしました。しかし主は、善き行いをしていたノアとその家族だけは残すこととし、彼に家族と動物を乗せるための船=方舟を作るように命じます。
ノアが方舟を作り家族と動物たちを乗せると、主は40日40夜の間雨を降らせ、世界を水没させて地上に生きるものすべてを滅ぼしてしまいましたが、ノアの家族と方舟に乗った動物たちは、その難を逃れることができました。
日本でも、沖縄や奄美地方には島を大津波が襲うという洪水神話のバリエーションとも言える伝説が残されています。
洪水神話の起源を巡る議論
世界各所に同じような洪水にまつわる神話が残されている理由については、さまざまな説が唱えられています。
現在、有力視されているのは地域的に起こった洪水がそれぞれの神話の元となったとする説です。
世界の古代文明の多くが大河や海などの側に発生、発展したことは良く知られていることです。
それは、川によって土地が肥沃であり、農耕に適していることや、河川や海を使うことで物資の運搬が効率的に行えるから等、文明が発達するのに有利な条件が揃っているからであり、必然的なことであるとも言えます。
しかし、土地を豊かにする大河があるということは、しばしば水害が起こるということでもあります。時に大河が起こす巨大な洪水はその文明に甚大な被害をもたらし、当時の人々にとってはそれが世界を滅ぼすような災厄と思えたであろうことは、想像に難くありません。
一方で、それらの神話が世界で同時に起こった地球規模の大洪水であったとする説も根強く信じられています。
その多くは、地球に他の天体(金星や未知の惑星等)の大接近することによって引き起こされたとしていますが、
科学的根拠に乏しいことが問題とされています。